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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
63/71

6-1

「間に合うわけないでしょ!」

 光の傘が広がり、厚みを増していった。

 恒星が音もなく、強い閃光を放った。目の前が真っ白になった。

 セリナは目を閉じ、両手に力を入れた。

 足をエデンの外壁に食い込ませた。

――あれ?

 数秒間の間隔を空けた後、強い衝撃を受けた。

 傘が大きく振動した。

 衝撃に反発するため、翼を広げた。それでもダメだ。

 両足が船体をえぐりとりながら、爆風に押され始めていた。

 両手にかかる負荷は大きくなるばかり。

 自分の体がとてつもなく重く感じる。

 船体には足だけでなく、体までめり込んでいきそうだ。

 悲鳴にも似た声を上げているが、自分でもそのことに気がついていない。

 油断すると、光のバリアは簡単に割れてしまうだろう。

―-だれか、だれかぁ……。

 シャイニング・フォームになって力は飛躍的に強くなったものの、もうだめだ。体中が激痛にきしみをたてていた。

 しかし、やっていることに後悔はない。

 ふと、夢での生活を思い出した。


 一番古い記憶では、自分は天使が描かれている絵本を読んでいた。

 内容は忘れてしまったが、とにかく一生懸命に読んだことは覚えている。

「ママン、これなーに?」

「ん? どれ? これは、天使さんね」

「テンシ?」

「うん、神様のお使いでね、時々見回りに来るのよ」

「パパの国ではなんていってるの?」

「アンジュ(ange)って言うの」

「シェナも会える?」

「そうね、いい子にしてたらね」

 母はそういって、頭をなでてくれた。

 あの頃は天使と名のつくロボットに乗るなんて、まったく想像できなかった。

――これが天使なら、作った高橋氷雨は『神』かぁ?

 膝が折れ、腰が落ち、尾羽根と翼が金属面に沈み込んだ。

 光のバリアは今も耐えてくれている。

 レイAの羽衣は激しくなびいている。

 が、千切れてはいない。まだ、大丈夫。まだ、耐えられる。まだ、まだ……。


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