#6
「しかし、いいのでしょうか。これから謁見するのというのに悠長に食事などしていて」
「食欲が湧きませんか?」
「いえ、如何なる時にも兵糧の事を忘れることはありません」
姫殿下の前で、デザートを美味しそうに頂かなくてはならないから腹八分に控えた。もとより旅をしている時も、保存食には気を配ったが、 食べられる時に食べられるだけ 食べておこうという習慣は無い。
人間、寝だめ食いだめはできないのだ。
生命の維持に必要の無い量を食べることを罪と感じてもいた。
食事が終わって一時間、控え室で待たされた。ノエルがホストを務めていた。ロートル隊長の仏頂面も変わらず。
ただ、この時間になると話は旅や参加した戦の話に及び、話を向けるのはノエルだったが近衛隊長も武人の血が騒ぐのか熱心に耳を傾けるようになった。
必ず尋ねられることがある。
「剣の師匠はだれか?」「初陣を飾るまで、どこで修行していたのだ」とか尋ねられることはむしろ少ない。
これはもう有名なエピソードだから、みんな知っている。みんなが聞きたがるのは異世界人たちと対決したときのことだ。
「ユーワンどのは、 エルフや魔導士のような 魔術使いでもないのに、 剣のみを頼りにどうやって異能力を持った惑人たちと対峙することができたのか」
彼らが恐れられ、排斥されるのはその強大な力と傲慢さゆえだった。
「 一人対一人の決闘であるならば、到底、異世界人を倒すことができるものはおりますまい。わたしが知っているのは、異世界人同士が争ったときですが、それでも決闘は稀で、それぞれの軍を率いた戦争で雌雄が決せられました」
彼らの個人的な憤懣によって いくつかの戦争が引き起こされた。それが彼らの立場をおとしめた理由でもあるのだ。
「わたしは生来、旅をすることが多かったから、根無し草の気持ちがわかるのかもしれません」
ノエルはもう異世界人を悪魔つきと言う呼び方はしなかった。悪魔憑き退治で名をあげたユーワンだったが、同じ異世界人を救うために彼は命を投げ出した。 それはどういう心境なんだろうか。
「ユーワンどのがサクヤ嬢を守らんとしたのは、 宗教観でしょうか」
「もちろん、わたしはたとえ異世界人であっても、子どもを処刑することが一番受け入れられないことでした」
除名嘆願は今回が初めてではない。 飢えやひもじさから盗みを働く者もいた。子どもに鍵らず罪人が全て悪人とは言えないのだ。詳しい事情を知ると助けてやらねばならないと思えることも多くあった。




