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俺の女神さま

 せ……背中の肉がえぐれるかと思った。

 つうか実際えぐれた。

 女神の回復魔法のおかげで助かった。やっぱり女神は女神だ。



 しかし、それにしても美しい……。

 おれは今まで数多の女の子とつきあってきたけれど、あれほど美しい女……いや、女性には巡り会ったことがない。



 控えめにいってミロのヴィーナスのように美しい。

 控えめにいってな。


 つうかミロのヴィーナスを美しいと思ったことないや。

 時代によって美的センスの違いってあるよね。


 もっともおれの女神は、どの時代でも超絶美少女だろうけどな!



 お礼が言いたいな。

 あわよくばつきあいたいな。

 そしてエッチなことがしたいな。



 いくら払えばいいだろうか?

 今、手持ちは5万ぽっちしかないけど足りるかな?

 つうか日本の通貨ってこっちで通用するの?


 しないよなぁ……やっぱ。 



 だったら……せめて名前が知りたいな。



 言葉がわからなくても看守たちの話を注意深く聞いていればそのぐらいはわかるはず。


 ふたたび放り込まれた牢獄の中でおれはそんなことを思うのだった。





 翌朝、おれはまた奴隷として強制労働に参加させられた。



 アホみたいに重い石を運ばされ、指定された場所へと持って行く。

 それをただ延々と繰り返す。


 気が滅入りそうだ。

 その前に身体が滅入るけど。



 看守たちの言葉はまったくわからんが、地球でいうところのピラミッドのようなものを作っているというのは作業内容でなんとなくわかる。



 ピラミッド――つまり、王の墓だ。



 おれも勇者になって世界を救ったら死語ピラミッドを作ってもらいたいものだ。



 つうかさ、魔法使えよ!

 なんのための魔法だよ!


 何が悲しくてファンタジー世界で肉体労働なんかせにゃならんのか。

 ピラミッドぐらいパパッとできないものかね?


 たぶんアホだから魔法を使うって発想が出てこないんだろうな。

 どこの世界にも無能はいるってことだ。まったくもって嘆かわしい。



 ぎぃやあああああああああああああああああああああっっ!!!



 どうも考え事をしていたら手が止まっていたらしい。

 鞭でおもっくそ背中を叩かれた。

 昨日しこたま叩かれたからちょっとだけ慣れたよ。ちょっとだけね。


 あ、ちゃんとやりますから叩くのはもう勘弁してください。





 黄緑色の空が茜色に染まったとき、今日の労働は終了した。



 この世界でも、夕焼けは同じだ。



 ……美しいな。



 今まで夕焼けをこれほど美しいと感じたことがあっただろうか。

 日本にいた頃は、ただ一日の終わりだとしか思っていなかったものな。


 奴隷ライフを長く続けていくうちに、心身ともに疲れはて、いつかはまたただ一日の終わりにすぎないと思うようになっていくのだろうか。



 それは……なんか嫌だな。

 というかおれ、ずいぶん余裕があるな。



 なんつうか、たった一日でこの過酷な強制労働にもずいぶん慣れてしまったな。

 慣れって恐ろしいな。これが環境適応能力ってやつか。

 人間ってすごい。





 牢獄に戻るとおれは、看守たちの雑談に耳を傾けた。



 看守たちの言葉はいつもどおりまぁ~~~~ったくわからんが、おそらく人名だと思われる単語はいくつか聞き取れた。


 その中で、『たぶん女性なんじゃね?』とおれが思うのは以下のとおり。



 ミミル

 イリーシャ

 ユーウェイ

 サイル

 アーヴィン

 レノア



 女神はこの中にいる!

 今は誰がだれだかよくわからんが、いずれは特定してみせる!

 じっちゃんの名にかけて!



 あ、ちなみにおれのじっちゃんは『柾源治朗まさきげんじろう』っつって柾財閥の総帥ね。

 超お金持ちでとにかく色んなところに強い影響力を持っている。

 なんか総理大臣の経験もあるらしい。今は裏から政治を操っているらしいけど。


 控えめにいって日本を牛耳っているといっていいんじゃないかな。

 控えめにいってな。



 話が脱線したけど、まずは女神の名前を知るところから始めるよ。

 いずれ女神と仲良くなってイチャイチャヌルヌルするためにね。



 将来の桃色ライフを想像するとなんだか楽しくなってきた。

 最初はきついし辛いし何の娯楽もないしの三重苦だと思ってたけど、人間何事も気の持ちようだ。


 人生、楽しもうと思えばどこでも楽しめるってことだね。

 またひとつ賢くなってしまった。

男は単純

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