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VS勇者 その2

 とりあえず一週間、おれたちは重要文化遺産から魔族を追い払った英雄としてコープスに滞在することになった。



 現役に戻っておれたちの抜けた穴を埋めているラムダさんには、ちょっと悪いことをしてしまったな。

 まあ、しかたねえか。

 オーネリアス王の命令だったといえばあのひとも納得してくれるだろう。



 ていうか困るのはおれたちじゃね?

 働かないと賃金もらえないじゃん。奴隷の身分からも解放されへんわ。



 もっとも、他の二人は周囲にちやほやされてヘラヘラしながら「たった一週間かあ」なんてのんきなこといってるがね。

 おれとしては、一刻も早くここを離れたいというのが本音だよ。



 ここ二日ほど聞き込みを続けているが、おれが思っている以上に戦況は芳しくないようだ。

 一週間滞在して、ここが魔族に襲撃されないなんて保証はまったくない。

 戦に巻き込まれて死にたくないならさっさと村に戻るべきなんだ。



 とはいえ、こっちも色々とわがままを聞いてもらっているからなあ……頼んでおいたブツもまだすべて仕上がってはいないし、多少リスクを犯してでもしばらく滞在するより他ないわな。

 でもなあ…………。



「いやぁこの国は楽しいね。食べ物は美味しいし、女の子はかわいい娘ばかりだし」



 おれが城の窓から外を眺めてたそがれていると、チキン片手にのどかなツラをひっさげて勇者タナカさまがやってきた。

 こいつを見ているとあれこれ悩んでいる自分がアホらしくなってくるわ。



「たった一週間しかここにいられないなんて、ちょっと寂しいよね」


「おまえはいつまでもここにいていいぞ」


「え? だってリョウくん村に戻るんでしょ?」


「おれたちは戻るがおまえはついてこなくていい」


「なんで? 僕たち仲間じゃない」


「だれが仲間だ! おれはただ、おまえが迷子になってたから連れてきただけだ!」


「そんな冷たいこといわないで一緒に冒険しようよ!」


「断る!」



 つうかおまえ、オーネリアス王から首都防衛任務のお達しを受けたばかりだろ!

 連れていけるわけねえだろ!



「いいか田中。勇者っつうのは男1、女3のハーレムパーティが常識だ。だからおまえはおれたちのことなど忘れて酒場でいい女を漁るといい」


「僕の常識は男3、女1の四人パーティだよ。リョウくんとミチルくんと、あと一人女の娘がいれば完璧だね」



 野郎三人で一人の女を取り合えってかぁ?

 サークルクラッシャーもといパーティクラッシャー間違いなしだわ!

 後の世に勇パーの姫がいたとか書かれるぞ!



「そんなのハーレムパーティでも一緒じゃん。むしろそっちのほうがひどくなりそう」



 ちっ、田中のクセになかなか痛いところを突いてくるな。

 確かに勇者の取り合いでパーティ内がくっそ険悪なことになりそうだ。

 異性が絡むと女はマジこええからな。



「だから現実のパーティは男だけで組んだほうがいいよ。僕もそのほうが気楽だしね」


「せっかく異世界に来ておいてそんな枯れた考えでどうする! おまえも男だったらゲームやラノベのような夢のイチャイチャ快適勇者ライフを目指さんかい!」



 オーネリアスにこいつを貸してやるっていっちゃったからな。

 田中には、なんとしてもここに残ってもらわにゃ困るんだよ。



「田中……おれが日本で、おまえのこといじめてたの忘れてやしねえか?」


「忘れてないよ。忘れられるわけないじゃない。今でも昨日のことのように思い出せるよ」


「だったらなんで……!」


「でも、この異世界で僕を田中太郎として見てくれるのはリョウくんだけだから」



 ……なるほど、ただの馬鹿ってわけじゃなかったか。



 ちゃんと気づいているんだな。

 己の置かれた状況に。



「きっと僕は、エルメドラでは勇者としてしか見てもらえない。それはものすごく孤独なことだって最近思い始めてた。君がいなくなったら、この世界で僕を僕として見てくれるひとはいなくなる。だから僕は、マイラルで君を責めることができなかった」



 ちっ、そういやそんなこともあったな。

 借りを作っちまったってことか?

 ……おまえごときに。



「そして同時に気づいてしまったんだ。リョウくんも今の僕と同じだったということにさ。そして僕が、そんな君を見下し意図的に避けていたということにも。だから一言、どうしても謝りたかった。できれば直接会って」



 ……。



 ……遅ぇよ。今さらの話だ。



「リョウくん、本当にごめ――」


「謝るな!」



 おれは感情に任せて猛然と立ち上がる!



「おまえがおれに謝る筋合いは一ミリもねえ! おれもおまえに謝る理由はねえ!」



 なぜならおれたちは敵だから!

 敵同士が戦うことは当たり前のことだから!


 今回はたまたま共闘したが、それもここまでだ!



「表に出ろ」


「へ?」


「おれと勝負しろ! マイラルでつけられなかった決着、今ここでつけてやる!」



 おれは闇の王!

 光の勇者と戦うが宿命さだめ



 あの日鳴ることのなかった第二ラウンド……いや、最終ラウンドのゴングを今、ここで鳴らさせてもらうぞ!

第二ラウンド!

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