シスター寮侵入 その1
なんかやけに小さい神の像の前で、おれは祈りを捧げるフリをする。
こういうのってフツー大きめに作らね?
こんなナリじゃ信徒どもにただのクソガキだと思われるぞ。
異世界はやっぱよくわかんね。
ウォースバイト中央には当然だが城がある。
その城のかなり近い場所にあるのがこのゴルドハ教会だ。
おれはゴルドハ教に入信するという名目で今、こうしてらしくもないマネをしてるのだ。
ちなみに入信はわりと本気だ。
未来のイリーシャの夫としては、少しぐらい敬虔なほうがいいだろうしな。
イリーシャのためならいくらでも神を信じちゃうよ。
神の像はクソ小さいが、教会は儲かっているらしくバカでかい。
神父であるラシドは貴族だから当然か。
奴隷を働かせて稼いだ富でこういうもんをおっ建てているかと思うと笑えてくるが、孤児を引き取ったり奴隷の世話をして還元しようとしているだけマシか。
おっと懺悔室を発見。
異世界にもあるんだな、こういうの。
おれには懺悔することなど何もないから無縁だけどな。
逆におれが懺悔を聞いてやる側になってやるかな。
マサキ神父か。うん、悪くないね。
さてと、形だけのお祈りも済ませたし……そろそろ行きますか。
おれは教会を出ると、教会関係者に教えてもらったシスター寮へと向かった。
シスター寮はラシド神父が建設した共同住宅地だ。
当たり前だが住民は全員女性。慈悲深い神とその使徒は女しか救わないらしい。
結構ケッコウ、欲望に忠実で実によろしい。
いや、さすがに拾った女に手を出してるとまでは思わんけどな。
ラシド神父にはシスターをたくさん集めなきゃならない理由でもあるんだろうか。
まっ、どうでもいいや。
おっさんの性的嗜虐にはあんまり興味はない。
今のおれにとっての関心は……このシスター寮が、わりと鉄壁だってところかな。
多少低いながらも四方を石壁で囲み、二カ所に監視塔まである。
ちょっとした要塞だ。
いや、わかるよ。女ばっかりの寮だから盗賊の類に狙われやすいってことぐらい。
だから多少は備えがあるとは思っていた。
でもさあ、たかが元孤児の集団になんだこの大層な設備はぁ!?
もしかしたらファンタジー的な理由でもあるんだろうか。
たとえば回復魔法が使えるのは女性だけで、貴重だから国中からかき集めて厳重に保護してるとか。
まっ、どうでもいいか。
何度もいうが、その辺はわりとどうでもいい。
「やれやれ……これは少々骨が折れるな」
おれは首をこきこきと慣らしてから準備運動をはじめる。
いいぜぇ、おれは壁が高ければ高いほど燃えてくるタチだ。
侵入してやろうじゃねえの。この鉄壁のシスター寮によぉ!
盗賊に同情された男の盗賊スキル見せてやるぜッ!
不法侵入は犯罪です




