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主神ゴルドバ


 機装車が停止した。

 ドアが開いたためおれたちは顔を見合わせて外に出る。



『到着。到着』



 パロに案内された先には巨大な機械仕掛けの門があった。



 ふん――なかなかご大層な門じゃねえか。



 この先に主神ゴルドバがいるのか。

 ふふ、もうちょっと苦労するかと思ったが、思いのほか早く着けてよかった。



『ロック解除します』



 パロの目が怪しく光ると、おれの身長の何十倍もある門が音を立てて開いた。



『ボクの後についてきてください』




 そういうとパロは、体をまるでゴム鞠みてえに跳ねさせながら、門をくぐって中に入っていった。



 いったいどんな身体構造してやがるんだ。

 神さまのロボット製造技術はすげえわ。



 ――さて、鬼が出るか蛇が出るか……入ってみてのお楽しみだな。





 実にSFチックな機械の城は、大仰な門とは裏腹にそこまで広くはなかった。

 つうか中にある門をくぐるにつれ、どんどん先細りしていって最終的には普通の通路になっていた。

 見栄か? ただの見栄なのかこれ!?



 まあ、実は予想はしてたんだけどな。

 中が広かったら車で乗り込んでいただろうし、ここはおそらく宇宙船でいうところのコックピットに相当する場所だろうからな。



 そんな場所に招待するとは、たいした度胸じゃねえかゴルドバさんよお。

 その自信が裏目に出なきゃいいけどな。





 最後の電子ドアをくぐると、そこは光の海の中だった。





「こ……ここはいったい……ッ!」



 ウォーレンが思わず息をのむ。



 それも当然。

 この部屋には、エルメドラに存在するありとあらゆる景色が映されていたからだ。



「ようこそマサキ・リョウ。我が城の感想を聞かせてはくれないか?」



 モニターだらけの部屋の奥には人がいた。

 奥にいる人物は座っていた椅子をクルリと回し、とうとうその姿をおれの前にさらけ出した。



「すばらしい技術の結晶です。心底感服しておりますよ――主神ゴルドバさま」



 ゴルドバの外見は――――平たくいえばクソガキさまだ。



 短く狩りそろえた黒髪とにきびだらけの顔。

 にやりと笑った口を見れば見栄えの悪いすきっ歯を確認できる。

 ガンダムのパイロットが着るノーマルスーツみてえな服さえ除けば、特筆すべき特徴など何ひとつとしてない。

 こいつが神だといえば首を傾げたくなる奴も多いだろう。



 だがこれも、最初から予想がついていた話だ。

 ウォーレンの教会にある主神ゴルドバ像はやけに小さかったからな。



「おお、ゴルドバさま! 伝説に謳われる通りのそのお姿、妾はいたく感動しております!」



 ウォーレンも何やら感動してるようだし、もうこいつがエルメドラの神ってことでええわ。



 ――つまり、このおれさまの獲物ってわけだ。



「リョウよ、別に改まる必要はないぞ。私はこの <スフィア> より、ずっと君のことを見続けていたのだからな」



 ゴルドバはそういってひとつ手を叩く。



「おめでとうリョウ。よくぞここまでたどり着いた」




 パチ。


 パチパチ。


 パチパチパチパチ。


 パチパチパチパチパチパチパチパチ。




 静かな室内にゴルドバの拍手が響き渡る。



「無力な奴隷から始まり、多くの大陸を渡り歩き、数々の冒険を経てここに至った君の人生は、伝説として永く世に語り継がれることになるだろう」



 ……話が見えてこねえな。



 こいつ、いったい何の話をしてる?

 まさかと思うが……。



「主神ゴルドバの名において認めよう。

 マサキ・リョウ、君をエルメドラの六番目の『王』とする!」



 ……やっぱりか。


 タチの悪い冗談だ。

神さまの酔狂にはつきあいきれんわ。



「何かの冗談だと思っているような顔だが、私は本気だ。もし君が自力でここまで着た暁には、君を王にしようと最初から決めていた」


「自力で着たわけじゃねえんすけど」


「謙遜だな。君以外のいったい誰がここまで辿りつけると思っている?」



 ウォーレンは転送機ピラミッドを造ったが、それを有効活用することはできなかった。



 マリィは優秀な錬金術師だが、行動力のないただの頭でっかちにすぎない。



 知恵と勇気でそれらを束ね、ここまでたどり着いたのは間違いなくおれの力だと、ゴルドバは諸手を叩いて賞賛した。



「君に大陸をひとつ授けよう。『マサキ大陸』と命名した。なかなかいい名だろ?

 必要とあらば人民もこちらで用意しよう。もちろん他国から召集しても構わない。

 ウォーレンか? オーネリアスか? それとも日本がいいかな?

 私がいくらでもさらってきてやろう!」



 いってゴルドバは、何がおかしいのかケラケラと笑い出した。

 何をわけのわかんねーこといってやがるんだこのクソガキが。泣かすぞボケ。



「マサキの初代国王か……やったなリョウ、これで妾たちに身分の差はなくなったぞ! すばらしい国にすべく共にがんばろう!」



 ウォーレンはウォーレンで何やら盛り上がってやがるし……この場でまともなのはどうやらおれだけのようだ。



「リョウよ、他に何か欲しいものはあるか? 富でも名声でもなんでも好きなだけ与えられるぞ。なにしろ私はエルメドラの神だからな」


「おれがあんたから欲しいモノはただひとつ。情報だけだよ」



 どうやらこいつは天からおれを監視していたらしく、おれのことな何だって知っている。

 だったらもう本性だってバレてるし敬語なんざいらんだろ。



「ほう情報とな。いいだろう、私の知ることなら何でも教えよう」


「あんたさ、ズバリ日本人だろ?」



 ゴルドバは一瞬きょとんとした顔をすると、すぐに大声で笑いだす。





「さすがだなリョウ。そのとおり、私は日本人ジャパニーズだッ!!!」





 ……だよな。



 だと思ったよ。

 ハロのパロディといい、そのいかにもモビルスーツに乗ってそうな宇宙服といい、いくらなんでも日本のサブカルチャーに詳しすぎるもんな。

 エルメドラの文化もどこか地球のそれと似てるしな。



 だったらもう、決定だな。



 人間の分際でおこがましくも神を騙ったその無礼、今ここに精算すべし!



偽りの神!

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