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邪神認定されたので、獣人王国の守護神に転職しました  作者: 森田季節
流れてきたウサ耳神

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37 移住場所の検討

 リオーネとその下で仕える大巫女たち、さらに世俗側の王国議会の面々も知恵をしぼって、事態に対処しようとしていた。


 オルテンシア君は「このまま何もせずにいて、大丈夫なんでしょうか……?」と不安そうだったが、ここはもう少しこの国の民を信じてみることにしたい。

 難しい問題だからって答え自体を出さずにおくなんてことは許されないのだし。


 ただ、ウノーシスに関しては申し訳ないので、ある程度のフォローは入れておくことにした。

 王国南部の土地を何箇所か案内したのだ。

 といっても、観光目的ではない。南部の土地を見てもらって、その土地が移住してやっていけそうな風土か確認してもらうのだ。


 私のいた国の話ではないが、遠く離れた島に移住したら、その土地の風土病に免疫がなくて、ばたばた人が死んでしまったというようなケースもある。その逆で移住者が持ちこんだ病気で現地人が大量に死んだということもある。

 その他、気候が違いすぎて生きていけないということもあるかもしれないし、事前チェックができるならしておいたほうがいい。


「まず、南部の中心的な都市です。といっても人口は千五百人程度ですが。南部は王国の人口が少ないですので」

 現地の解説はセルロトがやることになった。商業神だからなのか、町のことにはセルロトはやけに詳しい。

「この町は水の便が悪いのがネックですね。移住者の方は水を大切に扱うことを徹底してください。あと、塩を持ってくると比較的喜ばれるでしょう」


「なるほど……わかりました」

 ウノーシスもうかない顔だが、それなりに熱心に聞いていた。

「本音を言えば、ちょっとずついろんなところに移住するのではなく、一つの町を作ってどかっと移住するというのがありがたいですね。ロクオンの民を分散させるのは忍びないです……。無論、それが認められればの話ですが……」

「わたくしとしても分割するよりは独自の都市を建設するべきだとは思っています。ひとまず南部の都市の雰囲気を知ってもらいたいんですよ。別の町を作るとしても風土は近いでしょうから」


「そうですね……。乾燥が強いのが気になりますね。作物も近くで実らないとなると、ここだとたくさんの人を賄えるような大きな都市は作りづらそうです……」

 そこなんだよなあ……。王国南部はとくに土地が痩せていて、畑を作るにしても事前にそれなりに耕作に時間をかけないといけない。

 徐々の入植ならいいが、いきなり一万人とか二万人とかの規模で来られると、足りないものが多すぎる。


「まずは南部の土地をもっと見ていこう。それから考えていけばいいよ」

「はい……。お願いします……」


 その後も、南部の都市とは言えないような村をいくつか見てまわった。内容は割と似ていて、

・土地が肥沃ではない。

・水も豊富とは言えない。

・なのでまかなえる人口も少なめ。

 というところがほぼどこにもあてはまる。


 これは思ったより、問題があるんじゃなかろうか。

 少なくとも、ここに移住すればひとまず大丈夫ですというような土地はなかった。

「ここに大量に人が来ると、多くの餓死者が出ますね……」

 悲観的なウノーシスはそういうことを言ったりした。そして、そこそこ事実になる可能性が高い。

「う~ん……首都ニューカトラの近くに難民を受け入れる?」

「ダメじゃ。そんなん、ニューカトラの民との軋轢を生むに決まっておるじゃろうが。最悪、難民との間で戦争になるぞ」

 インターニュが厳しい顔で言った。その危惧は間違ってない。


「けど、南部を見た限りだと、どこに住んでも半分ぐらいは餓死しそうだよね……。そりゃ、受け入れ拒否よりはマシだけど、あんまり感謝とかされなさそう……」

 ウノーシスも半分生きればそれでいいですとは言いづらいだろ。そんな植物の間引き栽培みたいな発想ではやれない。


 しょうがないので、そこから先も村すらできていない南部の土地を見て回った。

 だいたい回る前から想像はついていたが、村ができていたりするところよりひどい。村を作る気がしないほどに土地が悪いということだ。


 ううむ……。これはかなり詰んでいないだろうか……。

 何か神の奇跡みたいなものがいるかもしれない。しかし、人がいない荒野には強い信仰の力もないから、そんなたいしたことは起こせない。


「あの、逆転の発想で、いかにもひどい土地に連れていってもらえませんか?」

 ウノーシスが変なことを言ってきた。

「あのさ、いくらなんでもヤケクソみたいなこと言わないほうがいいよ。自暴自棄になっても何も解決しないよ」

「勝算がないわけではないんです」


 そう言うのでセルロトに最悪の土地に案内するように言った。


「――ここが南部でもろくでもないところです。サーティエ沙漠という小さな沙漠ですね。南部で沙漠というのは珍しいんですが」

 そこは砂が広がっているだけの荒涼とした場所だった。どうやら、今のニューカトラぐらいの面積は沙漠が広がっているという。それでも王国の北のはずれにある、どこの国でもない地域にある沙漠からすると、規模は極めて小規模だ。


 ウノーシスは砂を触って、なにやら調べていた。


 悪いけど、こんな土地を見ても、時間の無駄にしかならないだろう……。

「ここなら育ちますね」

 ウノーシスの目にちょっと生気が宿っている。

「何が……? 何が育つの?」

「沙漠みたいな土壌で育つロクオンウリ、大ロクオンウリという品種があるんです。水分が多く、飲み物代わりにしている民もいます。もちろん、食用にもなります。漬けて、発酵食品にすれば、保存食にもなります。その他、ウリ系の植物はロクオンには豊富です」

「それを作りまくって、どうにかっするって言うの!?」

 たしかに、土地が悪くても育つ野菜は多い。ニューカトラもそうやってどうにかした。ならば、完璧な沙漠に適した野菜だってないわけじゃないはずなのだ。あまり栄養価の高いものがとれそうな気はしないが。


「わたしの国にて、神託を発して、一部の先遣隊を送ってウリ畑を作らせます。あとは……神の奇跡が合わされば、あるいは……」


 問題は多い。

 それでもチャレンジする価値はある。

 どうせ、誰もが見落としている完璧な答えなんてのはない。


「わかった。私は全面的に協力する!」


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