表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/63

34 ウサ耳神ウノーシス

 私達は全員で揃って、神殿の前に行った。

 すると、軒下に神らしき子が一人でぽつんとたたずんでいた。

 神は相手が普通の人間か神か見ればすぐにわかる。

 ウサギの耳が生えているが、ぺたんとそれが垂れている。ということは、かなりの確率でロクオン伯爵領で信仰されている神だな。


「あふぅ……これからどうしましょうか……」

 どうやら遠くを見て、かなり気落ちしている様子だ。立場上、元気ハツラツなんてことはありえないだろうけど。


「あの、どちら様でしょうか……?」

 背後から声をかけてみた。ここにいるということは、おそらく私達と会うためなんだろうし。


「わわっ!」

 びっくりしたのか、その時だけ耳がぴょんと上に突き立った。それから、また、ぺたんと耳が寝る。

「も、もしかして、この国の神様ですか……?」

「そうだよ。ニューカトラ獣人王国の守護神、ファルティーラだけど」

 それに続いて、残り三人もあいさつをした。


「わたしはラフィエット王国北部で信仰されているウノーシスという神です……。どうか、お見知りおきを……」

「だと思ったよ。なんだ大変なようだし、悩み事があるなら話を聞くよ。中に入って」

「それでは、お言葉に甘えます……」

 やけに低いテンションでウノーシスは神殿に入ってきた。


 インターニュが「辛気臭い奴じゃのう……。あれでは人間に祝福を与えることもできなそうじゃ」とぼそぼそ言った。

「ちょっと! そういうこと言わないの!」

「じゃから、小声でそうっとしゃべっておるじゃろうが」


「辛気臭くて申し訳ないです……」

 げっ! 聞こえてる!

「わたし、耳はすごくいいんです……。ですが、本当のことを言われただけですから、大丈夫です……。暗くてご迷惑おかけします……」

 これはまた問題児が来ちゃったかもしれないな……。


 ウノーシスはぼそぼそとした声で自分の窮状を訴え出した。

「ラフィエット王国では、現在私の信仰が邪教扱いされておりまして……その影響がロクオン伯爵領にも出始めているのです……。今すぐ、その信者が火刑に処されるとか、そこまでのことはないんですけど……」

 耳はいいらしいけど、しゃべる声はぼそぼそしているので、かなり近づかないと上手く聞こえない。


「それでも、このままいくと伯爵であるラヴィアンタ家の国外追放、さらに信仰する民衆の処罰などということにもつながりかねず、どうしようかと……。悩んだ結果、使者に引っ付いて、このニューカトラという街まで来たんです」

 神は自分が信仰されてないところでは力を発揮することができない。ウノーシスなんて神はこの国では信じられていないので、使者とともにやってきたわけだ。


「え~、こほん」

 何か言いたいことがあるらしく、インターニュが咳払いした。

「困っているのはだいたいわかったが、お前がまさにロクオンというところの神なのじゃろう? じゃったら、王国の連中に話しかけて、邪教扱いする者は呪うぞぐらいのことを言ってやったらどうじゃ?」

 インターニュはかなり攻撃的な性格なので、やられたらやり返せ的なことを提案する。大きく間違ってはいない。


「それが……わたしの信仰圏ってロクオン近辺に固定されていまして……ほかの地域ではほぼ信者がいないんです……。それで夢で訴えるということもできず……」

「ラフィエット王国は広大なうえにいくつもの国家が集まったようなところですからね。信仰もバラバラなのでやむをえないでしょう」

 セルロトが補足を加えた。


「じゃったら……自分を信仰している場所で訴えかけるのじゃな。そうすれば民も一つにまとまることができるかもしれぬ。民もどうしたらいいかと悩んでおるのじゃ。そこで答えを出すことも神の仕事じゃ!」

「はい、一部の神官には夢で訴えました……。どうしよう、このままでは大変です、助けてください――と」


 インターニュが後ろにひっくり返った。

「お前はアホか! 大変なことぐらい民もわかっておるわ! その民に神が助けを求めても、民だって困ってしまうわ! せめて、もうちょっと具体的に希望を言うてやれ!」

「だ、だって……どうしたらいいのかわたしにもわからなくて……」

「インターニュ、もっと優しく接してあげて! この子、泣いちゃうよ!」

「わかった……。わらわも気をつける……」


 インターニュなりに気をつかおうと努力はしているらしい。


「では、お前の教義や祭祀内容を具体的にわらわたちに聞かせよ」

「教義や祭祀、ですか?」

「そうじゃ。そもそも、邪教扱いされたということは、何か理由があるはずなのじゃ。それがわかれば場合によっては祭祀の変更だとかいったことで妥協案を出して、相手を納得させられるやもしれぬ」


 それもそうだ。まずはヒアリングを徹底して、対策を考えよう。


「邪教扱いされた理由は、実はとてもはっきりとしているんです……」

 なぜか顔を赤くするウノーシス。

「なんじゃ、それは。言うてみよ」

「年に三回ほど、わたしのお祭りでロクオンは盛り上がるんです……。多くの出店だけでなく、ゴンドラまで出て町を練り歩いたりします」

「うむ、よいことじゃ。よいことじゃ」

「ですが、それは表向きのことで……これまでもいろんなところで隠れてそうっと本祭をやっていたんですね」


「本祭? それはどういうものじゃ?」

「い、言わないといけませんか……?」

「それを言わんと邪教扱いされてる理由もわからんじゃろうが」

 ウノーシスの耳がこれまで以上に垂れてしまった。もう、こういう種類のウサギだという感じになっている。


「男女が神殿の中で……ぐるぐる回りながら……一枚ずつ服を脱いで……それから、抱き合っていくという……」

「破廉恥じゃー!」

 インターニュの顔が赤くなった。

 私もこれは平常心ではいられなかった……。かなり過激な内容だ……。


「ボクはよくわかりません……」

 オルテンシア君、わざわざ言わないほうがいいよ。


 セルロトだけが「あ~、そういうタイプですね。なるほど、なるほど。人を生贄にするタイプじゃなくてよかったです」と落ち着いていた。

前々から気づかれてたと思いますが、新キャラ出せました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ