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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
60/71

5-8

 宇宙生物は一匹も動いた様子はない。

 変身を終えたレイAは限りなく人間に近かった。

 姿勢をただし、翼を大きく左右に広げた。

 ほとんど真っ黒な背景の中にあって、レイAだけが白く輝いていた。大きく広がった翼からは、光の粒子が放出されている。

 尻尾のようにまとまっていた尾羽根がほどけた。

 ヘイルは先ほどポツリと呟いてから、ただ見とれているだけだった。

 時々漏れる言葉も、どこか上の空だ。

「なんて、きれいなんだろう」

 本心から出た感想だった。

「あれは、なに?」

 コネクターは子供に話して聞かせるように、ゆっくりとした言葉で説明し始めた。

「レイ・エンジェルのエネルギーが最高点を超え、過充電状態になったときに現れる最強の形態です。クリエイター高橋氷雨は『シャイニング・フォーム』と名づけられました」

 この後のコネクターの話は長々と続いたが、ヘイルの耳には入ってこなかった。それほど彼はレイAに見入っていた。顔はもちろん、体つきもセリナと似ている。

 レイAは飛んだ。

 翼を大きく羽ばたかせ、宇宙空間をかけめぐった。

 変身を終えたのと同時に、宇宙生物も行動を開始した。

 変身中は特殊な電波か何かを出し、動きを封じていたのだろう。

 滅亡前の地球がどんな状況にあったのかはわからない。

 高橋氷雨とやらのことがわかるのは姿だけだ。しかし、当時の地球には、きっと優れた科学力を持っていたのだろう。

 すばらしい文化を築いていたことだろう。

 でも、どうして、地球を離れなければならなかったんだろう。


 もはやロボットと呼ぶことはできない。

 誰の目から見ても『天使』たるべき姿と戦い方だった。レイ・エンジェルと名づけたのは伊達や酔狂ではない、とコネクターは言ったが、そのとおりだった。

 宇宙生物は再び群れをなして襲い掛かってきたが、ことごとくレイAに返り討ちにあい、倒されていった。

 レイAの新しい装甲と表皮は、宇宙生物の体液を全てはじいた。

 宇宙生物を統率している生命体はいないようだ。

 彼らはでたらめに襲ってきては、そのたびにやられている。

 映像からはよくわからないが、レーダーにはよく映っている。宇宙生物たちが減っていく様子が。

 レイAは次々と表情を変えていく。

 変身前の仮面をつけていたときとは大違いだ。

 セリナの意識が残っている証拠だとコネクターは説明した。

「一度目は、まったく表情を変えなかったのに」

 コネクターは嬉しそうに目を細めている。

「一度目?」

「はい。これでこの姿になるのは二度目です」

 コネクターの言葉が速くなった。

「一度目はまったくの無表情でした。半分眠りかけのセリナでは耐え切れず、気を失ってしまいました。でも、今は、誰よりも性能を発揮しています!」

 彼女の口から次々と言葉が飛び出す。誰かに言いたくて仕方がなかったように、興奮を抑えきれないかのように、早口でまくし立てた。

「セリナはもう、大丈夫?」

「はい! これで、もう大丈夫です! シャイニング・フォームに加え、完全覚醒したセリナ。今のレイ・エンジェルに勝る宇宙生物は、あの中にはもういないでしょう!」

 ヘイルはコネクターに気おされし、声が小さくなっていた。

 数十分後、コネクターのこの言葉は現実のものとなる。


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