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後始末


 破壊する――などとカッコよくいったけど、このプラントでけえんだよなあ。

 これを全部破壊すんのにどれだけ時間がかかることやら。



 だからといって悠長にはしていられない。



 蜘蛛たちは今は様子を見ているが、決してビビっているわけではなく、単に数が揃うのを待っているだけだろう。

 デンゼルの呼んだ援軍がやってきたらすぐに襲いかかってくる。

 そうなると少しやっかいだ。



 ……正直、厳しいな。

 破壊は後回しにして一旦ここから離れたほうが賢明かもしれん。



 ただ、ここを無傷のまま放置するのは後々、面倒事の種になりかねない。

 援軍が来る前に破壊できるだけ破壊してから撤退するべきだろうか。



「とりあえずおまえは蜘蛛の相手を頼む! おれはこの施設を破壊する!」


「不要。もうじき援軍も来るようだし好都合。ぜんぶまとめて吹き飛ばす」



 ……え?


 まとめて吹き飛ばすって……。



「おまえ……まさかこんなところで、でかい魔法を使う気じゃねえだろうな」


「遺跡を破壊することになるがしかたあるまい。遅かれ早かれいずれやることになるのだから」



 おまえは耳を塞いでいろ。


 アーデルはおれにそう命じると、素早く呪文の詠唱に入った。



「主よ、我が想いに応えたまえ。

 主よ、我が願いに応えたまえ」



 アーデルの召喚した四体の天使像が、凄まじい速度で呪文を詠唱していく。

 さらに今度はアーデル自身まで詠唱に参加している。



「汝の声は我が悦びである。

 汝の姿は我が誇りである

 汝の力は我が怒りである」



 魔法の威力っつうのは基本、呪文の詠唱時間に比例して強大になっていく。

 最初に撃ったときは時間にしてわずか数秒ほどだった。

 じゃあこの魔法の威力はどうなるのか?



 もう一分近く詠唱しているわけだが――――



「顕現せよ! 女神賛美歌ソルティアヒム・第壱番ファースト <女神降臨> !」



 おいいいいい! あんまりでかい魔法を使うとおれたち生き埋めにいいいいいいいいいいいいいぃっ!!!




 ぎゃがががががががぐがあああああがががぁッ!!!




 みみみみみみみみみみみみみ



 のののののののぉ


 こここぉ



 まままままままままま

 くくくッ





 がががががががががががががががががぁッ













 まあ……無事だったんですけどね。



 幸い、おれたちは生き埋めになることはなかった。



 つうか埋まる瓦礫がねえわ。



 おれたちを中心にどでかいクレーターができているわけだが……何が起きたのか当事者であるおれですらわからない。

 やった本人は、何やら頭を抱えているようだがな。



「しまった……またやりすぎてしまった」



 またって!

 前科ありかよ!



「十数年ぶりに敵から攻撃をもらったせいか、気分が高まっていたようだな」



 だな、じゃえねえよ!

 つうか最近おれがてめえの腕をたたっ斬ってやったのを忘れてるのかよ!

 おれなんか敵じゃねえってか!?


 いや、ツッコミどころはそこじゃねえか。



「アーデル……おまえ、もう魔法使うの禁止な」


「……」


「だから都合が悪くなると黙り込む癖を直せ!」



 加減が利かないとは聞いてはいたが、こんな調子でクレーターをボコボコ量産されてったらただでさえ荒れてるイドグレスが月面みたいになっちまうよ。



「幸い、殿堂は無事みたいだな」


「なんでわかるんだ?」


「ただの目測。けっこう遠い位置にあったからたぶん大丈夫だろ。とりあえず地上にあがろう。この高さは、おれじゃ上れないから連れて行ってくれ」


「……了解」



 アーデルはおれを軽々と担ぐと、とんでもない早さで地上まで駆け上がっていった。



 とんでもない奴だとは思っていたが、ここまでとんでもないとはなあ。

 兵器製造プラントなんかよりよっぽど恐ろしい怪物だわ。

 おれもちょっと身の振り方とか考えちゃうよ。

歩く戦略兵器

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