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一難去ってまた一難

 前回までのあらすじ。



 オーネリアスの首都コープスへと向かうおれたち一行の前に立ち塞がったのは、高さ十メートルはあろうかという巨大ゴーレムだった。

 鉄壁の防御力と圧倒的な膂力を持つゴーレムを、おれたちは力を合わせてなんとか撃破した!



「尻尾を巻いて逃げただけだろ」



 辛くもゴーレムに勝利したおれたちだが、ゴーレムを製造した邪悪な魔法使いの魔法によって最果ての地に飛ばされてしまったのだ。

 がんばれリョウ! 負けるなリョウ! コープスまであとわずかだ!



「必死こいて逃げてたら道に迷っただけだろ」



 ちっ、使えない護衛が何かいってるな。



「こっからどうすんだよ。今はまだいいが日が暮れたらまずいぞ」



 魔物の活動時間は夜中。

 だから日の出ている時間は安全だ。

 さっきのゴーレムはうっかりおれが触れてしまったからな。

 次はもうあんなヘマはしない。



 逆にいえば日が暮れたら危険だ。

 夜中のジャングルは魔の領域。オーネリアス軍ですら進軍を控えるそうだ。



 ミチルはそれを心配しているようだが……安心しろ。

 おれは一度スラム街で迷子になっているからな。同じテツは二度踏まねえよ。



「実は逃げている最中、木に剣で傷をつけながら逃げていた。こいつを辿っていけば通行路に戻れるはずだ」


「あいかわらず抜け目ねえな。悪党は人を騙すのに頭を使うからか?」



 てめえは素直に人を誉められねえのか!


 ……まあいい、さっさと戻るぞ。

 日が暮れるまでまだ時間があるが、もたもたしてていい理由はないからな。



「なあミチル。今って昼時だよな」


「ああ。太陽はまだ真上にある」


「じゃあ、今おれたちの目の前にいるのって何?」


「知らないのか、魔物だよ。現地の住民には『ゲドラシャ』と呼ばれている。おまえの国ではなんて呼ばれてるんだ?」



 おれの国? 日本のことか?

 日本ではそうだなあ……虎が一番近いかな?



 黄褐色の胴に黒い横じま。四本の足で大地を駆け、鋭い牙で獲物を狩る。

 ライオンと並ぶ百獣の王だ。

 うん、ゲドラシャくんの個性と見事に一致するね。



 あ、でも牙はここまで長くないかな。

 あまりに長くて今にも地面につきそうじゃないか。

 まるでサーベルだ。



 よし、決めた。彼のことを『サーベルタイガー』と命名しよう。

 ゲドラシャとかダサい名前は今日でおしまいに……あ、すいませんゲドラシャさん、そんな眼を血走らせないでくださいよ。

 おれなんか食べてもまずいっすよ。腹壊しますよ隣の奴のほうが身が引き締まってておいし……ちょちょちょちょちょちょちょちょっ!



 ゲドラシャが咆哮をあげて襲いかかって来た!

 ここここ、殺されるううううううううううぅぅぅぅ!



 おれが腰を抜かしていると、飛び上がったゲドラシャの首もとから鮮血がほど走る。



「刃が通るな。こいつならどうにかなる」



 ゲドラシャを殺ったのはミチルだ。

 腰からとんでもない速度で短剣を引き抜きゲドラシャの喉を斬り裂いたのだ。



 なんつー動きだ! 超人かよ!

 おれとやってたときはマジで手を抜いてたんだな!

 何はともあれ助かった! 使えない護衛だなとか思っててゴメンね!



「安心するのはまだ早いぞ」



 ミチルが鋭く周囲を見渡す。

 まさか……。



 嫌な予感は当たった。

 森の奥から突き刺さるような視線を感じる。

 どうやらゲドラシャは一匹だけじゃない。他にもたくさんいるみたいだ。



「おかしいな。昼中なのになんでこんなに魔物が活発なんだ?」



 問いかけるミチルの声に少し焦りが見える。

 さすがにこの状況はヤバいってことか。



 人間にも夜型の奴がいるように、魔物にも個体差があるってことなのかね。

 おれが初めてスナザメに襲われたのも昼間だったしな。

 もっともあれは、おれがウッカリあいつの背中を踏んづけちまったせいだけどな。


 もしくは、眠くても起きなきゃいけないような事態が起きてるとか――――





 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン





 耳をつんざく轟音がジャングル全体を大きく揺らした。

 同時におれたちを見つめていたゲドラシャたちの気配が霧散する。



 ……これで確定だな。



 昼にも関わらず魔物たちが起きている理由。

 このジャングルの平穏を乱す部外者がいるんだ。



「危機は去ったようだな」


「……いいや、まだだ」



 あのゲドラシャたちが尻尾を巻いて逃げるほどヤバいヤツだ。

 オーネリア軍か? それとも魔族か?



 いや違うな。

 こいつは個体だ。軍隊じゃない。



 今このジャングルには、現地に生息している魔物どもをモノともしない恐るべき怪物がいる。



 どうやら、おれたちの危機はまだまだ続くらしい。

危機はまだ去らない

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