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48 全知全能ではないけど

「それなりに心配したが、いいように転んだようじゃのう」

 そう言うと、インターニュはおずおずと私の手を引っ張った。


「ちょっと、仮眠をしたいのじゃ……」

「うん、だったら寝ればいいじゃん」

「添い寝してくれたほうがよく寝れる……のじゃ……。誰かがそばにいると安心するというか……」


 後ろでセルロトがくくくっと声を殺して笑っていた。


「インタさん、きっとすごく寂しかったんだと思うので、わがままに付き合ってあげてください。飼い主いないんで、大丈夫かな大丈夫かなって思ってたんですよ」

「なんじゃ! 飼い主って! それではわらわはペットではないか!」

 インターニュが尻尾を逆立てた。結構ストレートにひどいこと言われたからな……。

「そんなに間違ってないじゃないですか。じゃあ、添い寝してくれって頼むのやめますか?」

「…………」


 また、くいくいっとインターニュが私を引っ張る。

「はいはい、わかったよ。添い寝でいいんだね?」

「う、うむ……。ま、まあ……すぐ眠れると思うからの……」

「尻尾、すごく機嫌いい時の振れ方してますよ」

「うっさいわ! これは生理現象なのじゃ!」

 背後からまた攻撃を受けて、インターニュが吠えた。


 インターニュの神殿はきれいに整えられていた。インターニュが几帳面な性格というのもあるんだろう。

 私はインターニュの体にタオルケットをかけて、その隣で横になった。


「インターニュ、留守番すごくしっかりやってくれてたみたいだね。インターニュがいるから、しっかり戦争のほうを守護神として見届けられたよ」

「あ、当たり前じゃ……。わらわだってこの国の神じゃからな……。むしろ、セルロトは信用しきれんところがあるし、オルテンシアはまだまだ頼りないところがあるし……ほかに問題があるのじゃ……」

 インターニュはぎゅっと体を丸めた。


「この獣人王国、もっともっと発展させてゆくからの……。ロクオンの民も加わって人口も増えたし、影響力を持つ土地の範囲も大幅に広がった。いずれは大陸一の大国家を目指すのじゃ」

「それはまだまだ先になりそうだけど、頑張ろうね」

「わらわとおぬしがおれば……きっとできるのじゃ……」

 インターニュは少し仮眠に入った。しっかり眠っているのをを見届けて、私は次の目的地へ向かう。


 リオーネが働いているところへ。


 ちょうど、リオーネは神殿で、私の神像の前で勝利を祈っていた。


「どうか……獣人王国の栄光がこれからも続きますように……。守護神様の偉大なる力で、国が幸せに満ち満ちますように!」


「うん、それなり上手くやれそうだよ」


 私はぽんとリオーネの背中に後ろから手を置いた。


「あっ! 旦那様!」

 もう、すっかり素で旦那様って言えるようになったな。これって成長というんだろうか。


「戦争、終わったんですよね? まだ確定情報とは言えないものだったので、継続して祈っていました」

「無事に片付いたよ。守護神から我々が守ったってお告げがあったって言っておいて。セルロトの策を用いたところ、大勝利だよ」

「じゃあ、獣人王国は滅ばずにこれからも続いていくんですね」


 そっか。リオーネは滅ぶかどうかってレベルで不安だったんだな。

 そりゃ、これまで大きな戦争をこの国、経験してないし、しかも自分の国が滅ぼされたの知ってるもんな。

「続くどころか、パワーアップしてるよ。いずれ、この首都に来るウサ耳の人も増えるだろうし、ますます人口も増えるから頑張ってね」

「はい! わたしなりにもっともっと努力して、みんなが笑顔になれるような国にします!」


 よく言えました。リオーネはほんとに素直でいい子だ。

 けど、だからこそ、リオーネが少し疲れているように見えた。


「リオーネ、今日は投げられる政務は大巫女と王国議会に投げて、ちょっと休みなさい」

「でも、まだやらないといけないことが、けっこう……」

「旦那が戦地から戻ってきたんだから優先しなさい。あなたは私の巫女でしょ?」


 反則かもしれないけど、これぐらい言わないとリオーネは休めないからな。


「わ、わかりました……」

 リオーネは戦勝の報告をしたあと、仕事をほかの人に分散させて、私と一緒にお風呂に入った。


「禊の時にも入ってたんですけど、戦争が終わったと知ってから入るお風呂はまた格別ですね」

「そうでしょ。たまにはリラックスしないとダメだからね」


 リオーネが頭を私のほうにあずけてくる。

「国王の仕事、私、上手くやれてますか?」

「それはね、きっと未来になってからでないとわからないよ。私ですらわからないことばかりだし」

「旦那様の立場でもですか」

「でなきゃ、国が滅ぶことなんてないでしょう。あらゆる国が永久に繁栄することになるもん」


 神といえども全知全能ではない。ただ、人間よりはすぐれているというだけだ。

 だからこそ、私も不安になるし、ちょっと癒されたいと思う時もある。

 でも、リオーネを見ていて、思う。

 だからこそ、面白いのかもしれないと。


 答えはわからないけど、懸命にいろんなものに取り組む。だから、人も神も楽しんだり喜んだりできるのだ。

 すべての結果を知っていたら、感情なんてものは生まれないだろう。


 私はリオーネをさらに抱き寄せる。

「今日は甘えなさい。これは私の命令」

「はい、旦那様……」


 これからも獣人王国を発展させていくぞ。あらためて、そう決意した。だって、国づくりには終わりなどないのだから。もし、終わるとしたら、それはその国が滅んだ時だけなのだから。


 まだまだリオーネと一緒に、ほかの神たちと一緒にこの国を守っていくんだ。大きくしていくんだ。


 だからこそ、今はゆっくり休んでね。


 リオーネはお風呂の中で眠ってしまった。

 のぼせちゃっても困るしな。

 私はリオーネをゆっくりと抱えると、脱衣場に連れていく。


 風邪をひかないように、体と髪をかわかしたら、そのまま寝かしつけてあげよう。

ウノーシス編はこれにて終了です。次回から新展開になります!

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