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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
45/71

4-10

 三人はしばらく歩いていた。

 コネクターはセリナとヘイルに背を向けたまま、

「皆さんが見ていた『夢』ですけど」

「知ってるよ。メインコンピューターが見せてたんだろう?」

「でも、どうしてそんなことを」

 ヘイルに続いてセリナがそう口にしたとき、足元が大きく揺れた。

 二人は何もできずに床に倒れてしまった。コネクターは姿勢を維持したまま、少し上方を見上げた。

「来ましたか」

「何が?」

 コネクターの呟きに対し、セリナが大声で聞き返した。

 大きな揺れが断続的に起こる。

 セリナとヘイルは床に伏せたまま、立ち上がれない。

 コネクターの笑みは既に消えていた。

「宇宙生物の群れに追いつかれたみたいです。急がないと」

 コネクターは指を鳴らした。

「あぁっ!」

「うわっ」

 二人の体が宙に浮き上がった。

 両手足をジタバタと動かした。突然のことで混乱し、どうしていいかわからなくなった。

「な、なによー!」

 コネクターは二人に向き直り、真剣な面持ちで、短く鋭く叫んだ。

「落ち着いてください! 動かないで!」

 二人は動きを止め、コネクターに注目した。

「無重力状態にしました。壁を軽く蹴るだけで進めます。床の赤い線に従って進んでください。もうすぐそこですから。それではまた後で」

 セリナが何か言おうと口を開いたとき、コネクターは笑顔を見せて、姿を消した。

 セリナは床を見た。

 赤い線なんて、どこにも……。

 カーペットの一部が赤く光り、線のようにまっすぐ伸びていった。

「これか。行こう、セリナ」

 ヘイルは手招きをしてから、近くの壁を蹴った。すると彼は滑るように空中を移動し、すぐに見えなくなった。

「あ、ま、まって」

 セリナは両足を後方に突き出したが、蹴るはずの壁が遠くにあった。

「足が届かない……」

 仕方なく、泳ぐ要領で両腕を動かした。

 それでも足りず、両足も働かせた。

 なんとか両手が届き、体を壁に引き寄せることに成功した。

 全身を覆っているスーツの特殊繊維が、いい滑り止めになった。

「どこまでいったんだろう」

 壁を蹴り、前進した。

 赤い線は消えていない。その上をセリナは直進していった。

 壁にぶつかりそうになる度に足で蹴る。思っていた以上に簡単だった。

 曲がり角を右に曲がったところで、ヘイルが待っていた。

 彼はセリナに呼びかけ、手をさし出す。セリナは黙ってその手をとった。

 コネクターの声が聞こえてきた。どこかにスピーカーが設置されているらしい。

「私です。二人とも、進みながら聞いてください。エデンをねらう宇宙生物の数は、増加していく一方です。急いでください」

 セリナとヘイルは顔を見合わせ、互いにうなずくと、二人は同時に壁を蹴った。


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