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邪神認定されたので、獣人王国の守護神に転職しました  作者: 森田季節
邪神認定の神、王国の守護神になる。
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プロローグ

新連載開始しました! よろしくお願いします!

 私の名前はファルティーラという。

 職業は女神。職業というには不適切かもしれないが、長年、ハルトミット王国という南にある国家の守護神をしていた。


 昔はきれいな湧き水が出てくるとか、金鉱を掘り当てるとか、そんな奇跡をバシバシ現出させてあげていた。国家も周辺では最も発展していた。


 しかし、国が豊かになると、王国民の信仰心ははっきりと薄らいできた。

 神は信仰心が弱まると、その奇跡を起こせる力も小さくなる。だんだんと国力は衰えてきた。


 そして、ついに違う神を信仰する隣国にハルトミット王国は滅ぼされてしまった。


 これは他人事ではない。私も邪神という扱いを受けて、神像は各地で破壊され、小さなものに関しては二束三文で骨董商に売りに出された。


 諸行無常だな……。神といっても永遠には存続できないのかもしれないな……。まだ、神としての意識は保てているが、やがてすべての人間が私を忘れた時に、私は消滅するのだろう。


 小さな神像の一部は海を渡って売りに出されたが、そこでもとくに人気も出なかったらしく、ついには現地の骨董商の移動中にぽいっと捨てられた。


 周囲はやせ衰えた、ひどい土地だった。まともな作物も育たないだろうし、きっとまともな国家もないだろう。


 嗚呼……誰か私を信仰してくれないかな……。そしたら、おおいなる祝福を約束してあげられるのに……。でも、ホコリと土で汚れてる一方だし、どうしようもないな。おかげで本当に邪神のように見えてしまっている。


 ――と、誰かが私を拾った。


 十五歳ぐらいの少女だった。特徴的なのはネコ耳だということだ。ネコ耳獣人か。私のいた大陸では獣人はほとんどいなかったからな。みすぼらしい服装をしているから、もしかするとこの土地でも迫害されているのだろうか。


 もしや、薪にでもされるのだろうか……?


 私は木像だ。燃やせば薪代わりになる。


 そんなことはないと信じたいが、その根拠はどこにもなかった。だいたい神とすら認識されないだろう。せめて、ちょっとでも私を信仰してくれれば、助けてくれと語りかけることもできるかもしれないのだが……。


 そのネコ耳少女は私を連れて、砂っぽい痩せた土地にある、小さな集落に帰った。


 住民はみんなネコ耳の獣人だった。みんな栄養状態も悪そうだし、まともに農業もできていない。狩りをしての自給自足でどうにか食いつないでいるようだ。


 これは薪にされるのは確定だな。この集落もいずれ消滅だろうけど、その前に私の意識がこの世界から消滅しそうだ。


 少女が水を汲んできた。食事の用意かな。


 しかし、意外なことが起こった。その少女は私の汚れた像を洗い出したのだ。その手つきも慣れてはいないようだったが、丁寧だった。


「リオーネ、何をしてるんだ?」

 ほかのネコ耳獣人が少女に尋ねてきた。リオーネというらしい。

「神様の像が落ちていたから、きれいにしてるんです」

 私はどきりとした。


「神様の像? どこの神様だよ?」

「どこかはわからないです。でも、造りはすごくいいし、きっとどこかの国の神様ですよ。これを私、信仰しようと思うんです。このボロボロの獣人集落を守ってくださいって」

 少女の声はどこかひたむきなものがあった。


「だって、神様の奇跡でもなければ私達は生きていけないじゃないですか」

「祈ったって無駄だ。ガルム帝国にいい土地はすべて奪われちまった。もう、俺たちはダメなのさ」

「それでも、私は祈りたいんです。少なくとも、明日はきっといいことがあるって、それで信じられる気がするんです」


 少女は私をボロ家の薄汚れた低いタンスの上に置いた。

 足下には布が敷いてあって、それが即席の祭壇であるらしかった。


 眠る前、リオーネという少女は私の前で手を組んで祈った。


「神様、神様、どうか、私達獣人の未来に光を灯してください……」


 その途端、私は自分の体に力が湧いてくるのを感じた。

 純粋な少女の祈りが私にもう一度力を与えてくれた!


 私は彼女の前に姿を現した。


 実体化できるまでに力が回復している!


「わああああっ! 神様が……本当に出てきちゃいました……」


 少女も驚いている。それもやむをえないか。


「少女リオーネよ、私の名前は女神ファルティーラ。遠い異国の神であった。しかし、もしもそなたたちが私を厚く信仰するなら、お前たちの幸いを約束しよう。お前たちの守護神となろう!」


「ほ、本当ですか……?」


「神は約束を違えることはしないのよ」

次回も割とすぐに更新します!

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