プロローグ
異世界転生はじめました
おれの名前はマサキ・リョウ。
都内の有名高に通う超エリート高校生だ。
漢字で書くと『柾亮』だが、そいつはちょっとクールじゃない。
だからおれは自分の名前を書くときはかならず『リョウ』とカタカナで書くのだ。
みんなもおれのことは気軽にリョウと呼んでくれればいい。
おれはきさくな男なのだ。
年齢は17際。誕生日は9月3日。おとめ座のO型。
趣味はバイクと週末のクルージング。チャームポイントは左耳のつけぼくろだ。
髪は染めているが、今どき金髪っていうのも芸がないかなと思い、周囲をあっと驚かせるニューカラーを模索中だ。
おれは、自分でいうのもなんだがものすごいイケメンだ。
道を歩けば女たちがこぞってふりむくし、学園祭のプレイボーイコンテストでは二年連続一位だ。女子に告白された回数も数えきれない。もちろん全員とつきあっている。プレイボーイだからな!
もちろん女だけじゃない。男からも大人気だ。
おっと勘違いしないでくれよ、変な意味じゃない。あたりまえだがそっち方面の趣味はないからな。おれはノンケなんだ。疑うやつはケツにネギをつっこむぞ。
大人気っていうのはもちろん人望があるって意味なんだ。
友だちだってたくさんいる。両手で数えきれないほどいる。こまったときはいつも助けてやっているから当然だけどな。
とにかくおれはみんなの人気者だってことだけ覚えておいてくれればいい。
そんな完璧超人なおれだから、毎日とても充実した生活を送っている。
俗にいう『リア充』ってやつだ。
たぶんおれは世界で一番リア充している。キングオブリア充――略してリア王といったらおれのことを指すと思ってくれていい。
みんな知ってる? 充実っていうのは満ち足りてる状態のことをいうんだ。
満ち足りてるっていうのはフツー、いっさいがっさい不満のない生活のことをいうよな?
周囲にほんのちょっとでも不満があったら、それはリア王であるおれの生活にふさわしくないって、思わない? 思わない? おれはぜったいに思う!
だからおれはこれから、ほんのわずかにある不満のタネを消そうと思うんだ。
おれのクラスには『田中太郎』というゴミがいる。
まず名前がダサい。美的センスのカケラもない。本人がゴミなら名づけた親もゴミだということだ。
おれならこんな名前をつけられたら自殺するかつけた親をころすね。
そして体型が醜悪。
ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくとまるでブタのように肥え太っている。そのせいか脂ぎってて体臭もひどい。
生活管理という言葉を知らないのだ。
ゴミはゴミでも粗大ゴミだからなおタチが悪い。
さらに趣味まで劣悪。
何しろこいつ、ヒマさえあればスマホをいじってるからな。家に帰れば美少女フィギュアに囲まれた部屋でネットざんまいの日々らしい。
世間一般でいうところのキモオタだ。
正直キモい。かなりキモい。すぐキモい。すごくキモい。
他にもキモオタは何人かいるが、間違いなくこいつがNo.1だ。
おれがキングオブリア充ならこいつはキングオブキモオタだ。
同じ教室で同じ空気を吸っているだけで不愉快だ。
今までは、こいつのほうからおれに関わってくることはなかったから、おおめに見てやっていたのだが……さすがにもう限界。リミットブレイクだ。
ゴミはきちんと処分しないと悪臭がとれなくなって後から困るのだ。ちゃっちゃと掃除しなかったものぐさな自分を恥じるよ。
おれは反省した。海よりも深く反省した。
だから今までの分もあわせて徹底的にやろうって決めたんだ。
とりあえずおれは友だちを使って田中をいじめたおすことにした。
あわよくば自分から学校に来るのをやめてくれるかもしれないと期待してのことだ。
机に落書きをしたり、
靴の中に画鋲を入れたり、
カバンの中にゴミを放り込んだり、
本人に聞こえるように陰口をたたいたり、
他にはええっと……適当に指示してたから忘れたけど、とにかく思いつくかぎりの嫌がらせをした。
おれの友だちは本当によく働いてくれたよ。
これでひとりにつき一万円なんだから清掃費としては格安だ。
友だちの名前は……ん~、ちょっと思い出せないかな。なにしろおれは友だちが多いからね。
ただ、あまりに間接的すぎてちょっと手ぬるいんかもしれないな。
なので、今度は校舎裏に田中を呼び出してリンチしてもらうことにしたんだ。
暴力は野蛮で嫌いだけど、直接的な刺激を与えたほうがより効果的だと思うからね。しかたないね。
はやく不登校になればいいのに田中はバカだなあ。
あ、これにはおれも参加させてもらったよ。身体を動かすのは大好きだからね。
膝で前歯をへし折ってやったらまるでブタみたいな悲鳴をあげたのでとても楽しかった(笑)
やっぱりこいつの前世はブタだったんだね。もちろんおれは知ってたよ。
でもさ、おれはつねづね思うんだよ。
正直こういういじめは陰湿だよね――って。
これはいじめに限った話じゃないけど、陰でコソコソ何かをやるのは良くないって思うんだ。
そういうのは卑怯者のやることだ。フェアじゃない。
というわけで、表で堂々とやってみることにした。
おれは田中を校庭に呼び出すと服を脱ぐように命令した。
田中の醜悪さを校内中の生徒に教えてやろうと思ってね。
田中は最初はしぶったけれど、二~三発腹を殴ったらすぐに従ってくれたよ。おせえんだよボケ!
リア王であるこのおれさまに従うのはキモオタの義務。
最近のゴミどもはそこのところをわかってないから困る。
さて、とりあえず脱がしてみたのはいいんだけど……さらし者にするにしても、これじゃちょっとインパクトに欠けるかな?
もうちょっと全校生徒のみなさんに見やすい場所に移動したいんだけど、どこかいい場所ないかなあ。
あ、そうだ!
アレなんていいんじゃないかな!
運動会のときとかに国旗とか校旗を掲げるこのポール。
ロープを使ってここに田中を吊しあげてやればそうとう目立つぞ。さすがはおれ、ナイスアイディアだ。
よぉし、思い立ったら吉日だ。
さっそくおれは友だちといっしょにこの『田中校旗化計画』。略してTFPを実行に移した。
ところがこの計画、開始当初の予想よりかなり難航した。
とにかく田中が重いのなんのって……こういうときのためにきちんとダイエットしとけよな。思いやりの心のないゴミだなあ。
だが努力の甲斐あって、おれはどうにか田中を吊しあげることに成功した。
一時はダメかと思ったけど、人間何事もなせばなるもんだ。
ふぅ……いやぁ、いい汗かいた。今日も充実した、いい一日だったなあ。
田中も涼しそうだし喜んでくれているに違いない。
うむ、こうして吊されてる田中の姿を見てると、なんか十字架にはりつけられてる聖人に見えなくもないな。
いや、さすがにビジュアル的になしか。
なにしろゴミだもんなあ。失敬失敬、聖人のみなさんごめんなさいね。
……ふと思ったけど、これロープが切れたらどうしよう。
ポールはそこまで高いわけじゃないけど、落ちたら死にはしないだろうけど骨折ぐらいはしちゃうかも。
まあいいか、田中だし。自分が重いせいで切れるんだから自業自得ってことで。
ん? なんだか校舎が騒がしいな。
みんなおれの偉業を讃えているのか?
それとも、おれの偉業の邪魔をしようとするやつでも出てきたのかな?
うちのパパはものすごいお金持ちで権力者なんだぞ。表だって逆らおうと考えるバカがまだいるなんてビックリだ。
でも、なんかそれとはちょっと違う感じなんだよなあ。
なんつーかな、こう……圧倒的な驚異におびえてる、みたいな?
おれは空気の読める男だからそういうのに敏感なんだ。
不審に思って友だちのほうを見ると、なぜか青い顔をして金魚のように口をパクパクとさせている。
かと思えば、まるでネズミのように猛ダッシュでおれのもとから逃げ出していくじゃないか。
おいおい、おまえらがいなくなったら田中を降ろせないだろ。
これはもう絶交だな。パパに頼んであいつらの親の職を奪ってやろう。
やれやれ、いったい何をそんなにビビってるんだか。
おれは肩をすくめながら、元友だちが青い顔をして見ていた方角に視線をむけた。
「じ……ッ!」
ジャンボジェット機だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁっ!!!!!
ななななななな、なんでジャンボジェット機が校舎めがけて突っ込んできてるのォ!?
いったいどういうこと? 自爆テロか!? 国の宝であるおれを狙ってきたの!!? ワケわかんねえっ! けど今から逃げても間にあわんおjもいklp
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