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レギンパレス



 アーデルと別れたおれは、とうとう山頂にある魔王城に到着した。



 ……こいつがレギンパレスか。



 初めて見たレギンパレスの外見はマリィの工房によく似ていた。

 いや、マリィの工房より更に味気ない。

 半分に割れたタマゴみてえな形をしてやがる。



 つうかこりゃ城と銘打った研究所だな。

 聖煙はここで研究開発されてたってわけか。

 なるほどね、納得したわ。



 さてと、どう忍び込むかな。



 入り口はひとつだけ。

 機械仕掛けの扉はスフィア同様、電子ロックがされている。

 アーデルから認証カードをもらってはいるが……素直にこいつを使って忍び込んでいいものやら。



 中には当然、警備の魔族が数多にいることだろう。

 田中たちのおかげで数が減っているとはいえ、今のおれにゃ少々手に余る。



 だったらどうするか?



 天岩戸あまのいわとは、向こうから開けてもらったほうがいいかもしれねえな。





 おれはレギンパレスをスルーすると、城の傍にある大きな煙突のついた工場に足を踏み入れた。





 工場の内部ではたくさんのベルトコンベアーが聖煙の原材料であるブラックダイヤを運んでいた。



 運ばれたブラックダイヤは特殊な炉で溶かされ、様々な抗魔物質と混ぜ合わされる。

 激しい魔学反応を起こしたブラックダイヤは気化し、煙突から吐き出されて上空で黒き雲となる。




 そう、ここが噂の聖煙製造工場だ。




 二十四時間稼働しているこの工場、すべての作業が全自動であり無人だ。

 人が来るのは定期メンテナンスと機械に異常が発生した時だけとのこと。

 実に便利で結構なことだが、逆にいえばセキュリティはガッバガバ。



 おれみてえな悪党が忍び込んだ時のために、最低限の用心ぐらいは――――




「――――しておきなぁっ!」




 おれは工場の計器類に竜鱗の剣を思いっきり叩き込んだ。



 ノーティラスの話じゃそうとう頑丈な機械らしいが、この剣の前ではチーズも同然。

 計器類は簡単に斬り裂かれあえなく爆発炎上した。



 そして、もちろんおれもそれに巻き込まれた。



「熱ぃ! 熱ぃ!」



 いかんいかん。ちょっと油断しとったわ。


 だが悠長に熱がっている暇はない。

 人が来る前にさっさと退散するぞ。




 ウーーウーーウーー~ッ!




 鳴り響くサイレン。

 慌てて城内から飛び出す魔族たち。

 こいつらが消火作業にあたる様を後目に、おれはそそくさと城内へと侵入した。









 盗賊七つ道具のひとつ。

 特殊迷彩スーツ。


 カメレオンのように周囲の景色と同化できる、とても優れた魔道具だ。



 ……逆にいうとそれだけだから、気づく奴にはあっさり気づかれちゃう。



 違和感に気づかせないためにはちょっとした工夫が必要だ。

 今回みたいに騒動を起こしたりしてな。



 外の連中は今ごろ工場に危害を加えた犯人を探しているだろうが、まさかとっくの昔に城内に侵入しているとは思うまい。



 楽勝楽勝!


 さあ時間がねえ。

 ちゃっちゃと行くぞ、魔王の下へ!





 無機質な廊下をおれは息を潜めて歩く。

 音を立てず、気配をころし、わずかな違和感にすら感づかせない。

 魔道具とて完璧ではない。

 けっきょく最後は使う人間の技量がモノをいうのだ。



 ロイヤルズがいたらヤバかったかもしれんが、そいつらはすでに出払っている。

 希代の盗賊であるおれに気づける奴は城内にはいない。



 ノーティラスが居たころのままなら、この先に魔王の玉座があるはずだが……。



 ――……ビンゴ。



 入り口の時と同様、機械仕掛けの分厚い扉がおれの眼前に立ち塞がる。



 間違いない。

 ここに魔王イドグレスがいるはずだ。



 おれはアーデルからもらった認証カードをスロットに挿入する。



『認証チェック……OK。解錠シマス』



 プシュッ。


 空気の抜けるような音と共に、巨大な扉が割れるように開いた。




 ようイドグレス。

 とうとうここまできたぜ。




 ここに至るまでの道のりは、長かったような、短かったような。

 おれなりに最短距離でやってきたつもりではいるがな。



 ともあれ――ここがおれの旅のひとつの終着点だ。



「はじめまして。おれの名前はマサキ・リョウっつうんだ」



 主神ゴルドバに認められた六番目の王――人間の王だ。



「同じ王として、今日はあんたと話し合いにきたぜ」




 そしておれは対峙する。


 エルメドラを幾度となく恐怖の渦に陥れた魔王イドグレスと。


 世界の命運をかけて。



魔王との対面

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