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終わり

 それから数年が経ち、ユーワンとサクヤはヴァビロン国の某所で名前を変えてひっそりと暮らした。サクヤはすくすくと育ち、剣聖の手ほどきをこっそりと受けていた。


「本当は、剣術など稽古していると正体が疑われそうでやばいんだが」


 サクヤはどうしても習いたいと言って聞かなかった。


「この子のいた世界とは異なる土地だ。護身術ぐらいは身につけておいた方がいいやもしれん」


 自分が死んだあとのことも考え、剣術だけでなくこの世界の教養や、農業、刀剣鍛冶の知識もあったユーワンは職人の技術をサクヤに教えた。


 ヴァイオラ姫もノエル・ヴァルキリーとしてたびたび二人の住まいを訪ねてきた。それが、年頃の娘にはおもしろくない。


 傍目にはわかりづらかったが、サクヤにはどんどん親密になっていくのがわかった。二人は心をつないでいた。


 だから、その後の召喚大戦争にて、異世界戦士を多数擁した大延国の進行は後に悪魔戦争と呼ばれたが、ヴァビロン国の軍師としてユーワンがヴァイオラの騎士団長として戦た動機は、恩義ある国への義勇か彼女への恋情か、後の語り草になった。


 大延国に対抗する連合国は、遠く離れた平原や山野で激戦を繰り広げた。


 ユーワンが異世界人の殺し方を指南するとき、彼はこう言ったという。


「自分も彼らと同じ世界で生きたことがある。彼らはこの世界とは異なる価値観と高い文明を持っていたから、自尊心が高く自分を神にも等しい存在と思ってしまう。そこが、弱点だ。約束された勝利を疑わないし、一番安全な場所で指揮を執る。決死隊で臨めば暗殺は難しくない」


 ユーワンはそれを実践し、戦果を挙げた。そして、幾度目かの決死戦で命を落とした。最後の言葉は、


「ヴァイオラ閣下、サクヤのことをよろしくお頼みします」だった。


 ヴァビロン国の騎士たちは、彼から大延国との闘い方を学んだが、悪魔戦争はその後すぐに終わった。


「剣聖、死す」の報をサクヤはヴァイオラから聞いた。


 二人は抱き合って泣いた。数日、嘆き悲しんだ後、サクヤは復讐に燃えヴァビロン騎士団の制服を着た。


 ヴァビロンの辺境にまで大延国が迫ったとき、山の頂から大軍を猊み下ろし、サクヤは喜びに狂い悶えた。


「全員、死ね」


 サクヤの精神は炎の龍に姿を変え、大延国の軍勢を取り囲み、その中心にいる同郷の惑い人たる戦士たちもろとも焼き尽くした。


 これにて戦乱は終わり、サクヤは悲しみに暮れる日々を送り、自分がこの世界へ来た日と同じ霧深い午後に、故郷へ帰還した。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

駆け足でしたが、ここまでの話とこの後の話で文庫一冊分ぐらいは書けそうです。

最初に思いついたアイデアを最後まで書ききれるか、試すために中編として書いてみました。

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