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40 サティーエ建設

サイトが落ちていたようで、更新が遅れました。すいません……。FF

 ウノーシスはそれから先も、沙漠の移住者とロクオンに残る民衆の両方に神託を下していった。

 でも、それは「神である我に従え」というような、強権的なものではなかった。


<聞こえますか……? あの、皆さんの頭に直接語りかけています……。わたしと一緒にサティーエ沙漠を耕しましょう。この沙漠を新しいロクオンにしましょう。みんなの力を合わせれば、どうにかなるはずです。獣人王国の方々も助けてくれますから。がんばれ、がんばれです>


 神々しさはほとんどない、託宣と気づくかも怪しいような庶民的な内容だったが、じわじわとサティーエ沙漠を目指す人の数は増えていった。


 もちろん、沙漠のほうでの農業が進まないとそれもままならない。それでも、ウノーシスが力を出したこともあって、沙漠でのウリは順調に育って、収穫の時期を迎えることになった。

 ウサ耳の人たちはウノーシスの奇跡だと言って喜んだが、まさにウノーシスが素朴な信者たちを助けるために神の力を使ったのだ。でないと、そんなにすぐに収穫できるところまで育つわけがない。

 さらにウリを育てる一方で沙漠の縁にあたるところでもほかの作物の栽培がはじめられた。


 これは私やオルテンシア君がウノーシスに一部の知識を与えた。沙漠ほど完膚なきまでの砂地でなければ、育てられる野菜の種類はかなり広がる。

「ありがとうございます。ためになります。植物って、そんなに丈夫なんですね」

「そうですよ。ボクが住んでいたサトゥロスの集落も、気候条件はそんなにここと変わりません。それでも、立派な森があるわけですから、このあたりにも畑を作るぐらいならできるはずです」

「はい! ありがとうございます!」


 その知識を聞いたウノーシスが今度は託宣を民に与えて、知識を伝達させていく。神同士の連携があるからこそできる裏技みたいなものだ。これはウノーシスが一人でどれだけ悩んでも、どうすることもできなかっただろう。


 そこにだんだんとロクオンからやってきた人も増えて、集落みたいなものも大きくなってきた。

 しかし、人が生活していく基盤は沙漠だった場所にはほとんどない。住居はテントを張ったりして急場をしのぐとしても、塩などの生活必需品は入手していかないといけない。

 これをどうしたかというと――


 キツネ耳の商人たちがサティーエ沙漠のほうに商品を売りにやってきた。

 値段は商圏から離れた場所ということで多少割高だったが、それでも集落を作っていくためには背に腹は替えられない。お金で問題が解決できるなら安いものだ。


「わたくしが商人に、サティーエ沙漠はいいお得意様になると夢で言っておきました」

 これはセルロトが対応してくれていたらしい。

「あなたにも結局、お世話になっているみたいだね」

「お世話というようなことではないですけどね。わたくしは商人に儲かると言っただけです。儲けがない場所には彼らはわたくしが言ってもやってきません」


「こんな沙漠まで買いに来てくれるなら、こちらもいいようにはからいますから」

 ウノーシスも商人が来ることは当然歓迎するつもりらしい。


 沙漠近くに住む人が増えてくれば、獣人王国のほうでも街道を作るという話が本格化してくる。ひとまず、一番距離が近い村からサティーエ沙漠のほうへ続く道をつないでいくという計画が立った。

 街道といっても、石畳にするわけでもなんでもないが、道とわかるようになれば、迷ったりする恐れもなくなる。


 こうしてじわじわとサーティエの規模が大きくなってきた。


 さらにロクオン伯爵領のほうからも物資が運ばれてくるようになった。家も組み立て式のものをばらして、サティーエで組み立てるという方式をとった。

 テントが並んでいるだけのサティーエ沙漠付近に、家がちょっとずつだが、建ちはじめる。


 移住から半年後には、サティーエはかなり整備が進んできた。

 この間、ロクオンもどうにか本国と交渉をして、事態の打開をまだ模索していた。

 ウノーシス信仰が許されれば御の字だし、それは難しいとしても「邪教的なふるまいをしている過激派の村を追い出している」などと調子のいいことを言って、強制排除みたいなことが行われないように、できるだけ措置が遅くなるように図っている。


 何もないところに町を作るわけだから、スロースタートではあるが、このままいけばサティーエという都市がそのうち成立するだろう。


 そして、ついにロクオンのラヴィアンタ家が正式な布告を国内に行った。

 ウノーシスを今後も信仰するという心づもりのある者は北のサティーエに行け。移住許可は獣人王国より得ている。このままロクオンを新しい都市にするよう尽力せよ。

 その布告によって、移住者の数は格段に増加した。住む場所が足りるかは怪しいところだが、助け合えばどうにかなる程度の形はサティーエにできつつある。


 またラヴィアンタ家の一族が派遣されて、暫定的な統治もはじめた。

 いずれ、ラヴィアンタ家の当主が正式にやってくるまでの布石だ。


 私はサティーエが街になっていく様子をよく観察にいった。じわじわ街っぽくなっていくのは見ていても面白い。

「なんとか、半年強でいい感じに整ってきたのう」

 インターニュも直接手は下してないが、やたらとサティーエのほうに来て、様子を見守っている。石造りの建物もたまに見えているから、これはインターニュを信仰していた石工の仕事だろう。


「あと、そうだね、半年ぐらいもってくれれば、かなりいい感じになりそうなんだけど」

「半年か。それだけ我慢できるかのう。そろそろラヴィアンタ家ものらりくらりとかわすのが限界になってくる頃じゃ。立場は決して強くないからのう」


 そこにウノーシスがあわててこちらに走ってきた。

「大変です! ロクオン伯爵領の廃止と伯爵家の国外追放が正式に決まりました!」

 ついにその日がやってきたか……。

 これでウノーシス信仰を守ってくれる為政者はロクオンからいなくなることになった。

 サティーエを暫定的ながら、ウノーシス信徒の代表的都市とするしかないな。


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