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クレールの心労

緊迫の建国記念日3まで読み終わってからどうぞ。

わたくしの名前はクレール。由緒正しきバーガイル伯爵家に仕える筆頭執事です。


 本日はロットウェルの建国記念パーティの日です。数週間前から浮かれていた人々の高揚感は本日最高潮に達し、大通り市街地問わず人々は祭りの喧騒を楽しんでいました。

 そんな中、当家バーガイル伯爵邸も同様に浮き足立っております。それは、ここ数年は揃って夜会に出ることも無かった夫妻が、連れ立って白薔薇城に赴くことになっているからに他なりません。


 残念ながら現当主であるグレイ様はご不在ですが、最近すっかり角の取れたファヴォリーニ様と、同じく色艶を増したミラビリス様が揃ってご出席されれば、それだけで充分な話題提供となる事でしょう。

 わたくしは足のお悪いファヴォリーニ様の補助として同伴することになっております。あまり煌びやかな世界は不慣れで緊張もありますが、わたくしよりも一層緊張しているのが……。


「……」


 ライナ様。カチコチです。

 今日はミラビリス様のドレスをリメイクしたという一品に身を纏い、まだ幼さを残しているものの、あと少し表情が和らげば立派なレディの一員として疑う者はいないと思われます。うっすらと施された化粧ですが、それを以てしてもいまのライナ様の顔色の悪さは隠しきれそうにありません。


 準備を整えた伯爵家一行は、馬車に揺られ白薔薇城へ向かわれました。わたくしは御者台にいたのでわかりませんが、きっと中でもライナ様の緊張はほぐれることはなかった事でしょう。

 無事に白薔薇城に到着したころには、すでにパーティは始まっていたようです。ファーラル様の開会の挨拶が聞けなかったのは残念ですが、仕方ないでしょう。それよりもわたくしは、ここでまたライナ様の優しさを目の当たりにしました。誰に言われるまでもなく、自然とファヴォリーニ様を支えて下さったその姿に、胸に熱いものがこみあげてまいりました。ミラビリス様も絶賛さておりましたが、驚いたように恥ずかしそうに顔を俯けていたライナ様のお姿は、とても初々しいものであり、庇護欲が掻き立てられるものでした。

 ここにグレイ様がいたら、間違いなく抱きしめていただろうと思えば―――ご不在でよかったのかもしれません。



 会場に到着後も、ライナ様の緊張は解ける事無く続いているようでした。最初の頃はミラビリス様と並んでいらっしゃったのに、気が付けばわたくしの隣で心細そうに俯いていらっしゃいます。

 ミラビリス様の旧知の友人である、ポリーナ様に会われた時には、その不躾な視線に終始怯えていらっしゃいました。大切に大切に伯爵家で守って来たライナ様が、こんな形で大人の汚さ、貴族の狡猾さを味あわせることになるとは……。けれどファヴォリーニ様もミラビリス様も特にライナ様を庇いだてされることはなく、結局は奥様のライナ様自慢で幕を閉じました。


 そして我々は再び歩を進め、目的地―――会場奥を目指していたところ……年若い青年貴族に声をかけられたのです。


 年の頃はグレイ様と同じほどだと思われます。整った顔立ちはされていますが、精悍さはさほどでもなく、どちらかといえば飄々さを持ち合わせた、貴族特有の青年です。お名前は確かランディ侯爵。侯爵家の唯一の跡取りであるがために、軍への入隊は許可されず、事業と賭け事のような楽しんでいるという噂の青年です。


 その侯爵が……ライナ様に、目をつけたようなのです!

 あの眼!

 間違いありません、あの眼はグレイ様がライナ様を見つめている時の目とそっくりです!つ、つまり……侯爵は―――ライナ様に……!?


 ライナ様が愛らしいのは認めましょう。擦れていない感性、小動物のようなくりくりとした瞳。年の割に小さな身長。おどおどとした態度もまた、若干の嗜虐心を煽ることも考慮したとして……ライナ様へ近づくことは許しがたいことです。

 だがしかし、残念ながらわたくしは一介の執事でしかありません。主であるファヴォリーニ様やミラビリス様が止められるような素振りでもされれば、無礼を承知でライナ様を匿ったのですが、残念ながら奥様は楽しんでおられるし、旦那様は項垂れているばかりで役に立ちませんでした。


 何より許せないのは、2度にわたりライナ様の指先に口付けを落としたこと!

 そのようなことをしていいのは、グレイ様だけだというのに!硬直してしまったライナ様がこれまた、わかりやすい態度だったため更に可愛く見えたのか、侯爵の目が楽しげに―――そして獲物を狙え狩人の様に光ったことが不安でなりません。


 ああ、早くグレイ様とアンヌ様の婚約解消を公けにしてくださればいいものを!





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