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58 旧王家の者

 話の流れがだいたいわかってきたぞ。


「それで、カトラ王国は帝国に攻められて滅んだわけだよね」

「そういうことじゃ。王家の者も多分だいたい死んだと思う。王家の生き残りがいると再興の旗印にされるからのう。王族というのは国が栄えておる時はよいが、そうでない時は悲惨じゃのう……」

 どんな栄えてる国も滅ぶ、これは避けられない運命のようなものだ。


「そして、カトラ王国は滅んだのじゃが、ぶっちゃけ国民は猫人族の国はほしいと思ったわけじゃが、前の王家にはろくな思い出がないので、これを復活させたいとは考えんかったのじゃ」

「だから、前の王家についての話を全然聞かないのか……」


 国が滅んだこと自体は大問題だけど、国自体がある種の黒歴史なわけだ。

 つまり、過去の栄光の時代ですらないんだな。


「ここまで言えばわかってもらえると思うが、そんな王家が信仰させていた神がどうなるか予想がつくじゃろ?」

「信じない。むしろ、お前が悪いから国が滅んだんだとか言って排撃するかも」

 こくこくとインターニュがうなずいた。


「あやつは国が滅んだ直後、パニックになっておったわ。自分の力が急速に弱くなるんだけど、どうしたらいいのかとわらわのところにまで泣きついてきおった。あそこまで民に人気がないのではどうしようもなかったのう……。国が信仰を強制した神というのは、国が終焉を迎えると同時に消えてしまうのじゃ……。そのまま、見ることもなくなったわ」


 インターニュの表情は少々寂しそうだった。

 同じ学び舎の問題児がいなくなったら、それはそれでショックというようなものだろうか。


「そっか。もしかして、思い出したくないこと、思い出させちゃったらごめんね」

「いや、いいのじゃ。むしろ、ニューカトラ王国の特異性がよくわかった。みんな、過去のことを思い出したくもないのじゃな」


 じゃあ、ニューカトラ王国ってあんまりいい国名じゃない気もするが、まあ、誰も反対しないし、いいのかな。


「ちなみにバルンビルンというのはネコ耳の神じゃった。むしろ、じゃからこそ、ネコ耳じゃないおぬしが新しい神としてふさわしいと思われたのかもしれんな。ネコ耳の神じゃと、かえって拒否反応が出たかもしれん」


 信仰って難しいものだな……。

 神様はどうしてもえらぶってしまいたくなる。なにせ、神様だからな。けど、民衆の信仰から離れると神様はやっていけなくなるのだ。そこを忘れてはいけない。

 ギブアンドテイク的にご利益を与える神様もどうかと思うが、民衆から愛されない神というのは、やっぱりダメなのだ。


 一方、オルテンシア君は「フォークを振り回したらダメです! 危ないですよ……」とカルティアに教育を施そうと苦戦していた。



 こんな調子で、カトラ王国の神についての話は終わりになったのだが、数日後、意外な事件が起こることになる。


 ある者たちが捕まって、ニューカトラに引っ立てられてきたのだ。

 ただし、彼らは人を殺したわけでもなければ、物を盗んだわけでもない。人を騙したわけでもない。なので、厳密に言うと、何の法律にも抵触してないはずだった。それでも、とある事情によって引っ立てられてきたのだ。


 そのある者たちとは何か。

 ずばり、カトラ王国の王家の末裔たちだった。

 身分を隠してそのまま難民として生活し、やがて、ニューカトラ王国にそのまま住み着いていたらしい。


 王国議会でも、彼らをどうするかの話し合いが行われていた。私も様子を伺うことにした。


「王家は長らく猫人族を搾取してきた者たちであり、彼らの失政によって国も帝国に負けて滅んだのです。ある意味、国を滅ぼした帝国と同罪とすら言えます。処刑するべきです」

 猫人族の議員がそう発言した。


「落ち着いて考えましょう。別に彼らが積極的に国を滅ぼしたわけでもないし、今の国を奪おうと何か画策していたわけでもありません。しかも、王家の者と言っても、傍系にすぎないでしょう。罪とするのはおかしいです」

 犬人族の議員が諫めた。


 その人の言うとおりだとは思うけど、わざわざ連れてこられるということは、それだけ元王家が嫌われてるということだろうな。


「困りましたね」

 小声でリオーネが私に言った。

「王家の問題はややこしいからふたをしていたのですが。これがきっかけで王家で禄をんでいた者を見つけ出して処罰しろだなんて流れになると大変です」

「たしかにまったく意味のないことで争いが起こっちゃうよね……」


 これは地味に大問題なのではなかろうか。


 結局、その日だけでは結論が出ず、神殿側からも何か意見を表明するということになった。成立の経緯から、この国は神官の権限が強いのだ。リオーネからして、すべての神官のトップみたいな立ち位置だし。


 私、ファルティーラを祀る神殿の人からも、なかなか厳しい意見が出た。

「彼らはバルンビルンの神像を持っておりました。この神はまったく猫人族を助けてこず、ただ、王家だけを守ってまいりました。こういった神を秘密裏に祀っていたとなれば、これは国に対する反逆罪となるのでは?」


 猫人族の人たちはやたらと王家に辛辣だ。恨みつらみがすごいな。


「ええと……神像を持っているのと信仰していたのとはまた違うはずですし、もう少し寛容に考えませんか……?」


 リオーネも神官の中に強硬派がいるので、困っている様子だった。


「それにもしかしたら、かつての神も反省しているかもしれませんし……」


 そうだ、昔の神は今はどうしてるんだろう?


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