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デザイア遺跡

 バンロドという名のイドグレス産の馬に乗り、南東に進むことを約半日。

 おれたちは目的地であるデザイア遺跡にたどり着いた。



「なるほど、確かにこいつは他の遺跡とは違うわ」



 ……でかい。



 規模だけならあのティルノ遺跡と同じ……いや、ヘタすればそれ以上だ。



 こいつを一から調査するとなると、ちょいとばっかし骨が折れるな。



「シグルスさまは、この遺跡を調査なされたことがあるのか?」


「わからん。あの御方は行動するときは常に独りを好まれた」



 同行してきたアーデルが即答する。

 こいつ普段は無口だが、シグルスさんのことになるとすぐこれだもんな。



「独り……か。だったら、遺跡内部の調査までは無理かな」


「本当にシグルスさまは、オーネリアスでこんなことをしていたのか?」


「何を今さら……してなかったらおれは、シグルスさまに気にいられていませんよ」


「おまえなんぞに頼らずとも我々がいたというのに」



 アホぬかせ。

 おまえらみたいな頭の固い魔族、何億人導入しようが足手まといにしかならんわ。

 だからシグルスさんは独りを好み、おれのこともためしたのさ。



 遺跡の調査は好奇心とセンス。

 ひらめきなくして未知の発見はねえ。



 ティルノ遺跡のときは比較的わかりやすい形で痕跡が見つかったが、遺跡を古い建物としか思っていないおまえらはそれすらも見逃しそうだよ。



「シグルスさまにとっては足手まといだったかもしれないが、少なくともおれにとっては頼りになる助っ人だ。道中の魔物払いは助かった。調査中の警護もよろしく頼む」


「……」



 そしておれの感謝には絶対に応えないんだよ。

 嫌なやっちゃなあ。



 まあいいや、時間もねえしさっさと遺跡調査を始めよう。







 デザイア遺跡はかつて繁栄した古代人の都だったといわれている。


 古代人といっても魔族ではない。

 かつて魔族に攻め滅ぼされた人間の住んでいた都だ。



 この規模は、おそらく首都だな。

 ぜんぶ調査しようと思ったらいくらあっても時間が足りないだろう。



 よっておれはアーデルからもらった地図を見ながら、いくつかのあたりをつけて調査することにした。



 まずはここ、遺跡の西端にある宮殿跡だ。



 おれはこの宮殿が王宮であったとにらんでいる。

 一見、王宮にしてはおかしな位置にあるとは思うが、おそらくこれは外敵が襲って来たときに国外に脱出しやすいようにとの配慮だろう。

 東にもここよりはるかに規模は小さいが、都と思しき遺跡が存在してるからな。



 マジでここが王宮だとしたら、どんな肝っ玉の小さい王さまやねんと思わんでもないが……まあ、莫大な富を得た人間っていうのはえてして保守的になりがちなものだ。



 あ~やだやだ、保身しか能のない人間はお寒いねえ。

 だからおれは異世界に来ることで一度リセットしたのさ。

 自分の意志じゃないっつうのがちょっとアレだがな。







 実物の宮殿は、おれの想像以上にボロボロだった。

 地図ではわからなかったが原型がまるで残ってないじゃないか。



 ……まあ、当たり前か。



 仮にここが王宮だとしたら、まっ先に魔族に襲われただろうからな。

 だがここまで原型が残っていないと、ティルノ遺跡のように特殊な建築素材が使われているわけではなさそうだ。



 つまり、あの時のようなビックリ大発見ってのはなさそうだな。



 いやいや、何事も早急に決めつけるのはよくない。

 おれは自らのイマジネーションを全開にして瓦礫の海の中を散策する。



 たぶんこの辺りが通行路で、この辺に噴水があったんだろう。

 で、ここに王宮があって……たぶん、この辺りが謁見の間だったんじゃないかな。

 とするとこの辺りに王の部屋があって……ちょっと掘り返してみるかな。







 ……何も見つからねえ。



 ぜんぶおれの妄想だから当たり前っちゃ当たり前か。



 何千年前の遺跡かはわからんが、もうほとんど朽ち果ててしまって、何にも残ってねえわ。

 唯一収穫があるとすれば、おそらくは魔道具であろうと思しき残骸をいくつか堀出せたってことだけか。

 これはいちおう持って帰って調べるが、おそらくは無駄骨だろう。



 あ、あと古代人が使っていた記録媒体を発見したね。

 なんとおれたちと同じく紙だ。

 劣化しきってて何が書いてあるかなんてまるでわかんねえうえに、触れた瞬間に粉になって風に吹かれて飛んでいっちゃったけどさ。







「もうこんな時間か……」



 魔時計を見るとすでに夕方を指している。

 日が沈む前には帰ってくるようロギアから命じられているため、そろそろパーガトリに戻らなければなるまい。



 何事もすぐに決めつけるのはよくない。

 よって調査は今後も続ける。



 続ける……が、実際に現地を回ってみたおれの勘はこう告げている。



『ここには何にもねえ』ってな。



 ま、こういうのはえてしてギャンブルと一緒よ。

 はずれを引くことを恐れていたら考古学者なんてやってらんねえよ。

 こっちとしては、当たりが出るまで回しまくる……じゃなくて、調べまくるだけよ。

発掘調査はギャンブルと一緒

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