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第四章 了

 ユーワン・アルティミトはウルフィーの構えが整う前に仕掛けた。一部の隙も見逃さず、俊敏さを誇るウルフィーがまったくかなわなかった。


「スピードだけではない。目の動き、表情筋、体の強張り、全てを観察した上で、一瞬、身体が止まる瞬間を狙ったのかと」


「順番を変えよう」


 近衛隊長が呟き、みなが頷いた。


「ロートル、なんとする?」


 ノエル・ヴァルキリーは立場を忘れて、プリンセス・ヴァイオラとして質問した。


「剣聖の力量如何によっていく通りかの算段をしておりました。これもその一つ」


「次峰がお前なのは構わんが、何をする気か?」


「相討ちを狙えば、止めることができるかと」


「なっ、なぜ、それがお前なのだ!」


「姫、失礼ながら申し上げます。姫以外の者はすべて見切っております」


「見切るだと?」


「人間同士で、まともに立ち会って彼奴に勝てませぬ」


 一同6人を見回す。全員が無言で頷いている。


「だれがかかっても同じことであれば、一番確実なわたしがその任を負い、伸びしろのある若き剣士は温存すべきと愚考いたします。他のものが出ても怪我をした後で、わたしが同じことをするのみ」


「な、ならんぞ、ロートル」


「姫、少々考えが甘うございますな。我ら、一同、昨日のうちに決めております。果し合いを受けるということは、そういうことなのです」


 悪夢のようだ。このままでは昨日まで笑いあった仲間を失ってしまう。いや、一人欠けたところでもう笑い合うことなどできない。7剣士も解散だ。


 やはり七剣士といえども、自分は蚊帳の外なのだと、疎外感もあった。


 しかし、彼女にも彼ら同胞に隠していることがあった。言えば、反対されるとわかっていたからだ。 その点においてはお互いを思いやる彼らと同じ心持ちだったのかもしれない。


 ノエルは、アイコンタクトを送る。誰にか、


 玉座の主がピクッと硬直し、立ち上がりかけた。


(だめ、ふだん通りに)


 仮面のプリンセスも周囲には小さな動きで応答した。


 ノエル・ヴァルキリーが現れる時、ヴァイオラの影武者を演じるのは、幼少より親しい同い年の侍女だった。


「次峰、近衛隊長、ロートル・ロドリゴ参る」


 これには、剣聖も一瞬戸惑った。有無を言わせずに、近衛隊長は舞台に進む。ユーワンも正座から立ち上がるとその眼前に立った。


「これは失礼、出番と立ち位置の順を間違えておったようで、なんたる無作法か、恥じ入るばかりです。貴殿のご都合は構いませぬか」


 剣聖はもとより不満など言うはずもないと踏んでいた。

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