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邪神認定されたので、獣人王国の守護神に転職しました  作者: 森田季節
流れてきたウサ耳神

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41 政治的な方面での決着

 サティーエ砂漠には続々と難民が移ってきた。

 とくにラヴィアンタ家当主のカルミヤ・ラヴィアンタがやってきたことで、サティーエは北ロクオンとでもいうべき立場の土地になった。


 とはいえ、急増する人口を養えるだけの食糧を沙漠近辺で賄うことは不可能だ。そういった食糧はできるだけ北部の農業が盛んなところから運んでくる。

 ひとまず、ニューカトラからの街道は仮ではあるできてはいるので、ここを経由して物資を運ぶことにした。ラヴィアンタ家の当主も来たので、獣人王国側でも動きやすくなってきたと思う。


 なお、物資を送るという前提もあって、オルテンシア君に首都ニューカトラ近辺の食糧生産力を向上させてもらっていた。余った分はすべて沙漠に送り込む。


 一方で、なし崩し的とはいえ、ロクオンのトップにはちゃんと立場の確認をしてもらう必要があった。


 当主のカルミヤ・ラヴィアンタは、お供を連れて、街道を通って、ニューカトラの王、リオーネのところに謁見した。

 カルミヤという人は四十歳ほどのウサ耳の男だ。亡命してきたとはいえ、さすがに貴族だけあって、堂々としている。

 むしろ、リオーネのほうが自分のほうが偉い側とはいえ、はじめて他国から来た大物と出会うので、ちょっと緊張していた。


「ラフィエット王国でロクオンの地を治めていたカルミヤ・ラヴィアンタと申します」

 カルミヤが恭しく頭を下げた。

 これに対して、リオーネも王座のある高いところから答える。

「話はすでに伺っております。国を追われてしまったということですね。あなた方の罪状は、刑法的な罪とは違うことは明らかです。保護を加えてもかまわないと、我が国では判断いたしました。サティーエの土地で暮らすことを認めましょう」


「ありがとうございます。このカルミヤ・ラヴィアンタ、これからは移住した兎人族とともに、王に服属いたし、このご恩に報いたいと思います」

 そう、この言葉が聞きたかった。

 こうはっきりと言ってくれないと、ロクオンの旧支配者が居座って、独立国みたいな動きを示されると、獣人王国もこれを滅ぼさざるをえなくなる。それだと誰も幸せにはなれない。


 あくまでもリオーネの下でサティーエを治めるという形を守ってもらわないと、こちらも援助ができない。


「カルミヤ・ラヴィアンタ、あなたを都市サティーエの総督に任命します。ただし、こちらからも顧問官を二名送りますので、その者たちと相談して政治を行うようにいたしなさい」

 その顧問官らしいキツネ耳とイヌ耳の男が頭を下げた。

 支配は認めるが、すべて自由にやらせるということはせずに、お目付け役は送っておくということだ。

 でないと、今はよくても、もしサティーエが発展した時にカルミヤ・ラヴィアンタが兵を興すだなんてことも絶対にないとは言えない。


 このあたりもリオーネたちがどうすれば上手くロクオンの遺民とやっていけるか考えた末に出した結論だ。


「すべて受け入れます。ロクオンの民が暮らしていけるならば、私達ラヴィアンタ家の地位は何もいりませんので」

 本当にそう思ってるかどうかはさておいて、カルミヤはそう言った。

「ロクオンからの民は今後、どんどん増えていくでしょう。それを律するにはロクオンの支配者であったあなたが適任です。民のために今後も働きなさい」


 リオーネはずっと王らしい振る舞いを見せつけて、私は安心した。インターニュも「あの娘、本当に良い王になったのう」と褒めていた。


 これで政治的な部分はひとまず片付いた。

 獣人王国は国を追われたあわれな兎人族の民に土地を与え、物資が足りないならばこれを送る。あくまでもあわれな者を助けているだけというわけだ。ラフィエット王国に関しては一切触れない。


「あの、最後に一点、確認させていただきたいことがあるのですが……」

 カルミヤが不安そうに言った。

「我らが神、ウノーシス様を信仰することは許していただけるでしょうか?」

 信仰自体が一切禁止なのに移住は許可するということは本来おかしいのだが、この場合、実際に聞いているのは、邪教扱いされた要素のことだ。


 カルミヤとしては風紀紊乱を理由に卑猥な部分を禁じられてもしょうがないとは思っているだろうが、内心としてはできるだけ許してほしいんだろうな。自分の口から民に宗教統制を行うと反発を招きやすいから。


「そのことですね……」

 この話題は、リオーネも顔を赤らめた。それだけじゃなく、ほかの大巫女も赤面していた。ウノーシスの祭りの内容が内容だからな……。


「あなたたちの信仰が獣人王国の存立にかかわらない限りにおいて――つまり、一部の会員たちが集まって徒党を組んで国家転覆を狙うとかいったことがないのであれば、認めましょう。ただ、町全体で風紀が極端に乱れるというようなことが見られた場合は手を加えさせていただきます」

「わかりました。そこは神官などに厳しく言っておきます……」


 これには確認のためにやってきていたウノーシスも、ほっと胸をなでおろしていた。

「どうにか、やっていけそうです……」

「そうだね。なんとかなって、よかったね」


 ここから先は総力戦だ。

 できうる限り、サーティエがちゃんとした都市に発展するようにつとめる。

 これを怠ると、獣人王国にも重大な問題が起こる。もしもサーティエで大きな飢えが発生したりすれば、流民が北上してくる。略奪などが多発する危険もはらむわけで、それはかなり危ない。


「セルロト、サーティエだけでロクオンからの移住者をすべて受け止めきれるとも思えないし、ほかにもいい入植地があったら教えて」

 この機会に南部にいくつも新しい都市を作るぐらいの気持ちでいる必要がある。

「わかりました。ウノーシスさんにお伝えして、参考にしていただきましょう」


 それと、獣人王国北部でも、少しずつ受け入れることもしていかないといけないな。

「オルテンシア君、農地で人が足りないところがあったら、ロクオン遺民を移住させてもいいかな?」

「わかりました。新しく農地も増やしているところなんで、人手不足のところがあればご連絡いたします」


 とにかく、トラブルを最低限にできるよう努力しよう。

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