表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/175

グゥエン邸侵入 その2


 竜鱗の剣が宙を舞い、宝物庫の床に突き刺さる。

 グゥエンの野郎はおれの必殺の一撃で完全にノックアウト。

 ピクリとも動かねえ。



 ――勝負あり、だな。



「今日のところはこのぐらいで勘弁しておいてやる」



 ホントは腕の一本でももらいてえところだが、オネットくんの顔を立ててやめておいてやろう。

 グゥエン、息子に感謝するんだな。



 さてと……では、返してもらうぜ。おれの魂をな。



 おれは倒れたままのグゥエンに警戒をしながらゆっくりと歩き、床に突き刺さった竜鱗の剣に手を伸ばす。



「死ねッ!」



 ちっ――やはり寝たフリか。



 おれが剣に触れようとした瞬間――グゥエンはものすごい勢いで起き上がり、懐から抜き出した拳銃でおれを狙撃してきた。



 この距離で短時間であるにも関わらず狙いは正確。

 そうとう訓練されているな。

 こいつも曲がりなりにも軍人ってことか。

 銃もなかなかいい精度のモノを使ってやがる。



ッ!」



 残心は空手家の基本。

 警戒していたおかげで致命傷は避けられた。



 ……が、たとえ天才のおれでも、高速で飛んでくる弾丸をかわしきれるほど超人ではないようだ。



 肩口からじわりじわりと燃えるような痛みが広がっていく。



 左肩に被弾しちまったな。

 まあ、この感じだと骨までは砕けてねえ。

 弾丸は貫通している。ただ肩の肉をえぐっただけだ。



 回復は容易――こいつはラッキー。

 運はまだおれに味方してくれている。



「墜狗が。もうなりふり構ってはいられんわ」



 舐めプをしていただけで元々なりふりなんて構ってなかっただろ。

 まあそんなこたぁどうでもいいがな。



「未成年を殺害するとなると、さすがのおれも警察が気になるからな。このぐらい負傷していれば体面も保てる」



 ああそうかい。

 あんたマジで合法ヤクザだな。

 まっ、盗人のおれがあんたを非難する権利はまるでねえけどな。



 いいぜ、かかってこいよ。

 そんなチンケな豆鉄砲でおれに勝てると思ったら大間違いだぜ。

 何しろおれの手にはすでに最強の武器が戻ってきているからな。



 ――待たせたな、相棒。



 ようやく取り戻した竜鱗の剣。

 その切れ味、その身で確かめてみるがいい。



「剣なんて時代遅れの遺物でこいつに勝てると思っているのか?」


「答えはすぐにわかるさ」



 右腕しか使えねえのがちときついが……まあ、なんとかなるさ。



「さあ、撃ってきな!」



 おれが力強く踏み込むと、グゥエンはそれに反応してとっさに発砲した。

 なんだかんだいってこいつはおれにビビってるからな。引き金が軽いねえ。



 今撃った弾丸は、おれには命中しなかった。

 焦って撃ったから照準が甘かったんだ。


 だが次からはそうはいかない。

 気合い入れて行くぜ!



 グゥエンの目線。

 そして銃口の位置から弾丸の射線を推測する。

 それに併せて剣身を盾のように置いておく。



 三発目の弾丸は、剣に弾かれて天井に風穴を空けた。

 さすがはシグルスさんの剣。弾丸の直撃にもビクともしねえ。

 これならいけるな。



 四発目。五発目。

 こいつらは残念ながら受けきれなかった。

 さすがのおれも弾丸を完璧に見切ることは不可能だ。

 四発目はわき腹に。

 五発目は太股に命中した。



 だが竜鱗の剣で急所はガードしている。

 致命傷を負うことことだけはない。

 あの小口径では急所にさえ当たらなければおれの動きは止められない。



 六発目。

 こいつは顔面に来るね。



 ――読み通り。



 おれは弾丸を剣で弾いて懐に潜り込む。



 グゥエンの銃の弾倉は六発。これで弾切れだ。

 つまりあいつはもう丸腰も同然ってことだ。



「届いたぜ」



 青ざめるグゥエンにおれは容赦なく剣を振り上げた。





 グゥエンの悲痛な悲鳴が夜の宝物庫に木霊する。





 おれの剣は銃を持っていたグゥエンの右腕を切断していた。





 腕はとらないつもりだったんだが気分が変わった。

 きっちり落とし前、つけさせてもらったぜ。



「すぐに止血して回復魔法をかけてもらうんだな」



 いいながらグゥエンの腰につけていた鞘を奪い取る。


 腐っても軍人なんだからそのぐらいはできるだろ。

 そこまでは面倒みないぜ。



 おれは剣で弾丸を摘出すると、常時携帯している治療魔道具で応急処置をほどこし宝物庫を後にした。



 さて、この血塗れの服をどうすっかな。



 忍び込むことしか想定してなかったから始末に困るなあ。

 明日着る服はあらかじめ同じものを調達してあるからいいとして……そうだな、魔法で焼いてからどっか適当な場所に埋めとくか。



 つうかグゥエンが通報するから隠蔽工作なんて無駄か。

 やれやれ今までは無罪を主張できたけど明日からはガチの犯罪者だよ。

 イルヴェスサにはちょいとばっかし悪ぃことしちまったな。



 ……まあいいや。



 とりあえず剣は取り戻した。今日のところはそれでよしとするか。

 後は野となれ山となれだ。

 こういうところは、今も昔も変わんねえなあ。



明日は明日の風が吹く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ