~あおいとの出会い~
「私は今をいきている」
それは突然にあらわれた。
数秒の頭痛。
それは表すなら刃物が直接頭部に入れられ、かき回されるような痛みだった。
頭を抱え込み、しゃがむ。その数秒が非常に長く感じられた。
その痛みがひき、平静を取り戻すとあることに気が付いた。
自分の左側に見知らぬ美しい少女がいたのだ。
「きみは誰だ?」
全裸の俺が聞く。
「聞かなくてもわかるんじゃないかな。」
少女は動じず答えた。
そう、聞かなくてもわかっていた。
「あおい、か。」
「そう。」
短い会話が続く。それは、数十分にも及んだ。
それは俺にとってのみ意味のある、自分の中にある情報を確かめるためだけの作業でしかなかった。
さっきの頭痛、それは彼女、あおいを構成する情報が一気に入ってきたことによる脳の負担によるものだったのだ。そしてそれはまた、命でもある。
「さとる、いつまで風呂に入ってるの」
母親のすこし苛立ちの混じった声が考えに強引に割り込む。
「もう出る!」
そう外に向かって叫んだあと、あおいのほうに向き直った。
「最後の質問。」
あおいの表情は変わらない。
「俺と君とは感覚を、感情をすべて共有しているのか?」
それに対して、あおいは淡々とした調子で答える。
「たぶん、頭痛のようなものがあったでしょ?あの時までの情報だけだよ。私と君がお互いのことをすべて知っているのは。現に今、なにをかんがえているかわからないでしょ。」
「そうか。」
求めていた情報は、すべて得た。
そういったふうに風呂から出ようと立ち上がるとあおいは初めて感情らしい感情をみせた。
「……っ!なんで裸なのっ!向こう向いてるから早く服を着てっ!」
あおいの悲痛な叫びが響く。
先程の長時間の問答で得た情報の中に、あおいの声は俺にしか聞こえないとわかっているため心配はない。
しかし、理不尽なものだ。はじめからこっちはこんな姿だったというのに。さっきの反応で女の子らしいところはあることが分かったため、こう言ってみた。
「君も脱げばいいんだよ。そうすればお相子さ?」
言った、言ってしまった。しかし、彼女はただ恥ずかしがるだけではなかった。
「この変態!」
言葉とともに拳も飛んできた。
もちろん、彼女は実体ではないため、俺の体には外部的な損傷はない。
これは聞いていた。
しかし、痛みだけは感じた。
たとえ、傷はつけられないとしても痛みはある。
それを聞くのを忘れた自分の甘さを痛感した瞬間だった。
初めて、この「小説家になろう」に投稿させていただきました。
リアルが多忙なため、不定期での投稿になると思われますが、
どうぞ読んでいただけたら幸いです。