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LNAG

 たいまつの光を頼りに暗い階段を降りる。

 田中は怖くて行きたくないと駄々をこねたがケツをけっ飛ばして強制的に先頭を任せた。


 この先に、どんな危険があってもおかしくないからな。

 神の力に守られている奴に行かせるのは当然だ。



 シエラ大神殿は女神ソルティアを奉る神聖な場所とされている。



 そんなところになんでこんな隠し階段を作る?

 おかしいだろ、常識的に考えて。



 おれは最初から思ってた。

 オーネリアス大陸の勇者伝説はどこかうさんくさいって。



 でもな、もしかしたらうさんくさいどころの騒ぎじゃねえのかもしれねえな。





 田中の野郎がビビってなかなか進まないので苦労はしたが、どうにか階段を下りきってその下にある施設に到着した。



 ……やっぱりここもメカメカしいんだよなあ。



 シエラ神殿は神を奉るところとしての体裁が整っていたが、ここはもうメカメカしさ丸出し。パイプとかモロに出てるし。



 つうかこの真ん中に置いてあるたまご型の巨大カプセルは何?



 中に入ってる黄緑色の液体もかなり謎だ。



「……これ、ヤバいんじゃねえの?」



 ミチルが今頃になってそんなことを漏らす。



 ヤバいに決まってるだろ。

 承知で来たんじゃないんかい。

 まあいい、どのみちおまえらには働いてもらわんと困るからな。



 おれは二人に何か怪しいものがないか手分けして探すように命じる。

 すると田中が、



「怪しいものって……具体的には何?」



 怪しいものは怪しいものだよ。

 オタクのおまえならフィーリングでわかるだろ。

 そこら辺を徘徊して適当にAボタンでも押してりゃ何かしらのメッセージが出るだろ、たぶん。



 二人を調査に向かわせた後、おれは巨大カプセルに近づいて触れてみる。



 ――なんだろうな、これ。



 マンガやゲームとかだとこのカプセルの中で人工生命を育てたりするのがお約束なんだが……まさか、ねえ。



 女神さまが人を造るなんて……いや、女神なら許されるのか?



 いやいや、まだ何の目的で造られたかもわからないのに早計だな。

 余計な先入観を持たずに調査を続けよう。



 巨大なカプセルの周辺をぐるりと一周してみる。

 めぼしいものは何もないな。



 このモニターとキーボードを除けばな。



 いくら魔道具っつったって……さすがにこれはファンタジーっぽくねえな。

 某有名RPGじゃよくあることだが、ちょいとばっかし世界観が違うぜ。



 まあいいか。

 科学も魔法も生活を便利にするために存在してるんだ。

 同じ地点に到達することがあってもぜんぜん不思議じゃねえ。



 つうことは、たぶん操作方法も直感的にわかるな。

 たぶんこれが起動ボタンだ。何百何千年稼働してないかは知らねえけど、はたして動くものかね。





 ――――動いた!





 静かな起動音と共にモニターに光が灯る。



 ヘビのシルエットと一緒に『LNAG』というロゴが出てきたが、これってOSの名前か? パソコンかよ!



 これは、ルナーグって読むのか?

 それとも……エルナガ?


 まさかと思うが……この機械が天の使いなのか?



 つうかこれ、オーネリアス語じゃなくて英語じゃね?

 どうなってんだ、わけわかんねーよ!



 そしてモニター内に大量に並ぶアイコン。

 ちょっと頭が混乱中だが……とりあえず押してみるか。



 まあ、こういうときは一番最初に置かれているアイコンをクリックするに限る。

 クリッククリック……ってマウスがないな。

 ぜんぶキーボードで操作しなきゃ……あ、タッチ操作できるな。

 なるほどねえ、ではポチっとな。



『敬虔なる神徒エルナの諸君。妾の名はソルティアである』



 ――ソルティア!?



 オーネリアスの女神?

 本物か?

 ソルティアの彫像なら見たことがあるが……ちっ、音声データだけだからわかんねえわ。



『来るべき聖戦に備え、妾自らこの装置を用意した。光栄に思え』



 どうでもいいがこの女、しゃべりかたがうぜえな。

 こんなんが女神とは認めたくねえ。たぶん偽者だな。



『このエルナガを用いて聖獣エイラを量産し、憎きゴルドバの雑兵どもを根絶やしにするのだ』



 ……え?


 今なんつった?



 おれの耳が確かなら、こいつが今の魔物を造った元凶ってことになるんだけど……。



 え? 急に画面が暗転したぞ!

 機械がぶっ壊れたかのか?

 おいおい、今いいところだろ! 動け! 動けってば!



「……ダメか」



 完全にぶっ壊れた。機械から煙があがってるわ。

 ずいぶん古い機械だし動いたことが奇跡的なんだろうな。

 やっぱりおれはツイてるってことか。



 いや……動かなかったほうが良かったのかもしれんけどさ。



「シグルスさんにはどう報告すっかな」



 見ちゃった以上は正直にいうしかあるまい。

 虚言を吐いたらぶっころすっていわれてるし。



 でも、こんな話信じるかなあ。



 正直に話したら虚言だと思われて逆にぶっころされそう。



 まあ、まだ確定してはいないか。

 音声データを聞く限りは女神ソルティアが主神ゴルドバの兵を倒すために魔物を造ったという風に聞こえるけど、実はただのジョークファイルという線だってぜんぜんありうる。

 だったらこの培養カプセルっぽいものは何だっつう話だけどさ。



 まあ、おれとしてはさっきの音声データは真実だと考えて身の振り方を考えるけどな。

 だってそっちのほうがおれ的にはしっくり来るんだからしかたがない。



 オーネリアスの民と魔族はグルだったって考えたほうがなッ!!!

マッチポンプ!?

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