51 超狭い信仰の神カルティア
新キャラ登場です。
私たちは声のしたほうを向いた。
そこにはかなり異形の神がいた。
なにせ、足がたくさんの触手になっていて、うねうねと動いているのだ。クラーケンという化け物がこんなふうに描かれることがあるかもしれないけど、それに似ているだろうか。
上半身は女性の体らしく、胸は布で縛って隠していた。逆に言うと、それ以外は何も着ていない。
「うわ、すごくキモいのが来たのじゃ!」
インターニュが思いっきり嫌悪感丸出しの反応をした。
「あの足、かじるとおいしそうです」
一方でウノーシスが猟奇的なことを言った。酒のつまみ的な発想なのか。
「おいおい、いきなりごあいさつじゃねえか。しかし、アタシ以外にも神っているんだな」
とくに異形の神はこちらに敵意を向けてはきていない。神同士の争いとなると、厄介なことになるので、その点は助かった。
けど、この言い方からすると、国のことを全然知らないのか? こっちは守護神だぞ。
「私たち、この獣人王国の神です。あなたはいったい、どういう神なの?」
「アタシの名前はカルティア」
そういえば、幾何学模様の陣を描いていた男もそんな名前を口にしていたな。
「なるほど。私は獣人王国の守護神ファルティーラ。出身地は別の大陸なんだけど、ひょんなことから、こっちの獣人王国の守護神になったの。あなたはいったいどこの神様なの?」
「どこのって言われたら、こことしか言いようがねえよな」
カルティアはぽりぽりと頭をかいた。
触手で。
普通は手でかくものだけど、触手があるとそっちを使うのが自然なんだろうか。触手を盛ったことがないからわからない。
「いや、ここで住人に信仰されてるのはわかったけど、主にどの土地で信仰されてるの?」
こんな神の信仰があるという話は全然把握できていない。もし、獣人王国の一部ででも信じられているなら、教団の実態などをリオーネに調べてもらわないと。
「だからさ、ここでしか信仰されてないんだって」
「ということは、この森固有の神様なの?」
狭い土地ごとに神様がいてもおかしくはない。というか、いきなり国家規模の神になるような神は少数派で、たいていどこかの地域の土着神なのが出世することのほうが多いだろう。
「森は関係ねえよ。ここに森があるってだけのことだ。それに森って言うのは範囲が広すぎるしよ」
いまいち話がかみ合わないな。この森、決して広いとは言えないぞ。少し木が生えてるだけの場所ってレベルだ。
「ファルティーラさん、わたしはすべてわかりました。この方は海の生物みたいな触手が生えていますし、きっと海辺で信仰されていた神なんですよ」
ウノーシスが話に割って入ってきた。
「きっと、あの男の人は元船乗りか何かで、それでかつて信仰していた神を素朴に守っている、そんなところでしょう。この方も自分が落ちぶれたことをあまり言いたくないので、言葉を濁している、以上、わたしの推理です」
ウノーシスはドヤ顔をしている。まあ、触手だけ見ると、そういうふうにとらえることもできるけど。
「何言ってんだ、オメー。海なんて行ったことも見たこともねえぞ」
ウノーシスの推理、あっさりはずれた。
たしかに、この神は何も誤魔化そうとしてる感じはない。
「触手が生えてるのはアタシを信仰してるあの男の趣味みたいなもんだろ。きっかけはよくわかんねえけど、あの男がカルティアっていう神がいて、その神こそが自分を救うべき存在だと勝手に信じだしたからアタシが生まれたんだよ」
やっと、話がかみ合わない意味がわかった。
「あなた、もしかして、あの男だけに信じられてるの?」
「だから、そう言ってるじゃねえか。あの男が二か月ほど前に酒に酔っ払ってる時に、なんでも謎の啓示を受けたらしいんだよ。それがアタシが与えた啓示なんだとよ。もちろん、そんな啓示出してねえぞ。あいつが信仰するまでアタシは存在してなかったんだから」
なんと、特定の一人だけが信じているとんでもなく個人的な信仰の神なのだ。
「そんなあほな話があるか! 神というのは誰かが、ちょっとこんな神様いるかなーと思ったぐらいでは生まれぬぞ! でないと、八百万や八千万の神であふれてしまうではないか!」
にわかに信じがたい話なので、インターニュが尻尾をぶんぶん振って、反論した。
「あんたらの常識なんて知らねえよ。けど、アタシの見てる限り、あの男、アタシに捧げる祈りの言葉から、陣の描き方からみっちり決めて、それなりに真面目に信じてるみたいだぜ。肉類も一切食べないようにしてるみたいだけど、それもアタシへの信仰を守るためだとかいう話だ」
うねうね触手を動かしながら(あるいは勝手に動いてるだけなのかもしれないが)カルティアが言った。
「むむむ……まさか一人だけに信仰されている神がこんなふうに存在しておるじゃと……。なんという奇跡なのじゃ……」
インターニュはまだ理解が追いついてないという顔をしていたが、納得するしかないみたいだ。
「それで神って何をすればいいんだよ? あんたら、神なんだろ。教えてくれよ」
カルティアがそもそも論的なことを言ってきた。
まさに新人の中の新人なんだよな、この子。
「わかった」
私もふうっとため息をつく。
「じゃあ、少し場所を移して、ゆっくり話をしようか。私もあなたのことで聞きたいこと、まだあるしさ」
「移すって言っても――」
カルティアはちょっと森のほうに入って、すぐのところで止まった。
「アタシ、これぐらいしか動けねえぞ」
そうか……。信仰が狭すぎて、自由に移動ができないんだ……。
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