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セスタ姉妹

 エドックをリーダーとして奴隷たちの意志統一は順調に進行している。

 ノーティラスとは一斉蜂起の際に援助してもらう約束を取りつけている。


 パーガトリの内外に、おれの味方は順調に増えていた。



 次はどこに根回しするべきかといえば……とうぜん看守になるわけだが……。



 同じ看守の地位にありながら、同僚への根回しを後回しにしている理由は、こいつらがどうしようもないクズだからだ。



 連中は人間でありながら魔族にこびを売り、同族を虐げることで甘い汁を吸おうと考える心底性根の腐った輩だ。


 社会の最底辺。

 唾棄すべきコウモリ野郎。

 人の尊厳を忘れた畜生にも劣る外道。


 とうぜん信用などできるはずもない。



 今ぜんぶおれのことじゃねえかと思った奴、ちょっと表に出ろや。



 そんなカスどもだが、それでも協力は必要だ。

 何しろ奴隷の牢の鍵を管理してるのはこいつらだからな。

 おれひとりでぜんぶの鍵をくすね盗って奴隷を解放するってえのは、さすがにちょっと無理がある。



 全員……というのはさすがに無理でも、せめて4~5人ぐらいは欲しいな。

 もちろん声をかける面子は厳選する。



 まず、毎朝おれのところに飯をタカりに来る野郎どもは論外だな。



 こいつらはどれだけ餌付けしてやろうが三日も経たずに恩を忘れる。

 いや、そもそも恩になんて思っちゃいない。

 今後どれだけ利益を提供してやろうが裏切る時はあっさり裏切る。

 こいつらはそういうゴミカスだ。

 仲間にするなどありえない。



 ただ、そんなあいつらにもいいところはある。



 それは、反乱の際にいっさい邪魔にならないところだ。


 こいつらは誰かにもらった餌をただ食うだけの哀れな雛鳥。

 自らの意志でアクションを起こすことなどありえない。

 よって存在そのものを無視してかまわない。



 仮に仲間に引き入れるとしたら……そうだな、女がいいかな。



 決してスケベ心からいってるわけじゃない。

 男と違って女は何かと動かしやすいのだ。



 男は物事に対してすぐに損得勘定を入れてくるが、女は情に訴えかけやすく裏切りにくい。

 特にこのエルメドラに来てからはそれを顕著に感じている。



 イリーシャは、おれのような人間でも分け隔てなく接してくれて、何度も命を救ってくれた。


 リリスお嬢さまは、性格はちょっとアレだったが、おれに惚れてからは何かと尽くそうとしてくれた。


 オーネリアスとは、騙し騙されはあったものの、最終的にはおれの命を奪うことはしなかった。



 彼女たちが特別そうだっただけという可能性もあるが、それでも計画に組み込むなら男より女のほうが成功率は高いと踏んでいる。

 おれもイケメンという自らの武器を最大限に使えるしな。





 つうわけで、さっそく同僚の女性にこなをかけてみた。





 食堂で独り寂しく食事をしている素朴な感じの少女を見かけたので、飯を持ってきて隣りに座る。



「やあ、今日もいい天気だね」



 まずは当たり障りない世間話から始め、次第に彼女の身の上話へと移行していく。

 女は愚痴を聞いてもらいたい生き物だということをおれは知っているのだ。



 一通り話を聞き終わったあとは、それとなく彼女のパーソナルデータを聞き出す。



 テトラ・セスタ。19歳。

 出身はオーネリアスの首都コープス。

 17歳の頃、姉のレイラと一緒に魔族に誘拐されて現在に至る……か。



 ふむふむ、こいつは利用できそうだな。

 望郷の念も強いようだし、今すぐ計画を話してもホイホイ乗ってきそうだ。



 顔も地味だが整ってはいる。

 おれの好みからは外れているが、眼鏡を外してちょいと化粧をしてやれば、ずっと見れるようにぃ――――ぐへぇっ!



「おいおまえ! ひとの妹にちょっかいをかけてるんじゃねえ!」



 あ……あのクソアマ! いきなりおれの脳天に食器をぶつけてきやがった!



 こいつ、ちょっと顔がいいからって調子こいてやがるな!?

 ここは男の恐ろしさっつうもんを教えて…………妹? いま妹っていったか?



「もしかしてあんたがレイラ・セスタか?」


「そうだ! これでもコープスでは王直属のアマゾネス部隊に所属していたんだぞ!」



 レイラは薄い胸を大きく張って自慢する。



「それが今や魔族の狗か。哀れなもんだ」



 おれが事実をありのまま正確に伝えてやると、レイラは怒りに任せて回し蹴りを放ってきた。



 並の男ならまともに食らうのだろうがおれは違う。

 頭を狙って蹴ってきた足を掴んでそのまま床に押し倒してやる。



「そんな体たらくだから魔族に捕まっていいようにされる」



 精鋭揃いのアマゾネスとは思えない弱さだな。

 オーネリアスの兵として失か……うごぉっ!



「うるさいぞ! あたしはまだ負けちゃいない!」



 こ、このクソアマ! 今度は反対の足でおれの股間を蹴り上げてきやがった!

 畜生! 人目もあることだし、今日のところは撤退してやるよ!



「もう二度と妹に近づくなよ!」



 やなこった。

 これからもドンドン近づいてやるね。



 しかし……エルメドラの女はいい女ばかりだと思っていたが、ああいうゴリラもいるんだな。

 オーネリアスは蛮族の国だから当然っちゃ当然か。



 ああいうがさつな女は計画に組み込みたくはないのだが、妹さんに協力を仰ぐにはまずアレをどうにかしないといけないな。

女癖は悪い

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