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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
41/71

4-6

 頭を抱え、その場に両膝を落とした。

 声が弱々しく、息も細く途切れだした。脂汗が頬を伝わり、床に落ちた。

「もしかしたら……」

 セリナは突如、絶叫し、両拳を叩きつけた。無機質な金属音が床に響いた。

「セリナ、何を!」

 床に額をぶつけようとしたが、ヘイルに体をつかまれ、阻まれた。

 呼吸が荒くなっている。

 セリナはうなだれたまま、顔を上げようとはしなかった。

「もしかしたら、あの時、食べられちゃったのはユキちゃんだったかも。それと、私の知っている多くの人たちも、そうなのかも。人が食べられた、何人も死んじゃったんだ! 私が、私がもっとうまく戦っていたら……」

 ヘイルはセリナの肩をつかみ、揺さぶりなら、落ち着け、と繰り返した。

 セリナは彼を見ていなかった。

「私がうまく戦っていたらだれも死ななかった! 怖がって逃げたかったから、助けられなかったんだ! それでみんな……。あの時、私が怖がったり気持ち悪がってなかったら、助けられたのに!」

「セリナ、セリナ! 落ち着け!」

 ヘイルは叫んだ。

 セリナは取り乱し、わめき散らした。

 ヘイルはセリナを落ち着かせようと何度も方を揺さぶり、落ち着けと繰り返し呼びかける。

 だが、彼女は顔を真っ赤に腫らしながら涙を流していた。

 首を激しく振り、自分の罪を全て告白するかのように、感情をあらわにした。

 抱きすくめられながら、セリナはむせび泣いた。

「ごめん……」

 喉の奥から声を絞り出す。

「いいんだ。君だって、知らぬ間にレイ・エンジェルに乗せられて、宇宙生物と戦っていたんだ。誰も君を責められない。そうすることは、誰にもできないんだ」

「だって、棚がこんなに……」

「いいんだよ。あれから襲撃はない。犠牲は少なくてすんだんだ。君のおかげだよ」


 へイルはセリナの頭をなでた。

「もういいかい? 落ち着いたかい?」

「うん」

 うなずいて見せたが、セリナの本音はもう少しこうしていたかった。

 ここはあまりに静か過ぎる。

 また、一人ぼっちになってしまうような気になってくるのだ。

 ヘイルは体を離し、セリナの顔を覗き込んでくる。

 いけない、心配かけては。慌てて涙を拭き、笑顔を作る。

 ヘイルは安心したようだ。彼女に笑いかけてきた。

「まだ、しばらく襲われないと思う。セリナ、もう君を一人きりにしない。僕がそばにいるから、もう心配しないで」

「ありがとう、頼りにしてる」

 ヘイルの顔が赤くなった。だが彼はそれをごまかそうと咳払いをし、視線をそらした。

「き、君の目は、ウサギみたいだな」

「相当泣いたからね、私」

 セリナはヘイルから離れ、標本箱にもたれかかった。

「私もカプセルに入ってたんだよね」

「あぁ。君の名前は、やっぱり『セリナ・ジュレ・ブランシュ』だったよ」

 セリナのカプセルはレイAの格納庫の、すぐ近くの部屋に放置されているそうだ。

「でも、なぜ私たちはカプセルに入れられてたの? それに、なぜ私がレイ・エンジェルなんかに?」

 セリナの視線がヘイルを射抜く。彼はセリナの真剣な表情から目をそらすことはできなかった。しかし、やがて彼は大きく息をはき、両肩を落とした。

 彼は表情を緩めたまま、首をゆっくりと左右に振った。


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