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死んだ後に墓っているか?

 さ、寒ぃ~~~~~~~~~っ!!!

 わけわかんねえ! 昼はあんなに暑いのに、なんで夜はこんなに寒いんだぁ!?



 看守からくすねた鍵を使って、おれは生まれてはじめて異世界の夜を満喫する。



 いやぁ、絶景絶景。寒いけど。

 やっぱ空気の澄んでるところだと星の見え方が違うわ。寒いけど。

 日本むこうじゃ夜空なんて眺めようと思ったことないもんな。寒いけど。


 とりあえず、異世界の夜景は地球とさほど変わらないようだ。



 月っぽいものが三つあるけど。



 しかも赤、緑、青とえらいカラフルだけど……まあ許容範囲内。

 もしかしたら月じゃないかもしれないけど気にしない。



 ちなみに今、おれがいる場所は現在建設中のピラミッドの上だ。



 一度この目で確めたかったんだよねぇ。

 ほら、自分の作っているモノが現在どうなってるかって、知っときたいモノじゃん?

 実物を見ておくだけでも労働のモチベーションが違うよモチベーションが。


 と、いっておいてなんだが……。



「……やっぱいらねえわ」



 勇者になって世界を救って、死後はでっけぇ墓でも作ってもらいてぇなぁー……なんてチラッと考えたこともあったけど意味ないわ。



 おれみたいな選ばれた存在を除いて、死んだら人間それまでよ。

 大切なのは今をどう生きるかってこと。



 生前から死後に思いを馳せてこんなものを作ろうって考えるのは、その時点でリアルが充実してないのさ。

 つまりウォーレンとかいう王さまは非リアだったんだよ。



 ――耳が痛すぎる!



 いやいや、おれは今も昔もリア充だから。

 リア充すぎてちょっと飽きてきただけだから。



 ともかくだ!

 おれはもう、こんな立派な墓はいらん!



 ついでに勇者の地位も、もういらん!

 世界なんぞ勝手に魔王に支配されてろ!

 そんなもんがホントにいるのか知らんけど!



 今、おれが欲しいのは知識だ。

 とにかく何をやるにしても知識がなけりゃ何もできん。



 ――知識……知恵……魔法……。



 そうだ、おれは魔法使いになろう!

 素敵な魔法を使ってこの異世界におれのマイワールドを作ろう!



 そして――そのときおれのとなりにいるのは、とうぜん彼女しかいない!



 よし、目標も決まったしさっさと独房いえに帰るか!

 いいかげん寒くて凍えそうだしな!




 翌朝、いつも通り独房で寝ているおれを見て、看守はあからさまに安心した素振りを見せた。



 昨日、鍵を紛失したせいでそうとうお叱りを受けたようだからな。

 これでおれの独房がもぬけのカラだったらこいつ処刑されてたかもね。



 はっはっは! 看守くぅん、命拾いしたなぁ~。

 ちゃんと戻ってきてやったおれさまに感謝しろよ~。足向けて寝んなよ~。



 さて、予行演習はこれでおしまい。

 これで晴れて夜間に自由な時間ができたってわけだ。



 ここから先は本番。

 どうにかしてイリーシャの居場所をつきとめて、二人っきりでお話して親密度をあげるんだ。



 光栄に思ってくれ!

 君は未来の大魔法使いの妻に選ばれたんだからな!

ボロを纏えど心は錦

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