03.逃げるが勝ち
「やっぱ、コレを使うといい気がしないなー。それもそうか、人の大事な物を取って捨てるようなものだからね。だったらやるなって話だろ! っていう話だけれど、私のこの秘密は隠していたいし、変に探られても迷惑なだけだし、面倒だし、こうするしかないんだよねー。あーあ、まったく面倒臭い体質で生まれてきちゃったよな」
私は溜息をつき、止まっている世界を見る。
音などない、真空パックの中にいるような息苦しさを感じる程、この光景は私は嫌いだ。音がないだけで、こんなにも町の印象が変わるのか、と最初この時を止める能力を使った時にこの空しい息苦しさを感じた。
彼女も、そう思ったのだろうか。そういえば聞いたことなかった。今度聞いてみることにしよう。
「ま、いいや。えーとここに立ってっと」
私は玲と女の人の記憶を書き換えた時、自分が女の人に見つかったときに立っていることにした場所に立ち、自分がしているとした動きを作った。ちなみに私はただ玲のとなりに佇むと言うだけの格好だ。そして、『止めた時を動かす』能力を発動する。
それと同時に世界が動きを取り戻し、沈黙がやんだ。
「ユリ!?」
驚いているのは玲だ。血相を変えている。因みに二人も私が改竄した記憶の通りの場所と行動をしている。が、
「おまえ……逃げろって言ってるのがわからないのか!?」
玲の言葉は私の予想したものと違うことを話していた。あれ? なにか能力で不具合でもあったのかな? もしかして、深く知らないまま記憶の改竄を行ったから、玲の頭がおかしくなっちゃったとか? いやいや、それはないだろう……。……………。
そしてそのあとすぐに私は玲の頭の中を覗いた。そしてこんな言葉が私の頭の中に流れてきた。
『なんでこいつがいるんだ? あいつが能力使って俺達以外の人が
無意識にこの場所から出て行くようにしたのに。しかも敵に見つかるなんて……』
え? なにそれ、俺達? 能力? 敵? え?…………。解からねぇ。どこの世界のお話ですか? 超能力ならまだわかるけど、敵て、え……なに。やっぱり、頭何かやっちゃったのかな?
私がそう思っているととても気着心地のいいが、私的にはとても聴きたくない女の人の声が聞こえてきた。
「ねー遊ぼうよー」
その声にユリと玲は振り返る。そこにいた声の主は、私をビルにに突っ込ませた女の人だった。
女の人はとても楽しそうにニコニコという擬態語が生まれそうなほど、綺麗な笑みを浮かべながら言葉を続ける。
その手にはなにかが握られて、今にも私に向かって飛んできそうな嫌な予感が私のなかを駆け巡る。
「ねーえ! 遊ぼうって! 言ってるのっっ!!」
その予感は当たった。
ヒュンっ! という音をたてながら、女の人が投げた何かがユリの顔面めがけて飛んでくる。それを私は「うお!!」といいながらも、咄嗟の判断でかわした。
そのあるものは、そのままさっき私がめり込んでいった建物にまるで吸い込まれているかのように突き刺る。私はそれが何なのか確認するために遠目でその突き刺さったものを見た。
すると、その飛んできた物の正体はなぜか先のとがったシャーペンだった。
あっえーと飛距離百メートル……くらい?
「…………。何でだぁぁぁぁ!!? いや、すごいけど、すごいけど、
なんでシャーペン投げてきた!?」
状況判断が終わると同時に私は叫ぶようにそう言った。ある下心を隠しながら。
そんな私の姿を見た玲は私に向かって冷めた視線を送る。
「おい。つっこむのはいいが、早く逃げろユリ」
「うぇ? あ……うん。」
チッさっきのリベンジを果たしたかっただけなのに……。まあ、何か巻き込まれても面倒だしいいや従っとけ。
私は玲の目をじっと見て首を縦に振る。
「分かった」
「ん、じゃ、後で必ず事情は話してやるから」
「うん。ぜったいだよ!!」
そう玲に指を指しながら告げた後、私は全速力で走って玲のところをあとにした。
少しすると玲の「うおっあいつ速ぇーな、じゃ、こっからは、好きに暴れるとするか!!」という叫び声というか、自分を叱咤する声が聞こえてきたのは玲には黙っといてあげることにしよう。
家に帰ると私はすぐに台所に向かい、顔を洗った後に水を飲んで息を整えた。
あー疲れた。久しぶりだ、こんなに走ったのは。玲は、大丈夫なのかな? 無事なのかな? うーん。でも、あとであの訳のわからない事の正体みたいな事を教えてくれるって言っていたし、そう言えるって事は何かしら自信があるだろうから大丈夫なんだろうな。というか無事じゃなかったら、私の中であの事は永遠にわからない事になってしまうから無事じゃなきゃ困る。
「あー暇! する事は……ない!もう菓子でも作るか」
結局そこに落ち着いちゃうんだね私は。もう、どうしてなんだろ? まあ、それが比較的時間を忘れられる方法なんだろうが。
そんなとき、家にある固定電話の一般的に使われている電話のベルがなった。
「あ、電話だ」
私は面倒さそうに頭を家事にながら、固定電話が置いてある居間に向かう。そして、見覚えのある電話番号がディスプレイに浮かんでいたので、そのままのテンションで私は受話器を取る。
「はい。もしもし……」
電話を切った後、私は嬉しそうな、辛そうなでもなんだかにやついているというなんとも言えない顔を浮かべた。
ひさびさすぎる投稿です。エタってないですよ!! ちゃんと書いてますよ!!