3-4
今のセットは相手チームにとられてしまったが、次のセットはこちらがとった。
時間の都合で第3セットは途中で中断した。
「気をつけ、礼!」
「ありがとうございましたー」
解散し、着替えに行く。
その間、セリナは今日のことを思い出してみた。
朝、母親に起こされた。
遅刻せずにすんだ。朝食のメニューはコーヒーとトーストで、ブルーベリージャムをつけて食べた。
登校中、またあの夢を見て、夢から覚めると、バレーボールの試合をしていた。
今までの記憶はそれしかない。
着替えているとき、何人かがやっかみ半分でセリナをからかってきた。セリナの胸が15歳にしては大きいからだと。
冗談だとわかっていたので、自分も冗談を言い返し、後は適当に聞き流した。
回想を終え、着替えも済んだ。
――jour reve (白昼夢)?
いやいやまさか、と首を振る。
まだ寝ぼけているのかもしれない。
「それじゃ、先にいっているから」
「はいはーい」
セリナは足早に体育館を出た。
彼女たちの顔はさらに変化していた。
マネキンどころか、今では下手な腹話術人形になっていた。
顔に特徴が残っているので誰だか判別できるものの、人間とは思えない。
質感はプラスチック。
動作も筋肉によるものではない。セリナから見た彼女たちの行動は、まさに人形劇だった。
匂いもない。
風は吹いているが、肌に感じることはなかった。
髪や、草木は揺れているというのに。
景色が作り物のように見えてきた。
形はどこかイビツだし、何を触っても同じ感触しかない。
手に持っている体操服も、目で確認していなければ、雑巾とかただの綿とかに変わっていそうだ。
職員室に通りかかったので、ちょっとのぞいてみた。
――ここも……。
本当におかしくなってしまったのかと不安になり、すぐに離れた。
「いつ終わるのかしら」
今度は天井と壁の境界線がぼやけてきた。




