見てはいけない
『見てはいけない』
学校の裏門からの帰り道にその看板は立っている。
高台に位置した校舎の坂の途中に立てられたその看板は白い板面に見てはいけないとだけ書かれており、いつからそこに立っているのか足の部分はところどころ錆びていて、文字もそこかしこくすんでいる。
不気味と言えば不気味ではあるが、その看板が立てられた場所から見える物といったら、町並みくらいのものである。
それでも当然といえば当然なのだが、その端的な文章から学校では怪談めいた噂話は囁かれたりしてはいる。
だが、そのどれもが違う話という時点で信憑性に欠けているようで、信じている者はほとんどいないと言っても良いくらいだった。
そもそも駅へ向かう道としては非常に便利で、舗装だってしっかりしており、危険な様子も、その看板以外に不気味な様子も無いのだから当然と言えば当然である。
それどころか早く日が落ちる季節ともなれば、下校時に茜色に染まる町並みに沈む夕日といった美しい景色を目にする事ができるのだ。
利用者は多く、よほどおかしな時間に利用しない限りは恐怖心を覚える事はない。
一人で携帯を眺めながら下校する生徒。
大勢で談笑しながら下校する生徒。
自転車で颯爽と坂を下りる生徒。
そんな中、隣を歩く友人が呟いた。
「あ、見ちゃった」
何を見たのかと訪ねても友人は上の空で、生返事を返すばかりだった。
そして翌日から友人は学校に来る事は無かった。
家を訪ねても友人の姿は無く、それどころか友人が住んでいた形跡もない。
教室の皆も友人がいた事を忘れてしまったかのようだった。
友人はいなくなってしまったのだ。
何かを見てしまったから、いなくなってしまったのだろうか?
だが不思議な事に学校で囁かれている噂の中に見てしまったからいなくなるという話は無いのだ。
友人は何を見てしまったのだろう?
大勢いた生徒の中で、どぅして友人は見えてしまったのだろう?
友人がいなくなってしまったのは見てしまったからなのだろうか?
あの看板は見ても大丈夫だった人が立てたのだろうか?
見てしまった物によって起きる事が違うのだろうか?
見えないからこそ気になってしまうのだ。
ああ……見たい。
見たいのだ。
私の創った見てはいけない話はこれでおしまい。
見たくないなら、何かしらのやり方で自分は見たくない意思表示を、見たいで終えて繋げる事で、次の見たい人に受け渡す事ができるのだ。
それをしないと本当に見たいという事になり、見えてしまうのだ。
これがいつから始まったのか、何が見えてしまうかもわからないし、どんなめにあうのかもわからない。
でも、見てはいけないモノはやっぱり見てはいけないモノなのは間違いない。
だから、本当は気にしてはいけないのだ。
私は最初にちゃんと告げたはずである、見てはいけないと。




