静かな始まり
口が悪い人がいます。キャラの性格は二次創作の設定そのままです。
気になる方は検討の方よろしく願いします。
ロマーノは全てを見通す力を持っている。
唯一自分の過去と未来を視られないが、
自分を知っている者を通じてなら視ることが出来た。
だが未来を知っていても退屈でしかない。
だからこそ彼はこれから向かう学園に入学して友人が出来ても、
先を視るつもりはなかった。
新しい環境で束の間でいいから楽しく過ごしたかったのだ。
故郷のように眼を気にして避けられるのはもう、嫌だった。
家族の見送りも断り、一人で電車に乗った。
でも彼を知っている人はいるようで。
ロマーノの座る座席は空いていた。
「隣いいか?」
「どうぞ。綺麗な猫だな」
「ローザだ。兄達に選ばれなかったから俺が貰ったんだ」
「へえ、こんなに綺麗なのに」
「この子は他の兄弟に比べたら弱々しかったからな。
兄弟はもっと健康的で綺麗な子たちだった」
「ならこの子は救われたんだな。自己紹介してなかったな。俺はロマーノだ」
「ローマ出身か。まんまの名前だな。俺はアレンだ。ロマーノはリスか」
「キアーラだ。アレンの子と同じメスだ。
……爺さんがロマって愛称が可愛いからって聞かなかったらしい」
「相当の孫馬鹿だな。それ」
「あの。前よろしいですか?」
「ああ、どうぞ」
「ありがとうございます。本田京助と申します。よろしくお願いしますね」
「ロマーノ・チェルラだ。よろしくな」
「アレン・クロフォード。よろしく」
「皆さんのペット可愛いですね」
「京助って呼んでいいか?俺も名前でいい」
「いいですよ」
「京助のペットは犬か。この子も可愛いな」
「ぽち君といいます。この子もよろしくお願いしますね」
三人は意気投合した。
例えこの眼のことを知られても変わらないと思えた。
この先に待ち受けている出来事も知らないで。
「あれ?京助がいないぞ」
「さっきまでいたよな?」
傍にいたはずの存在が見当たらないので、二人は周りを見渡す。
いたはずなのにいつの間にかいない。
「どこいったんだ?」
「もしかしたら閉じ込められたのかもしれない」
「名の呼べないあの人みたいにか?」
「声が、聞こえるらしいんだ。
振り向いて扉に一歩でも近づいたら引きずり込まれ、扉が閉まる」
「出れないのか?」
「出れたらあいつはとっくに出てるぞ」
「なあ、なんでその扉とやらに詳しいんだ?」
アレンがそう聞くと、ロマーノが簡単に答えた。
「昔扉の先の存在、フリードリヒの兄弟とよく遊んでたんだ。
フリードリヒがいなくなって、一つ上のあいつの弟がいなくなった理由を探してたしな」
「それでロマーノも手伝ったのか?」
「俺はそう言うの得意だから、唯一彼に接触した存在を通じて“視た”」
「それで扉の先に消えたフリードリヒとやらを視たのか」
ロマーノは頷いた。
「なら俺を通じて、本当にその扉から消えたのか視れるか?」
「……いいのか?」
「別にやましいことなんてねーからな。うっかり変なの視るなよ?
俺ん家も結構複雑なんだよ」
「俺たちはその瞬間を見ていない。だけど確かに京助は消えた」
「扉の先に?」
「ああ」
「なら扉はわかるか?」
「学園にある扉が多すぎて見当もつかない」
「なら探すぞ。時間がかかってもいい」
「扉探しと扉の中の透視は任せろ」
「俺は手伝ってくれる人を探す。京助を取り戻すんだ」
その時一人の少年が二人の前に現れた。
「ねえ。今いろんな人に聞いているんだけど…。
本田京助って子見なかった?ここで合流するはずだったんだけど。
どこにも見当たらないんだぁ。引率の先生に聞いてもわからないって言うし」
「京助の知り合いか?」
「うん。僕はイーゴリ・バラノフ。
お父さんの仕事の都合で日本に住んでた時に遊んでくれてたんだー。
帰っても文通だけは続けてたんだ。だから来てるはずなんだけど」
「京助は扉の先に消えた」
「もしかして名前も言えないあの人とか関連だったりする?」
「みたいたぞ」
「えー、どうすればいいんだろ」
「俺たちは京助を探す、イーゴリはどうする?」
「もちろん僕も探すよ!友達だしー」
「なら一緒に探そう。探すのは得意だしな。俺はロマーノ」
「俺はアレンだ」
「うん。よろしくねー」
ロマーノの学園生活は友人が消えるという最悪な出来事から始まった。
途切れた縁の先にあるのは
ロマーノが弟を通じて視た未来なのか
それとも違う未来なのか。
そして物語は静かに幕を挙げた。