表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
27/71

3-3

「セリナ、いったよ!」

 目を開けた。

 いつの間にか体操服に着替えて、体育館でバレーボールをやっている。

 見上げると、ボールがこっちに飛んできている。

「え、え? えっ?」

 よくわからないまま、両手を頭上に掲げ、レシーブした。

 ボールはネットの近くまで戻された。

 前衛がスパイクを打ち込むが、ブロックされてしまった。

 セリナは状況が飲み込めなかったが、体育の授業中だということはすぐにわかった。

 体育の先生は審判台に立っている。

 クラスに元バレー部員は三人、そのうちの二人は相手チームだった。もうジャージを着用していい季節なのだが、体を動かすと暑くなるので、まだ夏の格好をしている者が多い。

 試合はすぐに再開され、サーブがあげられた。

 ラリーが続き、三度こちらのコートにボールが来た。

 チームメイトがレシーブに失敗し、はじかれたボールがコートの外に飛んでいった。

 セリナは後衛の右側にいた。

 すぐにボールに追いつき、テニスのラケットを振る要領で右手を下から上に振り上げた。床に落ちそうだったボールはすくいあげられ、フラフラと上がっていった。

 所定の位置に戻ると、ミスした生徒は

「ごめん」

「ドンマイドンマイ」

 その生徒の両目もガラス玉のようだった。

 そして、声もなんだか違う。

 テープに吹き込まれた棒読みの音声を聞いているようだった。

 初めの頃は気づかなかったが、どの生徒も似たような話し方をしている。

 結局、セリナがあげたボールは、向こう側のコートの隅ぎりぎりのところに落ちた。

「やったぁ」

 先生がフエを吹いた。短かったが、セリナには『ピーッ』ではなく『ウィーン』という警報ブザーのような音に聞こえた。

 体育館のドアはすべて開け放たれていた。

 外では男子がサッカーをやっているはずだ。

 ちらりと外を見ると、風景が演劇用のハリボテのようにしか見えない。

――変だ。

 考え込んでしまい、今が体育の授業中だということも忘れていた。

「セリナ!」

 名を呼ばれ、我に返った。

 再び自分に向かってボールが飛んできた。凄いスピードだ。

 突然のことでセリナは驚き、よけた。

 ボールは床にあたり、壁にあたって跳ね返った。

 先生がフエを吹いた。

 またさっきと同じ音だった。本当にどこかで警報が鳴っているんじゃないかと、セリナは耳を澄ませた。

 しかし、聞こえてきたのは先生の

「アウト」

という声だった。

 近くにいた生徒に話しかけられた。

「ナイス、セリナ。大丈夫?」

 うなずき、試合に集中しようと身構えた。

 彼女の『大丈夫?』という言葉が、セリナには

「あなたの頭は大丈夫?」

という意味に聞こえた。

――かなりおかしくなっているかも。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ