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メドラってなんだ?

 マリガンさんから割り当てられた部屋で、おれは買ってもらった魔法書を読む。



『やさしいまほうにゅうもん』とのことだがぜんっぜん優しくない。



 たぶんこの世界じゃ常識なんだろうけど、とかく専門用語が多すぎる。

 この『メドラを集める』のメドラってなんだよ。入門書ならちゃんと書いとけやボケ。



 ……まあ書いてあってもおれには理解できんかもしれんがな。



 日本でも専門用語を専門用語で説明するなんてざらにあるしな。

 こりゃ独学じゃとうてい無理だわ。



 師匠がいるな。

 魔法使いの師匠だ。



 魔法が使えるなら誰でもいい。

 この屋敷にも何人かいるから誰かに頼んでみるかな。

 でもおれ、メイドたちから煙たがられてるからなあ。



 おかしいな。おれのような超絶イケメンがどうして女たちから煙たがられてるんだか。


 やっぱり奴隷だからか?

 奴隷なのがいけないのか?

 奴隷はイケメンであることを打ち消すほどのバッドステータスってか?



 かぁーっ! 男を肩書きでしか見ない女は嫌だねぇ――っ!

 おれはそういう女大嫌いよ!

 いたよいたいた。おれの故郷にもそんなゴミ女がわんさかとさ!





 ……ん?


 アイアンメイデンで串刺しにされたはずのおれが、なんで生きてるのかって?





 なんでって……そりゃあ、あの手の拷問器具は苦痛を与えるのが主な目的だからね。

 すぐには死なせないように造られてるんだから、そりゃ死なないよ。



 おまけにこの世界には回復魔法なんて便利なシロモノがあるんだ。余裕よ余裕。

 残念だったな諸君。選ばれし勇者は運命に守られているものよ。



 しかしまあ、リリスお嬢さまにも困ったもんだね。

 なにしろ彼女、拷問器具をオモチャか何かだと勘違いしてやがる。

 娘が喜ぶからって理由で世界中から拷問器具を買い付けてるマリガンさんもたいがい親バカだけどさ。



 でも、まっ……おれが高待遇で買われてきた理由もようやく腑に落ちたよ。



 拷問器具で遊ぶなら、とうぜん『遊び相手』が必要になるよな。

 もちろんこんな非道なこと、執事やメイドたちにやらせるわけにはいかない。

 そこでわざわざ異国の奴隷市場にまで足を運んで『遊び相手』としてふさわしい屈強そうな男を見繕って買ってきたわけだ。



 いやはや、さすがはマリガンさん。おれを『遊び相手』に選ぶとはお目が高い。

 おれが『遊び相手』じゃなかったら、いくら回復魔法があったとしても精神のほうが持たなかっただろうね。

 今頃泣きわめいたりして大変だったんじゃないかな?



 脱走とかももくろむだろうからトーゼンながら拘束とかしなきゃならなかっただろうし、防止のために屋敷も改装しなきゃならなかっただろうな。



 そんなことしたらとうぜん悪い噂が立つ。

 悪い噂が立ったら商売に支障がでる。

 せっかく人格者で通ってるんだからマリガンさんとしてもそれは困るだろう。



 おれは子供の頃から特殊な訓練を受けてるから、痛みにはある程度強いしきつい拷問にも耐えられる。

 お嬢さまの悪い遊びに耐えさえすれば、おれは十分に満足でゆたかな生活ができる。

 マリガンさんも満足。リリスお嬢さまも満足。おれも満足。

 つまり三方一両得ってわけだ。








 んなわきゃねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええだろぉぉぉぉぉがよッ!!!!!!!








 ぬぁぁぁんで、このおれがあのクソガキに虐待されなきゃならんわけぇ!!?

 おれは虐待する側であってされる側じゃねええんだよっ!!



 いいかぁ?


 おれがなあ、


 今まで奴隷の立場に甘んじてきたのはなあ、



 その労働に価値があったからだよ!!!



 ピラミッドっつう形あるものを造る手伝いをしてると感じていたから、強制労働もそこそこ楽しめたんだ!

 要するに生産性だよ! 生産性!!



 マリガンさんにこき使われるっつうならまだわかる。

 マリガンさんは商人だ。モノを売る手伝いができるっつうなら喜んで馬車馬のように働くわ。



 でもな、こんな世間も苦労も知らんクソガキのオモチャにされるのはガマンならん!



 今すぐあのガキの部屋に忍び込んでくびりこしてやろうか?



 でもなあ……おれ、マリガンさんに頭を下げられてるんだよなあ。



「君に辛い思いをさせてしまい本当にもうしわけないが、娘のためにガマンしてくれないだろうか」ってさ。



 娘に甘いのは結構なことなんだけど、何事も限度ってものがあると思うんだよなあ。

 それがなきゃあのクソガキを逆に拷問してやるんだけどなあ。



 どうしよう。

 義理を立てるべきか、感情に従うべきか。

 遠慮なくぶちころすべきか、それともガマンすべきか……。



 まいったなあ。本当にまいった。

 はぁ……こんなに悩むのはこの世界にきて初めてだ。困ったなぁ……。

主人公、大いに悩む

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