温もり
とあるサークルにて条件付きで執筆しました。
条件…テーマはゲーム、ジャンルは学園ファンタジー、登場人物はおちゃらけ主人公&ツッコミヒロイン、文字数は2000~3000文字程度。
苦手項目多数により、面白い作品ではありません(苦笑)
ハードルを低くしてお読みください
「お~い。起きろ~。冬休みだからっていつまでも寝ているんじゃねぇ。それともお目覚めのキスがお望みか~」
お母さんじゃないな……。こんな事を言う奴は私の知っている限り1人しかいない。
まだ寝ていた脳みそが急速に活動し始める。私は目を開けて周囲の状況を確認した。
唇を尖らせ、近づいてくる幼馴染の顔。
「きゃあぁぁぁぁぁ~!!!!」
「へぐぁ!」
幼馴染の顔にめり込む私の拳。ざまぁ。寝こみを襲うとはなんて奴だ。そ、そりゃ私だって、もう少しムードを作って迫られたら……ゴニョゴニョ。って違う! なんでこいつが私に部屋にいるの?
「なんであんたがここにいるのよ。不法侵入で訴えるわよ! 馬鹿なの? 死ぬの?」
「待て、落ち着け。叔母さんが入れてくれたんだ」
母上よ。それでいいのか? 年頃の娘が寝ている部屋に男を入れるなんて。
何かあったらどうするの? あっ、うちの親は赤飯を炊くわ。そういう親だわ、うちの親。
「で?」
「で、とは?」
「なんで入ってきたの?」
「廊下を歩いてドアを開けて入ってきた」
「私は用事の内容を聞いているんであって、侵入経路を聞いているんじゃない!」
「ぐぎぁ」
あっ、自己紹介が遅れました。私は葛西春奈。高校2年生です。で、今私が殴った男は隣に住んでいる幼馴染の小暮俊介。
親同士が仲が良く、兄弟のように育った私達。思春期も終わりそうだし、そろそろこの関係にも終止符を打ちたい。でも、ここの馬鹿は私の気持ちに全く気付いていない。本当に馬鹿の朴念仁でフラグクラッシャー。
「そろそろ行かないと間に合わないぞ」
「ど、どこによ。デ、デートの誘いならそうやって言えばいいじゃない」
「なにを勘違いしているんだ、お前。ナオの家だよ。森山も来るって言っていたしな」
ナオとは俊介の親友、南野直太朗の事。森山とは私の親友、森山愛子の事です。この2人は付き合っている。私の前でイチャコラして、たまにイラッとするのは内緒の話。あれ? 私、今日、行くって約束したっけ?
「ナオ君の家に行くなんて話、したっけ? 愛子からも何も聞いてないよ」
「メールがあった。お前に伝えておいてって言われてる」
「俊介、そのメールっていつあったのかな?」
「3日前。ぐぎゃぁ」
「馬鹿なの? 死ぬの? なんで3日前にあった事を今言うのよ。いい加減にしないと殴るわよ」
「も、もう、な、殴ってるだろうが……ガクッ」
なんだ。デートじゃないんだ。ま、まあ、期待していたわけじゃないけど。本当だよ。でも、何の用なんだろ? ナオ君と愛子の誘いなら断るわけにもいかないし。何より暇だしね。じゃあ、着替えて行きましょうかね。よっと。
「何してんのよ」
「あっ、俺の事は気にしないで着替えていいぞ」
「私が気にするのよ。出てけ」
「お前の無乳なんか見たって興奮するどころか萎えるわ」
「私は無乳がじゃない、普乳!」
「不乳?」
「死ね~!!」
俊介がどうなったかは読者の皆さんの想像にお任せしますね。あっ、死んではないので安心してくださいな。行くのはナオ君の家だけなのかな? ダ、ダブルデートになるかもしれないし。期待してるわけじゃないよ。で、でも、何があるかは分からないでしょ? い、一応、か、可愛い下着の方がいいよね、うん。
「俊介、準備出来たよ。行こう」
「女の準備ってのはなんでこんなに遅いんだ。遅くていいのは男女の行為をして……ばぎゃっ」
「それ以上言うなぁぁぁ!」
ピンポーン。しかし、敷地に入ってからどれぐらい歩いたんだろう。相変わらずナオ君の家はデカいね。お金って集まる所に集まるんですね。って言うか、早く出てこい。寒いよ。部屋から玄関までの距離がありすぎるんじゃない?
「ようこそいらっしゃいました。坊ちゃまはお部屋でお待ちです」
あれ? 案内されてるのが、いつものナオ君の部屋じゃないよ。どこに向かってるんだろう? この家、デカすぎ。
「やっほ~春奈、元気~」
「愛子、今日は何するの? ナオ君とのリア充を見せられるだけなら帰るけど」
「今日は俊介と春ちゃんにやってほしいゲームがあるんだ」
相変わらずのホストスマイルだね、ナオ君。その笑顔で言われたらナオ君のお願いを断れる女の子は少ないよ。でも、私には何か悪いことを考えてる顔にしか見えないよ。
「これ、うちの親父の会社で作ったバーチャルゲーム。この機械を身体全体に付けて、ボックスの中に入る。そうすると、色んなゲームを体感しながら出来るんだ」
「ソード●ートオンラインやログ●ライズンみたいな感じなのか?」
「身も蓋もないけど、その通り! ってわけで早速2人でやってみてくれ」
「ナオ君や愛子は?」
「私たちはボックスの外でナビゲーションとかするの。まだ開発段階だから色々とあるみたいなの」
「ふ~ん」
悪い顔してるよ、愛子。なんかめっちゃ嫌な予感しかしないな……ここは逃げるが勝ち作戦発動。
俊介と私でゲーム内に。それを見ている2人か。混ぜるな危険の未来しか見えないしね。
「わ、私は良いかな。今回は遠慮してお……」
「お~い、よろしく」
ナオ君の言葉で沢山のメイドが部屋に入ってくる。あっという間にメイドさん達に囲まれる私。なに? なに? 何が起こるの? ってえぇぇぇぇ~。
あっという間に隣の更衣室に連れ込まれる私。あ~私が断る事をみこしてなんだね。ここは素直に諦めようか。もう、ツッコムのも疲れたし、この状況に慣れちゃったしね。色んな装置を身体中に付けられた。もう、どうにでもして。
「出来た。で、どうすればいいの?」
「じゃあ、このボックスの中に入って。俊介はもう隣のボックスに入ってるから」
素直にボックスに入ると白い壁に学校の屋上が映る。凄い! 本当に学校の屋上にいるみたい。で、私は何をすればいいのかなって隣に俊介がいるじゃん。
「とりあえず、お互い、手を握ってみて」
「合法的にお互いに手を握れるよ」
「やかましい! 手を握るのは違法じゃないし、犯罪でもないわ!」
メイドに付けられたイヤホンからナオ君と愛子の声が聞こえてくる。なんでゲーム内からツッコミ入れないといけないの? もうゲームを始めようよ。
俊介が手を出してきたのでそっと握ってみる。あっ、凄い。そこにはいないはずの俊介の手を握っている感覚がある。
「じゃあ、ゲームをセットするから少しだけ待ってて」
「ほいよ~」「了解」
「よし、これであの煮え切らない2人の間を接近させることが出来るぞ」
「そうだね。見ているこっちがムラムラ……もとい、イライラするもんね」
「お前たち、聞こえてる。ここから出たらツッコミまくってやるから」
「俊介君にナニを突っ込まれるのは春奈の方だけどね~」
「その口、閉じろぉぉぉ!」
ナオ君からゲームの説明を受ける。簡潔に言えば、魔法でゾンビを倒しながら屋上から校門に行けばいいと。ナオ君と愛子、私がホラーは苦手って知っているのになぜこのチョイス。……そっか、知ってるからこのゲームなんだね。
「では、ゲームスタート!」
うぉ! 凄い迫力!! うぁぁぁぁ~。ゾンビがこっち来るって。リアリティーありすぎだよ。グロイよ。怖いよ。なんでこんなゲームにしたの? 馬鹿なの? 死にたいの? あの2人、ゲームが終わったら覚えていろよ。
「春、何やってんだ!」
白い閃光が目の前を走り、ゾンビが倒れる。グロイよ。気分が悪くなってきた。このゲームはR-18は間違いないね。
「行くぞ! 春。お前も魔法を打てよ。楽しいぞ」
「う、うん」
「怖かったら俺の後ろから援護するだけでいいから。俺に任せておけ」
「あ、ありがとう」
あ、あれ、俊介が男らしい。手を握ってくれてる。ちょっとカッコいいかも。そしてその笑顔はこの状況じゃ反則でしょ。このバーチャルゲームって、顔が赤くなるのって相手にわかるのかな? 今の自分の顔は俊介だけには見れなくないな……
「来るぞ! うりゃ~!」
「え~い」
「いいぞ、春。なんかシューティングゲームをしているみたいだな」
「調子に乗っているとやられるよ、俊介」
「こんなんで負けるかよ。お前はカミソリに負けるけどな」
「私はそんなに毛深くないぃぃぃぃ!」
調子に乗る俊介が次々にゾンビを倒していく。あれ? こいつって調子に乗ると……
あ~あ、私の存在を忘れてどんどん先に進んじゃってるよ。まあ、いいけどね。ってあっ!ま、まずい。いつの間にかゾンビに囲まれちゃってる。こ、怖いよ……
「しゅ、俊介ぇぇぇ~。助けてぇぇ。いやぁぁぁ~」
「春! 今行く!」
俊介が魔法を連射してゾンビを次々に倒していく。俊介が最後のゾンビを倒した時には、私は腰が抜けてその場から動けないでいた。そんな私を見た俊介が手を差し出してきた。
「は、春は俺が守るから。今日だけじゃなく、こ、これからも……ずっと……」
「な、何言ってるのよ……」
「俺、な。春の側にいる。春を守るのは俺の役目。誰にも渡さない」
そう言いながら俊介が私を優しく抱きしめてくれた。そっと私も抱き返す。
俊介の温もりが……あれ? 温もりを全く感じないよ。
「お~い、お二人さん。私達が見てる事を忘れてない?」
そ、そうだ。これ、ゲームの中だった。って事はナオ君と愛子はこのシーンを全部見てたって事だ。
「しっかり録画しておいたからね~。このバーチャルゲームが完成したらCMに使わせてもらうよ。」
「消せぇぇぇぇ~~~!!」
帰り道。いつもなら俊介が軽口を叩き、それに私がツッコミを入れる。でも今日はそんな感じではなかった。幼馴染に告白された。抱きしめられた。でも、それは本当にゲームだったかのように今は何もない。
並んで歩く2人の間には1人分の距離があった。
(あの告白ってゲームの台詞だったのかな? それとも夢? またいつもの幼馴染に戻っちゃったんだね)
そんな事を思っていると俊介が私の手を握ってきた。俊介に視線を向けると照れ臭そうに視線を逸らす。その態度に私はクスッと笑いだした。
「なんだよ」
「別に~」
俊介の手はゲームとは違って温もりに溢れていた。
条件が厳しすぎる!短編でファンタジーって(苦笑)
同じ条件でもう1つ書いてみようかな
(〃^∇^)o_彡☆あははははっ