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RAY ANGEL SPACE REMIX  作者: 迫田啓伸
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1-1

『生命反応、多数確認』

 コンピュータールームのモニターにこのような一文が浮かび上がった。

 そこには誰もいなかった。

 文章は消え、画面いっぱいに人の名前らしき単語が並んだ。

 表示された名前をカーソルが次々と示していき、それにしたがって画面がスクロールしていく。

 やがて、カーソルは停止。

『Serina G. Blanche』

 この名前を示した。

 画面が変わり、数行の文章が並んだ。その最後尾には全て

『OK』

とついた。


「う……、ん……」

 母の『起きなさい』という声が聞こえてきた。

 ベッドから手を伸ばす。机の上に目覚まし時計があったはずだ。

 布団から顔を出し、時計を探す。

 カーテンの隙間から差し込んでくる日の光は彼女の金髪に反射し、さらに彼女の顔に降り注いだ。

 ようやく時計を手に取り、文字盤を見ようとうっすらと目を開けたとき、彼女はベッドから転げ落ち、フローリングで額を打った。

「イタタタ……」

 掴んでいた時計を見ると、まだ慌てるような時間ではなかった。

 下から母が呼びかけてくる。

「セリナ、おきたの?」

「ウィ、ママン」

 セリナは立ち上がり、目覚まし時計を切ってから机の上に置いた。

「鳴る前に目が覚めるなんて」

 壁にかけてある中学の制服を取り、埃を払った。

 荷物は昨夜のうちに用意しておいた。今日は遅れずにすむだろう。

 手早く着替え、鏡の前に立つ。

 小さめの長方形の鏡で、壁に吊るしている。もう少し大きな鏡台がほしいが、まだ中学三年生のセリナにはまだ早いし、予算がない。

「太ってきてないかな? 大丈夫みたいね?」

 部活を引退して二ヶ月経った。最近、運動不足気味なので、気になっていたのだ。

 次にセリナは鏡に顔を近づけた。

 セリナはフランス人との混血である。だから日本語とフランス語の両方が話せるし、金髪で肌が白く、瞳は青い。

 鏡を見ながら髪を結い上げ、団子状になった髪をまとめる。

 先端の髪が外はねを起こしてしまうが、案外見栄えが良いので、そのままにしている。

 他の髪型にしようと思うこともあるが、慣れのせいか、いつも同じにしてしまう。

 髪が整った。校則はそれほど厳しくないし、金髪のおかげで少々違反気味の髪留めをしていても目立たず、怒られることはなかった。

 セリナはそのまま鏡を見つめ、ちょっと笑顔を作ってみた。

―よし、カンペキ!

 白人の血を引いているためか、それなりに特徴がある。

 目もパッチリしていて色白。顔のつくりは母親譲りである。白人としての特性は父親譲りだが。

 クラスには自分よりも魅力的な女の子が大勢いるが、セリナはコンプレックスには感じなかったし、自分の顔が気に入っている。

「セリナ! 何やってるの?」

「あっ、ハーイッ」

 急いで荷物を抱え、部屋を出ようとした。

 そのとき、パシッと音がした。

 部屋の中からだ。セリナは不思議に思って踵を返した。

 中を見回し、異常を探す。

「あっ……」

 鏡にヒビが入っていた。

 破片は飛び散らず、形はそのまま維持されていた。しかし、この鏡はもう使えない。

「なんで、いきなり」

 セリナは鏡に指を伸ばす。が、途中で腕を引っ込める。ため息交じりで、気に入ってたのになぁ、と肩を落とす。

―何かやなことでも起こるのかしら。

 再び顔を上げた。

「えっ!」

 セリナは驚き、何度も瞬いた。

 鏡が元通りになっていたのだ。

―目の錯覚だったのかな? あ、いけない!

 下の階で母を待たせているのだ。何か言われると面倒だ。セリナは急いで階段を下りていった。

「ママン、bonjour(おはよう)

「Bonjour、セリナ」

 セリナは微笑みながら席に着き、朝食のパンをかじった。


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