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アドリブな計画


 6つの弾倉に5発弾丸の詰まったリボルバーでロシアンルーレットをやりたいかって問われたら断るよな。

 誰だって断る。

 おれだって断る。


 でも6回勧められたら1回ぐらいはやってみたくならない?


 おれは今、ちょうどそんな気分なわけよ。



 もちろん見返りはビッグだ。



『自由』



 命を賭けるにふさわしい報酬だ。

 だから……ま、死んだらそれまでってことであきらめもつくしな。



「なあリョウ、わしってそんなに信用ならんか?」



 ノーティラス、モノローグに反応するな。

 よし、今のくだりは口に出してしゃべっていたことにしよう。



「これでもわし、ここら一帯の顔役で皆の信頼も厚いんじゃが……」


「今のは冗談だよ。おれも信頼してるぜじいさん」


「不信感丸出しの顔でいわんでくれ」



 ここのアホ魔族なんぞおれひとりでも何とかなりそうではあるが、もうおれは独りでは戦わないと決めている。

 元ロイヤルズのこのじいさんを使わない手もないしな。

 頼むぜじいさん。ホントマジで頼む。









 役所に戻ったおれたちは、すぐに交渉の結果を町長(名前は忘れた)に報告した。



「いやいや! 困りますよそれは!」



 町長が血相を変えるのも無理はない。

 奴隷側が出した条件はとてもじゃないがこちら側が飲めるものではないからだ。



 当然だが、奴隷側の要求はパーガトリ勤務の奴隷の全解放だ。

 もちろんそれは受けられないからおれたちが交渉にいったわけだが、代替えの条件がこれまた酷い。



 1.魔族と同等の賃金の保証

 2.週休二日

 3.最低年に30日以上の有給休暇

 4.清潔な住居スペースの確保

 5.魔族による監視体制の撤廃 

 6.自由な外出、外泊の許可

 7.獄中での生産物を売買する権利



 特に一番最後のやつが酷い。

 これじゃもう監獄というよりただの商会だ。

 いったい誰だ、こんなムチャな条件を考えたのは。


 もちろんこのおれだ。



「こんな条件を飲んだら我々が食いっぱぐれてしまいますよ。この町は奴隷を無償の動労力とすることで生活水準を維持してきたのですから」


「ですが首謀者のエドックは、これが最大限の譲歩であるといって聞きません」


「そこをなんとかするのが君の手腕でしょ!」


「町長、しかしですね……」


「事と次第によっては君を解任して後任を選出することも考えねばなりませんね!」



 おれたちが口論をしていると、見かねたといわんばかりにノーティラスが口を挟んできた。



「ミクネくん、現場の事情も知らずに怒るのはそこまでにしとかんか?」



 ミクネ?


 ああ、そうだそうだ。確かそんな名前だったわ。

 ようやく思い出したわ、サンキューじいさん。



「いやいや、しかしですねノーティラスさん、これはあまりにも……」


「交渉にはわしもあたったんじゃ。わしにも責任の一端はあるわけじゃが」



 ノーティラスがひとにらみするとミクネは慌てて口を閉ざした。


 ミクルの反応を見るに、じいさんマジで元ロイヤルズなんだな。

 ほへぇ、べっくらこいたわあ。



「ここで身内をどれだけ責めようと向こうさんの要求は変わらん。今はこちらも一丸となって事にあたるべきじゃ」



 さりげなくおれを身内に含めたな。

 やるなノーティラス、非常時には頼もしいぜ。



「幸い、まだ交渉は終わってはおらん。相手もこんな無茶な要求が通るとは思ってはおるまい」


「相手は馬鹿で有名な蛮族ですよ! ぜったい通ると思ってますって!」



 おうおう、いってくれるねえミクマさん。

 相手を見下すことに関しては一流だねえ。



 でも大正解。



 最初エドックはこの要求をガンとして通すつもりでいたからな。

 おれの作戦を適当と称するわりには、自分はさらに適当で力ずくなんだから困る。



「確かに相手は野蛮な蛮族じゃ。だが同じ人間であることには違いあるまい。根気よく交渉を続けて譲歩を勝ちとろうではないか」


「いやいや、しかしですね、あまりぐずぐずしていると首都からの監査が……」


「安心せい。監査ならわしがアーデルに掛け合って遅らせてやるわい」


「そ、それは助かります!」



 アーデルまで巻き込むのか。

 それは計画外だが……あいつのことだからそのぐらいは協力してくれるか。

 まあ、やるからにはじわじわやったほうが楽しめ……じゃなくて成功率が上がるからな。



「ではこれからわしらは対策本部にて会議を開くので失礼する。君も参加するかね?」


「……いえ、今回の件はノーティラスさんにおまかせします」



 おいおい、そこは参加するっていわなきゃダメだろミクミクさんよぉ。

 あんたはこの町の責任者なんだからさあ。

 こっちはまじめに取り組んでいるフリをしなくて済むから助かるけどな。





「へっ……ミルドラースの野郎、あんたのひとにらみで泡を食ってやがったぜ」


「ミクネじゃ。ミしか合っとらんぞ」



 あ、そう?

 まあいいや。


 あの町長はこれから真綿で首を絞めるようにじわじわと苦しめてやる予定だから、このぐらい無関心なほうが良心の呵責がなくて済むってもんよ。



 おれは対策本部と銘打った場末の酒場でジョッキ片手にわりと適当だった計画の詳細を詰めていく。



 計画ってのは現場の状況を見ながら柔軟に変えていくものだ。

 最初からガチガチに計画を固めておくとそれに固執しちゃうことも多いからね。

 こういうのはアドリブでいいんだよ。アドリブで。



「まあ、とりあえず……だ。町長もああいってたことだし、あんたには今後、中心となって動いてもらうぜ」



 ノーティラス・ロイヤル。

 元ロイヤルズが一席か。


 意外にも使える奴だとわかった以上、ぞんぶんに利用させてもらうぜ。



「だからなんで意外なんじゃ。最初から有能だってちゃんと伝えといたじゃろ!」



 だからモノローグを読むなよ。

 恥ずかしくて腹黒いことを考えられねえじゃねえか。



この小説もアドリブで書かれています

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