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でも、今はどこからどこまでが自分なのか。
レイ・エンジェルの頭の中に入っている肉体がそうなのか。
でも、それだと脳だけでも充分だ。
それだとセリナは、セリナじゃなくレイ・エンジェルとして生きることになってしまう。
どんなものにも終わりが来るのか。
あ、じゃあ、どうして生きているんだろう。
どうせ死ぬのに、なんで生きる必要があるの?
それなら、楽しいこと、悲しいこと、嬉しいことなんか何も知らないまま死ぬほうがいい。
生きた証を残したって、誰も知らなければ何にもならない。
歴史に名を残しても、その星がなくなったんじゃ、意味のないことだし。
私が誰か、たとえばトシくんとか好きになって、子供産んで家庭を作っても、結局は別れのときが来る。
今でも、私がレイ・エンジェルとして死んでも、誰も知らないし。
何の問題もない。
記憶を操作すればいいじゃない。
だって、私が地球で何をしていたか、まったくわからないんだもの。
目を開けると、小さな閃光が瞬いては消えていった。
ほんの少しの時間だと認識していたが、かなりの時間が経っているらしい。
空間がゆがみ、鼓動する。どれまで続くのだろう。
一向に巨大生命体から離れる様子はない。
こんなに時間がかかったら、いつ襲われてもおかしくない。
もしかしたら、もう見つかっているかもしれない。
それなのに、巨大生命体はその場から動こうとしない。
――あれ? なぜ?
コネクターの声が聞こえた。
「どうしたの?」
「あと24時間ほどで、この空域を抜けます」
「そう」
寝転がったまま、見上げていた。
時々変色し、時々爆発を起こし、時々波打つ。
生物らしい動きが確認できる限り、やはりあれは生命体なのだろう。
「ねぇ、私が地球で何をしていたか、わからない?」
「すみません、データがありません」
「どのくらい、宇宙を航行しているの?」
「計測不能です」
「エデンはあと、どのくらい動けるの?」
「わかりませんが、今は船体が正常に戻りました」
「苦しかったこと、ある?」
「そうですね。宇宙船の墓場に入ったときは、計器が今までにないほどの異常を示しまして。脱出できる可能性は低かったですね。後、ブラックホールに吸い込まれそうになったときとか」




