6-4
息を潜め、エデンが通り過ぎるのを待つ。
静かだ。
エデンの動力機関の音がまったくしない。
音を立てないようにしているのだろう。
説明を聞いているうちに痛みが和らいでいた。
もう少し時間をかければ完全に回復するかもしれないが、セリナは多少無理してでもこの空域から脱出したかった。
「ねぇ、私まだシャイニング・フォームのままだから、うしろから押してあげようか?」
レイAのエネルギー源は光。
超新星爆発の輝きによるエネルギーがまだ残っている。
完全回復はまだだとしても、シャイニング・フォームならエデンを押すことぐらい簡単だろう。
しかし、コネクターの答えは『ノー』だった。
巨大生命体に多量に含まれているダークマターが反応し、見つかってしまいます。光ですら食料になってしまいますから。じっとしていてください。
「それって、そんなにすごいの?」
ダークマターは、一説には原子レベルの大きさのブラックホールだといわれてきましたから。それがないと宇宙に星は輝かないでしょう。
ビッグバン直後は、宇宙は重力が不安定で、ガスが充満している世界でした。もし、ダークマターがなければ、宇宙は今もモヤモヤとした雲で覆われた世界のままでしょう。
「な、なるほど……」
それに、超新星爆発で蓄えたエネルギーは自己再生に使われています。あの光がなければ、レイ・エンジェルは燃え尽きていました。エデンは逃げ切れたかもしれませんが。
だから、なるべく動かないでください。
コネクターの声が途切れた。
エデンは巨大生命体に気づかれないようにこっそりと、しかし急いで移動した。
本当に生物なのかな、と疑いたくなってしまう。
目の前に広がっているのは星の海なんじゃないの?
そう思い込んでしまうぐらい、光の粒がちりばめられている。
シャイニング・フォームの特性なのだろう。
目の前の宇宙空間に漂う違和感を敏感に感じ取っていた。
一瞬星が消え、紫色の星雲が視界全域に広がった。
――うあ……。
身震いした。
星雲は徐々に薄くなり、収縮していく。
それが消えた後は再びもとの宇宙空間に戻った。
遠くに小さな星が点在している。
どれだけ離れているか、たどり着くにはどれだけの時間が必要なのか、まったく想像できない。
そんな星々が揺らいだ。
一瞬だけ、星の光が鈍り、場所が移動したように感じられる。
それが一度にではなく、部分的に。時間を置いて規則的に。
巨大生命体の表層だった。それが波打っていただけだ。




