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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
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6-3

「巨大生命体の近くを通っています。ブラックホールから放出されたエネルギーを使って、電子と陽子で作られたアメーバのような生命体です」

「ブラックホールって、吸い込むだけじゃなかったの?」

「すいこまれて原子核などに分解され、それが外に出るのです」

「どんな生物?」

「本能のままに、物質を取り込むだけの存在です。今、星のように見えているのは、生命体による光の反射です。ダークマターも生命体の細胞組織を構成しているみたいです」

「なに? そのダークマターって」

「宇宙に散らばる、光を吸収する物質といわれています」

「生命体なんて、どこにいるの?」

「目の前にいますが」

「いないよ」

 首だけを動かし、周囲を見回す。

 いくつかの星雲が見えただけで、あとは星が輝いているだけだ。

 あの恒星はどこかに消えていた。

――きっと、以前のように私が意識を失ったあとで、レイ・エンジェルが自立起動して、爆発からエデンを救ったんだな。

 それにしても、超巨大生物って、どこにいるのだろう。

 今の状態では、絶対に勝てないに決まっている。

 動かせるのはせいぜい首だけ。

 戦うどころか、立って体を動かすことでさえ満足に行えないのだから。

 コネクターから返事が来た。

「目に映る全てが、生物だなんて」

 それまで起き上がろうと力を入れていた手足から、力が抜けていった。

 どうしていいかわからない。

 絶望の底へ沈められていくような気分だった。

 仮にレイAが五体満足の状態で、シャイニング・フォームであったとしても、絶対に倒せない。

 目を閉じ、動くのをやめた。

 起き上がる気持ちもなくなってしまったみたいだ。

 コネクターによると、推定1光年の大きさ。

 アメーバに似ているが、細胞の複合体で、そのひとつひとつが人間の千倍以上だと。

 取り込まれたら、レプトン、クォーク、それぞれの原子核にまで分解されるそうだ。

「ちなみに1光年とは、光が一秒間に進む距離≒30万キロメートル×60秒×60分×24時間×365日の距離です」

「いちいち言わないでよ、そんなこと」

 途方にくれるというのはこんなときに使うのだろう。不測の事態、という言葉にも限度がある。

 あんな巨大生命体に対して、レイAシャイニング・フォームが百体あったってかなうもんか。

 コネクターもあっさり言ってくれるなぁ。

「それじゃ私は細菌みたいなものじゃないか」

「まぁ、そうですね」

 どうにもならないと、あっさり覚悟が決まった。

 かえって気が楽になった。

 怖くなくなった。

 どう頑張っても無駄だ、もういいや、と。

 カプセルの中の人たちは何も知らず、苦しむことなく死ねていいな。

――どうせ生き物は、みんないつか死ぬんだし。

 あきらめた。

 だが、コネクターはそうではないらしい。まだ説明が続く。

 一応聞くことにした。

 もし、この生物に脳があるとしたら、触覚が感じた刺激はかなりの時間がたたないと脳には届きません。

 感覚は電気信号に置き換えられ、神経を通じて脳に伝わります。

 電気と光は同じ速さで進みますから、神経を伝わり終えるには、一年ぐらいかかります。脳が察知し、捕食するという命令を伝えるのにも時間がかかります。

 地球のアメーバのように自動的に捕食行動を取ることがなければ、ですが。

 幸い、ここはあの生物から一万キロメートルほど離れています。

 それに、エデンには超新星爆発で受けた勢いがついたままなので、気づかれる前に逃げ切れる可能性があります。

「だったら、さっさと離れてしまいなさい」

 声を押し殺し、呟いた。


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