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また別の宇宙生物がレイAに体当たりを加えた。
再びエデンが激しく揺れ、映像が消えかかった。
レイAは押しつぶされ、エデンの外壁と宇宙生物にはさまれ、身動きが取れないでいる。
「数が多すぎる! レイ・エンジェルだけじゃ全然ダメだぁ!」
レイAは起き上がろうと、腕をついた。
コケは指先まで覆っていた。
宇宙生物はレイAから離れ、二度目の体当たりを食らわせた。
当然船は大きく揺れる。レイAは外壁にめり込んだ。
ヘイルは床に伏せたまま、映像を注視していた。
今、セリナは何を思っているのだろう。
本当はとても怖く、激しい痛みに泣き出しそうになっているんじゃないか。
目をそらすこともできたが、それだとセリナに悪い気がする。
時々ノイズが走り、映像が見えなくなる。
しかし、ヘイルはどんなことになろうと、レイAを見ていようと決めた。
隣にいたコネクターが、不意に大声を上げた。
「三十分経ちました。もう大丈夫です」
言葉の意味がわからない。
「何が?」
敵は一向に減っていないし、レイAは相変わらず危険な状態にある。ヘイルは汗と一緒に涙を拭いた。
こんなときに何を、とコネクターをにらんだ。
「レーダーを見てください」
コネクターはヘイルに目もくれずに言った。ちょっと頭にきたが、立ち上がり、言われるままにしてみた。
「恒星に近づいています。スーパーノヴァが起きそうな、赤色超巨星です」
「それで?」
「レイ・エンジェルのエネルギー源は、なんだかわかりますか?」
そういえば、と口にしたきり、言葉は後に続かなかった。
仕方なく首を振り、コネクターを見た。
コネクターはこう答えた。
「光です。伊達や酔狂で『RAY・ANGEL』という名前をつけられていないのですよ」
少し自慢げなコネクターの声が、とてもほほえましく聞こえた。
恒星がよほど大きいのか、レーダーの端にそれらしき星の一部が赤い面として映っていた。
「レイ・エンジェルが負けそうなのは、光が不足していたからか?」
「そうです。あと疲れや痛み、恐怖による戦闘へのためらいも原因のひとつでしょう。でも」
コネクターの声は自信に満ちていた。
「もう大丈夫です。レイ・エンジェルは復活します」
この言葉を確認するかのように、ヘイルは繰り返しうなずいた。
ぐったりと倒れていたレイAは起き上がった。消えかかっていた目にも、光がよみがえった。




