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はじめての異世界

 気づけばおれは砂漠のど真ん中にいた。



 おれの記憶がたしかなら、田中を吊して遊んでいる最中に、ジャンボジェット機が突っ込んできて……まあ、普通に考えたら死ぬよなあ。



 てことは、ここは天国か?

 にしては暑いな。アホほど暑い。つうかのどが渇いた。どこかに水でもないかなあ。



 ここがどこだろうがひとまずどうでもいい。

 とりあえず水を探そう。









 ……ずいぶん歩いたけど、街のひとつも見えやしないなあ。



 見渡すかぎり砂、砂、砂。

 もちろん足下も砂だらけ。砂に足をとられて歩きづらいことこのうえない。

 アウトドア派のおれでもこれはさすがにきついっつうの。 



 原理はよくわからんけど、どうやらおれはジャンボにぶつかった衝撃で中東方面に飛ばされたらしい。



 おれに石油でも掘れってか? アホくさ、うちは金には困ってないっつうの!



 まあいいや。中東ならパパの会社もたくさんあるはず。

 このまま歩いていればきっとどこかで拾ってもらえるさ。


 さっさと日本に帰ってリア充ライフに戻ろう。

 つねに前向きなのもおれのとりえのひとつさ。



 あ、この辺の足場はかたくてちょっと歩きやすいな。

 いいねいいね。これならもう少し歩くペースをあげられそう。



 でもさ、この砂山……さっきからどんどん高くなってきてね?



 気のせい? 気のせいかな?

 いやいや、気のせいじゃねえよっ! まままま、まさかこれ――――――――ッ!!



「な、なんじゃこりゃああああああああああああああああっ!!!」



 転げ落ちたおれの眼前に現れたのは、高さにして二〇メートルぐらいあろう巨大なサメだった。

 どうもおれは、こいつの背中の上に乗っていたらしい。



 最近の中東は砂漠にサメがいるの?

 しかもこんなビッグサイズの?



 ……んなわけねえよなあ。



 じゃあ、ここってどこよ?

 もしかして……もしかして、だよ?



 ここ、地球じゃない?



 よく見ると、空の色とかも微妙におかしいんだよなあ。なんかちょっと黄緑っぽいし。

 海外だからそういうこともあるのかなってスルーしてたけど、さすがにそろそろ認識を改めたほうがいい気がしてきた。



 ところでこのサメ――砂の中に住んでいたからスナザメと命名しよう――おれのほうをじっと見てるけど……もしかして、おれに惚れちゃったのかな?



 うむ、おれさまは超絶イケメンだから人外に惚れられるということもあるか。

 なんかバカでかい口をさらに大きく開けてるけど……まさかこのおれを食べようなんて思ってるワケじゃないよね?



 え? え? え? 冗談だよね? おれなんか食べてもうまくないって!



 あわわわわ、どんどん近づいてきた! ににに逃げないと……ってあかん、砂に足をとられてうまく走れん!



 だ、だれか助けてくれぇ――――――――ッ!!!!



 慌てて走ったせいで足がもつれた!


 おれさま、盛大にすっ転ぶ。

 ――もう逃げられない!



 すいませんスナザメさん、いやザメニキ! もう二度とあなたの背中に乗ったりなんかしません! なんでもしますから、食べるのだけは勘弁してください!!



 おれが死を覚悟した瞬間、大口を開けたまま追ってきたスナザメの動きがピタリと止まった。



 命乞いが通じた……わけではないらしい。


 スナザメの巨体に、まるで植物のツタのようなものが絡みついていることに気づく。

 これのせいでスナザメの動きが止まったのだ。



 といってもしょせんは植物。すぐに引きちぎられてスナザメは活動を再開しようとする。



 だが、これは拘束を目的としたものじゃない。

 たぶん、ほんのわずかに動きを止められればよかったのだろう。



 空が暗転した。

 閃光が走り、轟音は後からやってきた。



 おれが耳をふさいだときには、すでにスナザメは黒こげになっていた。

 天から降り注いだ雷が、スナザメに直撃したのだ。



 ま……魔法だ……ッ!



 今の雷は自然現象じゃない。

 あきらかに何者かの力によって放たれたものだった。



 すごい! すごいすごいすごい!

 おれは生まれて初めて魔法ってやつを目撃した!



 そうか、わかったぞ! ここはファンタジー世界なんだ!

 おれはあの事故で死んで異世界に転生したんだ!



 死んだっていうのはちょっとショックだけど、こんなすげえ体験誰にでもできるもんじゃない!

 おれは選ばれたんだ! 神さまだか運命だか知らないけど、とにかくとんでもなくすげえ存在にさ!



 おれの人生――やっぱ充実してる!



 ああ、おれもあんな風に魔法が使いたいなあ。

 きっとここにいれば使えるんだろうなあ。

 どうしたら学べるんだろう。



 そうだ、おれを助けてくれたひとに聞けばいいじゃん。

 ついでに水と食料ももらおう。

 おれって頭いいなあ。



 というわけでさっそくおれは、おれを救ってくれた魔法使いのところに駆けよった。



 おれを助けてくれたは魔法使いは、頭にターバンを巻いた五十ぐらいのおっさんだった。あごにたくわえたヒゲが実に魔法使いっぽくて好感がもてる。


 背後には、らくだに乗った仲間が五人。

 みんなで旅でもしてるのかな? いいなあ、おれも仲間に入れて欲しいっす。



「助けていただきありがとうございます! あ、ついでにおれのこと弟子にしてください!」



 おれが声をかけると魔法使いは仲間たちと顔を見合わせた。

 どうも不審がられているらしい。



 まあ、無理もないか。なにしろおれは異世界から転生してきた勇者だもんな。

 いきなり弟子にしてくれと頼むより、事情を説明したほうがいいかも。



 というわけで――おれは自分が異世界の住民で、事故によってこの世界にやってきたということを説明した。


 おれの懇切丁寧な説明が終わると、魔法使いはまた仲間と顔を見合わせてからこう言った。



「■■■■■■■■■■■■」



 ――なに言ってんのかぜんッぜんわかんねぇっ!



 ……。

 …………。

 ………………。


 ………………あ、そうか。彼らには日本語が通じてないんだ。



 そりゃそうだ。地球にだって国ごとに特有の言語があるんだ。ましてや異世界で日本語なんか通じるわけないか。

 勢いでアレコレまくしたてちゃったけどぜんぶ無駄だったか。いや~失敗。失敗。はっはっはっ!



 いやいや笑い事じゃないだろ。

 さて困ったぞ。じゃあどうやってコミュニケーションをとろうか。

 神さまも気がきかないなあ。召喚するならこういうところはきちんとしてもらわないと。


「■■■■■■■■■」



 ん、なんか魔法使いのおっさんが手を前にかざしてきたぞ。


 おお! 空中に魔法陣が!

 かっけー! 手がビカビカ光ってるぞ!


 そうか、間近で魔法を見せてくrぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!

言葉がしゃべれないので低級な人間だと思われました

しかたないね

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