2-1
セリナは目を覚ました。
いつも見ている自分の部屋の天井が視界に入った。肌にはやわらかいシーツの感触がある。
寝たままで目を開けたり閉じたりしていた。
「あっ、いたぃ……」
寝言のような声が出た。
首を動かし見回してみると、そこは昨日と変わらぬ自分の部屋だった。
枕元にある目覚まし時計は、ベルが鳴る少し前の時刻をさしていた。
「うちゅうせんは?」
そんなものはどこにも見えない。かわりに壁にかけてある中学の制服が目に入った。
目を閉じかけた。
だが、何かを思い立ったように飛び起き、布団をはねのけて、両手を凝視した。
「元に戻ってる」
両肩を落とし、安心して再び横たわった。
目覚まし時計が鳴った。手を伸ばし、ベルを止めた。
「うっ、ぐっ」
ベッドから転がり落ち、何かにつかまろうと手を伸ばす。
体中に何かを突き刺すような痛みを感じ、目を硬く閉じてしまった。指先に何かが触れた。イスだった。歯を食いしばり、腕を伸ばす。
「寝違えたのかな。そんなぁ」
イスにしがみつき、両足に力を入れ、立ち上がろうとする。手を離すと目眩を感じ、しっかり立つことができない。
ハァ、と大きく息をはいた。
「こんなに痛いのに、なんなのいったい……」
着替えのため、衣服を脱いだ。
本来なら、白い肌が鏡に写るはずだった。だが、鏡にはあざだらけのセリナの体が写っていた。鏡が汚れているのではないか。
目を自分の体に向けてみると、やはり、体にはあざが出来上がっていた。
「なんで?」
いくら考えても原因がまったくわからない。
制服は長袖に代えればいいが、体操服は夏のでないとまだ暑い。
顔に出なかったのは幸いだが両腕両足にはあざが点々としている。
学校に行きたくなくなった。
セリナは十五歳と思えないほど発育した体を鏡に写していた。ため息をつき、ベッドに下着だけの姿で座り込んだ。
「どうしよう、なんとかごまかさないと」
目立たないように、と頭をひねるが考える気力もなくなってしまったかのようだ。
どうしよう、なんでだろう、となんだか朝から沈み込んでしまった。変な夢も見るし。
もう一度、陰鬱に息を漏らす。今日は休もうかな。
「ん?」
改めて自分の体を見直す。
「あざが消えていく。よかったぁ」
安堵の声を上げ、四肢を伸ばした。
これなら、体操服を着ても大丈夫だ。セリナはなぜだかわからないが可笑しくなり、笑い出した。
―そういえば、小学校の頃は男の子が見るようなロボットアニメをよく見てたっけ。すっかり忘れてた。




