#5
天真爛漫と言えば聞こえはいいのだが。
「アルティミト様に一手、ご教授願いたい」
「せっかく閣下の裁定により剣を置いたのです。家臣としてそのようなことを口走ってはどうかと思いますよ」
ただ、その自由奔放さに付き合ってみたいと思う自分もいた。
「姫殿下は、死合いはやめよと申されました。純粋に剣術の指南を仰ぎたいと思っています。ぜひ、道場に。宮中に抵抗があるなら、町道場でもかまいませぬ」
「では、数日のうちに伺いましょう」
あまりに食い下がるのでから返事をした。どうせ、今日の午後にはこの村を去るつもりだ。
「我らがそれほど信用できませぬか?」
ノエルはユーワンの心づもりを見透かしていた。
(女の勘は鋭いな)
旅を続けてきた身の上だから、女性に裾を掴まれたり、行かないでくれと懇願されることも多くあった。罪作りなことをした思う。
「女の勘は鋭いんですよ」
苦笑いするしかない。
「また、姫殿下が剣聖殿の武勇を直接ご本人から聞きたいとご所望です」
「それは……」
これは断れない要請だった。 ヴァイオラ姫殿下は、たとえ命を差し出せと言われても聞かねばならぬ相手となった。
夕刻、サクヤを村人に預けて登城することになった。
昼間は死地と決めた場所で宴が開かれる。奇妙なことだが、それには慣れっこだった。 何度も転生を繰り返したが、長生きをした事は無い。
ノエルと近衛隊長が出迎えた。
「ヴァイオラ姫には 食後に謁見いたします。まずは一献」
「かたじけなし」
食前酒のリキュールを口に含む。目の前の少女がそんなことをするとは思えなかったが、もう毒を入れられても受け入れるしかない。
安心できるのは、近衛隊長ロートルの不機嫌さを押し隠した無表情。これから葬る人間に向ける顔では無かった。 気を遣うような素振りや、おべっかなどがある方が怪しい。
「まずはゆるりと心づくしの料理をお楽しみください」
静かな晩餐だった。質問もしてこない。さすが、王宮の食事。鶏肉以外に鹿や豚も供されたが臭みが無い。現代の三ツ星レストランの味にも引けをとらない。
ジビエなどという言葉があるが、この世界の 辺境国家では 当然のことだった。招かれるものの返礼として、料理の感想を考えながら食べていた。
(この芽キャベツ、採りたてか? とても甘い。ここまでのものは珍しい)
「この土地の作物は味がぎっしりと詰まっているようですね」
ノエルの顔がほころんだ。
「塩も砂糖も少なめが丁度いい塩梅です。姫殿下との謁見の際にはお茶とデザートを用意しておりますゆえ、お腹を開けておいてくださいね」




