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熱い時代

 おれたちが寝食するために用意された共同宿舎。

 通称『奴隷寮』。

 その一室で、おれはミネアさんからもらった資料とにらめっこする。



 ヴァンダルさんの失敗は個人事業主として仕事を請け負ったことだ。

 たとえオーネリアスの代表として呼ばれようとも個人でやれることには限度がある。

 それじゃあ夢は叶えられない。



 よっておれはきちんとした商会を立ち上げる。

 ウォーレンにモノを売るのにマイラルを仲介せずとも済むようにな。



 オーネリアスだと売るモノは資源ということになるな。

 メドラダイトに限らずここには様々な希少金属がゴロゴロ転がっている。

 他国の連中に甘い汁を吸わせてやる必要はない。



 ……マリガンさんにはちょいと悪いことになるかもしんねえな。



 まあいいか。あのひとには別の利益を提供してやればいい。

 ビジネスっていうのは互いが幸福にならなきゃいけないからな。

 その辺はおいおい考えていこう。



 ああ、それとおれたちには後ろ盾がいる。

 それもできるだけ大きな後ろ盾が。



 商会っつっても今んとこガキが二人の超弱小だからな。

 何の後ろ盾もなしじゃウォーレンの連中に舐められること間違いなし。



 さて、後ろ盾としてはどこをチョイスするかな。



 今にらめっこしているのがそのための資料なんだが……これが意外と多くて迷う。

 ざっと目を通しただけでも、めぼしいところはこれだけある。



 造酒を中心に活動するバッカス商会。

 オーネリアスの地酒『バッカス』の名を冠するいわずと知れた大御所だ。

 飲めば千日高揚が続くというこの酒は今や世界中で愛飲されている。



 武具専門のレイモンド商会。

 特殊な釜を用いたレアメタルの加工を得意としている。

 発注が来ればどこへでも、たとえ魔族でも武器を売る死の商人として有名だ。



 穀物輸出を生業とするリカルド商会。

 現在エルメドラで消費される食料のなんと3割近くをここが担っているらしい。

 後ろ盾としては最有力候補だが一次生産のみで食品加工はいっさい手がけていない点が少し気になる。



 鉱物輸出業で有名なメルト商会。

 メドラダイト輸出の最大手でおそらくはおれたちのライバルになるであろう商会だ。

 利害は一致しているが、だからといって手が組めるかどうかは別問題だ。



 他にも絹を生産している商会や魔物の体の一部を売買している商会なんてのもあって実に興味深い。



 発展途上国だと聞いていたが、まさに読んで字のごとく。

 オーネリアスは今、急速に発展している最中なんだな。



 日本でいうと高度成長期ってところか。

 国が一番熱い時期だ。

 こんな時代に立ち会えるなんておれは実にラッキーだ。



 こいつはちんたらしてられねえ!

 おれも早く動かなきゃ時代に置いていかれるぜ!





「ミチルでかけるぞ! 準備しろい!」



 隣で寝ていたミチルをおれは蹴り起こす。

 するとこいつはあろうことかおれの腕の関節を極めてきた。

 おいふざけんな! おれはてめえの上司だぞ!?



「おまえさ、この前はそう慌てんなとかいってなかったか?」


「そりゃ渡航の話だ! ウォーレンの商会が会議の調整を終える前におれたちは商会を立ち上げなきゃならねーんだぞ!? 事態はすでに動いてるのに今慌てねえでどこで慌てんだよ!!」



 その説明で納得したのかミチルは極めていた関節を外した。

 痛たたたた……あいかわらず乱暴なやっちゃなあ。



「で、どこに行くんだ?」


「首都コープス。オーネリアス王に商会を立ち上げる許可をもらう」


「早いな。もう後ろ盾が決まったのか?」


「ああ、すでに決めたぜ」


「バッカスか? それともリカルドか? まさかレイモンドってことはないよな」


「オーネリアスに決めた」


「……は?」



 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているミチルに、おれはしたり顔でこういってやった。



「オーネリアス王に直接おれたちの後ろ盾になってもらうことに今、決めたぜ!」

・・・・風が、・・・・くる!・・・・

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