二人の関係
本編「別離の予感」まで読み終わってからどうぞ。
ちょっとアダルトな二人です
意識に引っ掛かりを覚え、ファーラルはゆっくりと目を開けた。今日は早々に仕事を片付け、住居としている旧後宮に引っこんだのだ。騒々しかった隣国も落ち着いたこともあり、国外への対応に余裕が生まれたため、最近のファーラルの仕事は以前よりも楽になっていると感じている。
ただ、いまだ未婚のため相変わらずファーラルに娘を押し付けたい貴族や大商人たちからの謁見は減ることがなく、それどころか増え続けているのが実情だ。思い出し、思わずため息を吐き出しそうになり口を紡ぐ。
―――これは、グレイか。
闇の精霊が教えてくれる情報を瞬時に処理していく。ロットウェル中央都市全体に張り巡らされた精霊の結界。それはファーラルに街の異常を察知させる役割を持つ。主には外敵攻撃の予知だが、それ以外にも利用方法はある。
ファーラルが主要としている数か所には、より強固な結界を設置していた。バーガイル家もそのうちの一つだ。
―――こんな時間に馬車を出したか……方向的に白薔薇城だな。ああ、先ほど届いた書状……時間があるときでいいと書いておいたが、無駄なところは変わらず真面目な奴だ。
流れ込んでくる情報と共に、脳も覚醒していく。微睡みから目覚め、ファーラルはついに息を吐き出した。
「ファーラル様?」
すぐ近くから凛とした声がすると、ファーラルは無言でその声の主に腕を伸ばした。柔らかい身体。すべらかな人肌。抵抗なく腕の中に納まった身体を緩く抱きしめる。
「どうされました?」
軽く身じろぎすれば、さらりとした黒髪が火照った体に触れた。
「グレイがこちらに来るようだ」
「グレイが?」
「ん」
見知った名前にガーネットは驚いたような声を上げたが、それに対するファーラルの返答はおざなりなものだ。抱きしめる力を強め、近くなった白い肌に唇を寄せる。首筋から香る甘すぎない香りは、ガーネット自身を表しているかのようでファーラルを落ち付かせてくれる。
「出迎えねばなりません」
「……あいつは野暮な奴だ」
体を起こし、乱れた長い髪を手櫛で整えているガーネットを、ファーラルは寝転んだままぼんやりと眺めていた。普段気を抜く様子を見せないファーラルにしては、とても珍しい姿だろう。けれどガーネットには見慣れた姿で、特段驚くものでもない。
慌ただしく体を清め、服を身に着けていくガーネットを見ていたファーラルは立ち上がりその手を取って作業を止めさせた。
「わたしの精霊に出迎えさせる。君は寝ていろ」
「いいえ。ファーラル様の弟子が来るのですから、出迎えはわたしの仕事です」
「……」
体を重ね合った余韻だろう。ガーネットの肌が火照り、いつもより色気を出している気がして―――誰にも見せたくなかったというのは気恥ずかしいので口にしないでおいた。けれど一瞬口ごもったファーラルの姿にガーネットは気づいており、自然と口元が緩んでしまっていた。
「わかった、任せる……」
「はい」
「あと、グレイだけでなくライナも一緒にいた場合―――二人を引き離す」
「……ファーラル様」
咎めるようではなく、悲しげな声だ。だがこればかりはしょうがない。
「ライナ用に一室用意する。間を持たせてくれ」
「……はい」
ライナ用の鳥籠。グレイが連れて来ていなければ無用の長物だ。だが、もう同行していた場合、逃げ道を与えるわけにはいかない。それが時の運だったのだと―――諦めてもらう。
ファーラルにより闇の精霊の結界が張られた一室は、そうして用意されたのだった。
ファーラルとガーネットの関係性。
議長と秘書。
アジレクトの弟子とアジレクトの孫。
「無声の少女」では珍しいアダルト組です




