6-1
「間に合うわけないでしょ!」
光の傘が広がり、厚みを増していった。
恒星が音もなく、強い閃光を放った。目の前が真っ白になった。
セリナは目を閉じ、両手に力を入れた。
足をエデンの外壁に食い込ませた。
――あれ?
数秒間の間隔を空けた後、強い衝撃を受けた。
傘が大きく振動した。
衝撃に反発するため、翼を広げた。それでもダメだ。
両足が船体をえぐりとりながら、爆風に押され始めていた。
両手にかかる負荷は大きくなるばかり。
自分の体がとてつもなく重く感じる。
船体には足だけでなく、体までめり込んでいきそうだ。
悲鳴にも似た声を上げているが、自分でもそのことに気がついていない。
油断すると、光のバリアは簡単に割れてしまうだろう。
―-だれか、だれかぁ……。
シャイニング・フォームになって力は飛躍的に強くなったものの、もうだめだ。体中が激痛にきしみをたてていた。
しかし、やっていることに後悔はない。
ふと、夢での生活を思い出した。
一番古い記憶では、自分は天使が描かれている絵本を読んでいた。
内容は忘れてしまったが、とにかく一生懸命に読んだことは覚えている。
「ママン、これなーに?」
「ん? どれ? これは、天使さんね」
「テンシ?」
「うん、神様のお使いでね、時々見回りに来るのよ」
「パパの国ではなんていってるの?」
「アンジュ(ange)って言うの」
「シェナも会える?」
「そうね、いい子にしてたらね」
母はそういって、頭をなでてくれた。
あの頃は天使と名のつくロボットに乗るなんて、まったく想像できなかった。
――これが天使なら、作った高橋氷雨は『神』かぁ?
膝が折れ、腰が落ち、尾羽根と翼が金属面に沈み込んだ。
光のバリアは今も耐えてくれている。
レイAの羽衣は激しくなびいている。
が、千切れてはいない。まだ、大丈夫。まだ、耐えられる。まだ、まだ……。




