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エンジョイ奴隷ライフ

 結局、おれは牢獄から出してはもらえなかった。



 囚われている理由はよくわからんが、どうやらおれはここの住民から歓迎されていないらしい。



 おかしいな、おれはこの異世界で勇者をやる予定のはずだったんだが……どうしてこうなった?



 あ、でも牢獄の中はなんつうか、こう……ちょっと居心地がいいよね。

 常に薄暗くて今が朝か夜かもわかんないけど、ひんやりとして涼しくて、バカ暑い外とは大違い。

 あのまま砂漠を歩き続けてたらいずれ干上がってただろうから、その点についてはラッキーだ。



 おまけに飯もでる。

 つうか今、食ってる。

 なんとステーキだ。



 このステーキ、脂はのってないし噛むとなんかざらざらとした妙な歯触りがあるけど、決して食えないことはない。

 最初はどうかと思ったけど、慣れてくるとむしろやみつきになるうまさがある。 

 囚人なんだから犬の餌みたいなもんが出てくると思っていたから、これは嬉しい予想外。日頃の行いがよいおかげだな。



 それにしてもこれ、何の肉だろう?

 牛でもブタでもない不思議な味わいだけど、異世界の生物の肉かな?


 ……まさかと思うけど、さっきのスナザメの肉じゃないよね?



 まっ、何の肉でもいいか。うまいことには変わらないわけだし。

 でもあえて贅沢をいわせてもらえば、ナイフとフォークぐらいは出して欲しかったかな。手掴みで食べるのは熱くてちょっときついから。



 食事を終えてしばらくすると、雑談をしていた看守がおれのところにやってきた。

 鉄格子の近くにいるとまた殴られそうだから今度は離れておく。

 おれさまは賢いのだ。



「■■■■」



 だから何言ってんのかわかんねえって。

 牢獄の鍵を開けたから、たぶん外に出ろってことなんだろうけど。


 おれは腕に枷をはめられてから、看守に連行されて牢獄の外へと出た。



 地下にあった涼しい牢獄から、おれはふたたび炎天下の砂漠へと舞い戻った。



 暑い。実に暑い。

 暑いっつうか熱い。


 強い紫外線がお肌に悪そうだ。

 まあ、そんなこと言っていられる状態じゃないけど。



 外にはすでに、おれと同じ境遇だと思しき人たちが集合していた。

 みんなボロボロの身なりで、一様に生気のない顔つきをしている。



 いや、たぶんそうだろうなあとは……思ってたよ?

 ただね、なんかこう……実感がなかったんだよなあ。



 異世界にきてからまだちょっとしか時間が経ってないってのもある。

 巨大生物だとか魔法だとかいうファンタジーなものを見せられてちょっとフワフワしてたってのもある。


 ともあれ、おれは今までどこか夢見ごこちだった。



 でもなんつうか、こういう終わっちゃってる人たちと一緒にいると、嫌がおうにも痛感させられるんだよなあ。



 どうもおれは、奴隷になったらしいってさ。



 いや、いいよ? 奴隷上等だよ?

 腹もふくれたし休憩もじゅうぶんとった。ちょうど運動したいと思っていたところだ。

 強制労働でもなんでもやってやろうじゃないの。









 か、身体が、動かん……ッ!



 バカでかい石を台車に乗せてみんなで引っ張る。

 そんな単純作業がまさかこんなにきついとは……ッ!



 腕が! 腕がまるで鉛のように重い!

 足も生まれたての子鹿のようにガタガタと震えてる!



 慣れない作業が、おれの五体の筋肉をまたたく間に破壊してしまったのだっ!!!



 これ以上働くのは無理だ。つうかもう歩けん。

 おれはあきらめてその場にへたりこんだ。



 あかんわ。このままでは熱中症になってしんでしまう。

 だれかおれをどこか涼しい場所に運んでくれないものか。



 あ、看守さん! ちょうどいいところに!


 忙しいところをすいません。ちょっとおれを監獄まで運んで……ってギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!



 え? 今おれ背中を鞭で叩かれた?

 なんで? おれ真面目に働いてたじゃん。そりゃあ今はちょっと手を休めてるけど、身体が動かないんだからしょうがないじゃん。


 だからもうちょっと手心をくわえtぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!

ポジティブなのがとりえ

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