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50 謎の神を探しに

「どうも、わらわたちが感知してない神がこの国におるようじゃぞ」

 インターニュがなにやら無視できないようなことを言った。


「どういうこと? 私、そんなの全然知らないんだけど……」

「だから、感知してない神と言うたではないか。はっきりわかってはおらんのじゃ。なんかのう、すごい微弱な力なのじゃ。それでも何かがおるような気配を南部の小さな集落……いや、森で感じたことがある」


 なんか、うさんくさい情報だな。

 たしかに神がいればその存在を神は気づけるけども。

「それ、何かの間違いじゃないの?」

「おぬし、わらわを疑っておるのか! ――と言いたいところじゃが、本当に間違いなのかもしれぬ。わらわも半信半疑なところはある。ちょうど、ウノーシスの事案でいろいろ移動している時に偶然気づいたのじゃが」


「邪教も最初は数人のコミュニティから広まったりするものです。早めに確認しておくべきではないでしょうか」

 セルロトが邪教を語ると説得力が三割アップする。


「そうだね。別に時間はたっぷりあるわけだし、今のうちに予防しておいたほうがいいね」

「ボクも手伝います……」

「わたしも恩義がありますから……」

 どうやら全員で見に行くことになりそうだ。



 私たちはインターニュの案内に従って、神の存在を感知したという土地に向かった。

 獣人王国南部の小さな森だった。

「とくに何もないけど」

 細い木がぽつぽつ生えてるあまり緑の濃くない森だ。人はほぼ住んでないらしく集落的なものも見当たらない。

「信仰する人もいないんじゃ神もいないのではないでしょうか……? サトゥロスもこんな南の森には住んでいないと思いますし……」

 オルテンシア君もこれはないぞと思い始めているらしい。


「あー、もう! そんな否定ばかりするでない! こういうのはなかったらなかったでよいことなのじゃから……その……わらわのせいみたいな空気にはしないでくれ……」

「別にわたしは責めてないです」

 ウノーシスが言った。ウノーシスは慎重型の性格だ。

「わたくしも責めてないですよ。そそっかしいなと思っただけです」

 セルロトは悪意あるな……。


「どっちにしてももっと細かく調べないと何とも言えないよ。微弱な力だとしたら、はっきりお祈りでもされた時にしか認識できないと思うし」

「うむ……もっと先に行くかの……」

 インターニュを先頭に私たちは森をくまなく探査することにした。


 そして、森を進んでいくと、ある一軒の小屋を見つけた。

 木を切って作った家屋だ。屋根は草を葺いただけで、強風が吹いたら飛ばされそうである。


「人家とおぼしきものはこれしかないね」

「林業で生計を立ててるんでしょうかね。少なくとも、わたくしを信じている商人が営む宿などではないです」

 セルロトもわからないとなると、商業目的の人間ではないのだろう。純粋に森に住み着いてるのか。街道とも大きく離れているし、こんなところに住むメリットがほとんど感じられないが。


「おかしいのう。何かにおうのじゃ」

 インターニュが不審そうな顔になっているが、心なしかうれしそうだ。多分だけど、自分の言い出したことがはずれじゃない可能性が出てきたからだろう。

「におうって何が?」

「獣人王国の戸籍はだいたい確かめたことがあるが、こんなところに人間が住んでおるという統計はなかったと思うぞ。つまり、戸籍から逃れた存在ということじゃ」


「税金を払ってないってことですか? それはあんまりよくないです……」

「ウノーシスよ。その懸念はちょっと的をはずれておるぞ」

 たしかに税金は払ってほしいけど、一人しか住んでなかったら、納税ってどうなるんだろう。


「ここにおるということは、戸籍でチェックされるとよくない理由があるのではないか? たとえば、人を殺して逃げてきたとかの」

 オルテンシア君が青い顔をしていた。オルテンシア君はちょっとばかり純真すぎるかもしれない。


「インターニュの可能性はありえるね。お尋ね者が逃亡というのは割と聞く話だし。よし、ちょっと観察してみよう」

 夕方頃になって、住人らしい男が帰ってきた。中肉中背の猫人族の中年男だ。とくにケガの痕だとか見た目で変わっているところはない。食物らしい木の実を抱えている。ここで生活をしていると考えて間違いなさそうだ。服はあまり替えがないのか、かなり汚れている。暮らしぶりが豊かということはないようだな。


「あまり面白みのない人ですね。人相だけでももっと悪人面していたら面白かったのに」

「セルロトは楽しさ以外の要素を見つけて」


 その男は木の実を煮炊きして、食べていた。食生活にも変な点は見られない。室内にもとくに変わったものはない。

「偏屈な人の一人暮らしなんですかね? こんなところで一人ぽつんと生きてる人の気持ちはよくわかりません」

 他国出身のウノーシスがそう言ったが、獣人王国もこういう人は想定してない。

 だが、食事が終わったところで、おもむろに男が動いた。


 男が庭に出ると、何か幾何学模様的な陣を描き出したのだ。

「なんだ、これ? 誰か見覚えある?」

 みんな、思い当たる節がないらしく、ぽかんとしていたり、首を横に振っていたりしている。


 本当に一体何なんだ?


 そして陣の手前に立って、男が何やら唱えだした。

「ああ、この森に住まう神カルティアよ、明日もこの地に安寧を与えたまえ、与えたまえ! ファルティーラに屈することなく、その力を見せつけよ!」


 あれ、なんか、私、ディスられてる!?


「カルティアこそは、我ら獣人を導く真なる光。真なる炎。ほかの愚かなる者たちが気づかぬとしても、私はその名を忘れないだろう!」


 カルティア? 何者なんだ?


 男は詠唱が終わると、すぐに幾何学の陣を足で消していった。それを残して誰かに見られてはいけないということなのだろう。


 まったく聞いたことのない神の名に、まったく聞いたことのない祈りの言葉。

 明らかに私たちは異様なものを見ていた。


「あれ、あんたら、どちらさんだ?」

 私たちに声をかける者がいた。


 ということは似たような立場の存在だ。


先週、更新を開始した「織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました」週間1位をキープ中です! こちらもよろしければご覧ください! 

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